情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2025年3月19日 第105号

公開日:2025年3月19日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

農林水産省 知的財産課
課長 松本 修一

我が国農林水産業・食品産業の競争力の源泉は、世界に誇る優れた品種や技術などの知的財産です。しかし、我が国では、公的機関が開発した品種や技術を広く共有することが重視されてきたことから、これらを戦略的に守り、「稼ぎ」につなげていくといった現場の意識や取組は緒についたばかりです。

こうした中、昨年改正された食料・農業・農村基本法では、競争力強化、付加価値向上に向けた知的財産の保護・活用の推進が位置付けられたところです。農林水産省としても、現場における知的財産マネジメントの実践力を高めていくことがこれまで以上に重要な課題と認識しています。

このため、農林水産・食品分野における知的財産の保護・活用の実践に向け、本年度から、現場関係者の知財意識の向上と、現場に対し農林水産業特有の事情を踏まえつつ的確なアドバイスが出来る知財の専門人材の育成に着手し、来年度は、両者のマッチングのための相談窓口を設置し、現場の知財マネジメントの実践に向けて伴走支援をしていく体制を整備することとしています。

さらに、来年度からは、従来特許庁において実施してきた「知的財産権制度活用優良企業等表彰」と連携し、農林水産・食品分野において戦略的な知的財産の保護・活用を実践する農業法人等に「農林水産大臣賞」を贈ることとし、こうした優良事例を全国各地に横展開していきたいと考えています。

こうした機会や素材については、農林水産・食品関係者の皆様だけでなく、是非、知的財産の専門家の皆様にもご活用いただき、伴走支援をいただければ幸甚です。

政府は、地方創生2.0を推進しています。農林水産業を高付加価値化し、地域資源を最大限活用した高付加価値型の産業・事業の創出にとって、農林水産分野における戦略的な知的財産の保護・活用は欠かせません。

皆様のご支援・ご協力もいただきながら、現場における知的財産マネジメントの実践力を高めていきたいと考えております。引き続き、よろしくお願い申し上げます。

目次

訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

1.スポーツ業界において営業秘密が問題となった海外事例:弁護士知財ネット 弁護士 森茜

日本のスポーツ業界において営業秘密が問題となったケースを見かけることはほとんどありませんが、本コラムでは、スポーツチーム等が保有する情報が営業秘密にあたるかについて問題となった海外の興味深いケースをいくつかご紹介します。

1.サイバーセキュリティ対策

1.(新着)【公開】情報セキュリティ10大脅威2025関連ドキュメント:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

IPAでは、「情報セキュリティ10大脅威2025」について、「解説書(組織編)」、「解説書(組織編)の活用法」及び「セキュリティ対策の基本と共通対策」の3点を公開しました。皆様の日ごろの業務の中でご参考いただければ幸いです。個人編の解説書や活用法は後日公開予定です。

2.(新着)【緊急】Microsoft製品の脆弱性対策について(2025年3月):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

2025年3月12日(日本時間)にMicrosoft製品に関する脆弱性の修正プログラムが公表されました。CVE-2025-24983、CVE-2025-24984、CVE-2025-24985、CVE-2025-24991、CVE-2025-24993、CVE-2025-26633の脆弱性について、早急に修正プログラムを適用する必要があります。Microsoft社が悪用の事実を確認しています。IPAでは、公開情報を元に参考情報等を掲載していますので、ご参考になさってください。

3.(新着)コンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況[2024年(1月~12月)]:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

2025年2月26日に2024年1月から12月までのコンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況を公開しました。それぞれの届出に見られた傾向も分析されています。皆様の日ごろの対策にお役立ていただければ幸いです。

2.セミナー・イベント・支援事業等のお知らせ

1.(新着)産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会の開催:経済産業省

第26回、27回不正競争防止小委員会にて、「営業秘密管理指針」の改訂内容について経済産業省知財室から説明を行い、各委員よりご意見をいただきました。また、第28回不正競争防止小委員会では、パブリックコメントにおける主なご意見及びそれに対する考え方について議論する予定となっております。

詳細は「不正競争防止小委員会」(経済産業省)をご確認ください。

2.(新着)3月25日開催「サイバーセキュリティシンポジウム2025」:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

3月25日火曜日に「サイバーセキュリティシンポジウム2025」が開催されます。「新段階に突入するサイバーセキュリティ対策とは」と題して、政府の取組や企業におけるサプライチェーンセキュリティ対策などについて、講演やパネルディスカッションを予定しています。参加費は無料ですが、事前申込が必要です。

詳細はイベントのウェブページをご覧ください。

3.関連法律・計画、指針、ガイドブック等のご紹介

1.AIに係る秘密情報や限定提供データの管理について(再周知):経済産業省 知的財産政策室

昨年2月に、政府全体の「AI時代の知的財産権検討会」などの議論も踏まえ、秘密情報保護ハンドブック、限定提供データに関する指針を改定し、ちょうど1年が経ちました。引き続き生成AIの利活用は活発化しており、生成AIの利用機会も増加をしています。この機会に改めて、秘密情報の漏えい防止について、事業者内でご確認下さい。(詳しくは、秘密情報の保護ハンドブック(3ページ、28ページ、52ページ他)、をご参照下さい。)

2.不正競争防止法テキスト(令和6年2月公開)について:経済産業省 知的財産政策室

令和5年改正(令和6年4月1日施行)を反映した内容となっており、知財室ウェブページにて公表しております。

また、「不正競争防止法について説明会をして欲しい」などのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。知財室員がご説明に伺います。

3.「限定提供データに関する指針」(令和6年2月最終改訂)について:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法では、限定提供データに関する規定を設けております。企業が保有・活用する「情報」を営業秘密と相互補完的に守る枠組みです。

経済産業省では、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しております。

知財室では、この他にデータ利活用に関する資料をウェブページにて公表しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。

4.従業員や研究機関職員向け営業秘密管理の啓発・解説パンフレット「知っておきたい営業秘密~予期せぬトラブルに巻き込まれないために~」の公表:経済産業省 知的財産政策室

昨年6月28日に開催した第10回営業秘密官民フォーラムにて紹介・説明させていただいた、従業員や研究機関職員向けに営業秘密管理の啓発・解説したパンフレット、「知っておきたい営業秘密~予期せぬトラブルに巻き込まれないために~」を公表いたしました。

  • このパンフレットは、企業等において、日々の業務で、実際に営業秘密に接する従業員等にとって、
    • 実際の業務の中で起こりうる場面を念頭に、どのような行為が不正競争防止法違反となるのか
    • そもそも「営業秘密」とはどのような情報が該当するのか
    • 業務の中で普段からどのようなことに気をつるける必要があるのか
  • といった従業員の目線での留意点をわかりやすくまとめた内容となっております。

経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能ですので、営業秘密管理、不正競争防止法についての周知・確認など社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。また、外国人従業員への研修等にも活用できるように英語版資料も公開していますのでご活用いただけますと幸いです。

詳細は「知っておきたい営業秘密」(経済産業省)をご確認ください。

5.「秘密情報の保護ハンドブック」(令和6年2月最終改訂)および「情報管理も企業力 秘密情報保護ハンドブックのてびき」について:経済産業省 知的財産政策室

「秘密情報の保護ハンドブック」は、令和6年2月に改訂版を公表しており、令和5年の不正競争防止法改正など関連法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・労働環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正、「生成AIの利活用の拡大」といった社会の動きを考慮した修正等を行っています。経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能ですので、社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。

なお、「秘密情報の保護ハンドブック」の簡易版であるハンドブックのてびきにつきましても、同様に経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能です。

詳細は「冊子の送付について」(経済産業省)をご確認ください。

6.新しい技術情報管理認証制度が始まります:経済産業省 貿易経済安全保障局技術調査室

産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の認証の基準について、事業者の皆様が取り組むべき内容をよりわかりやすく、そして、社会環境の変化に対応するため、「自工会・部工会のサイバーセキュリティガイドライン」のレベル1項目を網羅するとともに、「ISO27001」の一部項目を取り入れる改正を行いました。新しい認証基準を用いた審査は2024年8月16日から始まっています。

本制度は、自社の情報管理体制が適切であるかを確認するのみならず、取引先の情報管理水準を確認するにも適した制度となっています。

また、経済産業省では、情報セキュリティ対策の具体的なアドバイスや、認証取得の支援を行う専門家を無償で派遣する事業を2024年8月1日より開始しました(定員に達し次第、募集は締め切りますのでお早めにお申し込みください。)。

認証の取得にご関心がある方は、専門家派遣事業にお申し込みいただくか、または、国が認定している認証機関までご連絡ください。

詳細は「技術情報管理認証制度ウェブページ」(経済産業省)にてご確認ください。

7.「知的財産推進計画2024」について:内閣府 知的財産戦略推進事務局

知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2024~イノベーションを創出・促進する知財エコシステムの再構築と「新たなクールジャパン戦略」の推進に向けて~」を公表しています。

詳細は「知的財産推進計画2024」のPDF(内閣府 知的財産戦略本部)をご確認ください。

4.お役立ち動画集

1.(新着)営業秘密の管理プロセスや漏洩対策、トラブル事例等に関する研修動画:INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

3月18日、「INPITの営業秘密管理支援<実践編>支援のポイントと留意点・支援事例のご紹介」を新たに公開しました。

INPITでは、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIP ePlatに公開しております(視聴無料)。

IP ePlatのトップページから、「全てのコース」、「ビジネス(経営戦略)」と進み、動画を選択ください。

  • 「はじめての「営業秘密管理」」(一般向け:基礎編)
  • 「営業秘密管理の実践」(一般向け:実践編)
  • 「会社のヒミツを守る7つのステップ!-INPITの営業秘密管理支援」(一般・支援者向け:基礎編)
  • 「INPITの営業秘密管理支援<実践編>支援のポイントと留意点・支援事例のご紹介」(一般・支援者向け:実践編)New

2.技術流出の防止に向けたウェブページ、動画、パンフレットのご紹介:警察庁 警備局外事情報部外事課 経済安全保障室

皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか?技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等にご活用ください。

事例、動画、パンフレット等は特設ページ「技術流出の防止に向けて」(警察庁)よりご覧いただけます。

3.全話最終回(!?)毎回倒産するショートドラマ「スタートアップは突然に」:INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

スタートアップ必見!知的財産の重要性を呼びかける、全5話のWebショートドラマを公開中です。

『全話最終回… どうやっても毎回倒産してしまうナオトとその仲間たち』

大手企業の契約担当者の罠に落ち、信頼していた研究パートナーにはめられ、不慣れな異国の地でも知的財産トラブルに見舞われるなど、挑戦のたびに知的財産が原因で倒産してしまう3人組。知的財産の重要性を知らないと行き着く先は「THE END.」になってしまうという、学びのある物語です。

4.営業秘密保護PR動画を公開中です(ショートドラマ&解説動画):INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

トップセールスでうっかり…、取引先からの要請に答えたら…、展示会でアピールし過ぎて…、など営業秘密で陥りがちな失敗とケーススタディをYouTube動画で公開中です。

5.脆弱性体験学習ツール「AppGoat」の解説動画の公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

脆弱性体験学習ツール「AppGoat」は、脆弱性の概要や対策方法等の脆弱性に関する基礎的な知識を実習形式で体系的に学べるツールです。本動画では、「AppGoat」の概要から始まり、利用申請から学習の進め方までを学べます。

「AppGoat」を利用して、脆弱性の発見、プログラミング上の問題点の把握、対策手法を学習できます。

動画は、YouTubeのIPA Channelで「脆弱性体験学習ツールAppGoat利用の手引き」の再生リストでご覧ください。

6.研修動画「今、そこにある脅威~内部不正による情報流出のリスク~」を公開中:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

内部不正による情報漏えいの手口や対策を学べる新作の動画です。10月18日に動画のURLが変更になりました。IPAが過去に制作した情報セキュリティ対策に役立つ他の映像と併せて、新入社員向けの研修などにご活用ください。

5.相談窓口のご案内

1.「営業秘密支援窓口」をご活用ください:INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

豊富な知財実務経験を有する「知財戦略エキスパート」が、企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。

地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。

お問い合わせは、「営業秘密支援窓口」(INPIT)をご参照ください。

2.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)

INPITが運営する「知財ポータル」にて、「特許などによる権利化/営業秘密として秘匿化、どう使い分ければよい?」「転職しようとする社員に対して、どのような契約を結べばよいか?」、「他社を退職した技術者を採用したい。どのような点に注意すればよいか?」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくはよくあるご相談「営業秘密管理」(INPIT)よりご覧ください。

事務局のつぶやき

今月の知財室

いつも「つぼマガ」をご愛読いただきありがとうございます。

経済産業省知的財産政策室の望月です。

私が知財室に(3度目に)着任したのは2019年7月でして(思えば長くいたもんだぁ)、振り返ると、着任直後、営業秘密の海外漏えいに関する国際裁判管轄・準拠法のあり方とともにそのほかの法制的な論点について検討を産業界・学識経験者の皆さんと検討をさせていただき、その後紆余曲折を経て2023年の不競法改正に至りました。1993年の現行法改正、2011年の刑事訴訟手続特例(あとはTRM罰則協会)の改正等にも従事しましたが、個人的には、営業秘密の実体法・手続法、そして牴触法の観点からの保護強化の流れに関わることができ、制度面でのサポートでいくばくかお役に立つことができたのであれば何よりです。

4月からは、大阪にある大学の知的財産を専門に扱う学部に教員として出向し、不正競争防止法の授業などを担当します。不競法、知的財産について「裾野」・「人財」を広げることが第一の目標となりますが、社会・企業の実際の活動を意識しての講義に努める必要性を、皆様とのこれまでのつながりから痛感しているところです。

コロコロ変わる役所内では、異動に伴う情報・経験値の共有・引継ぎがしばしば話題になるのですが、同時に重要情報の漏えいにも注意が必要なことは言うまでもありません。
春は新規採用、異動などの季節。

役所だけでなく、各所で人の往来がある頃合いですので、情報の管理について、今一度目を向けることに取り組む良いタイミングなのかもしれません。

改めて、法改正・啓発、指針・ハンドブック等の改訂、メルマガ・フォーラムの運営などでの皆様からの御厚情に感謝申し上げます。

「つぼマガ」第105号をお読みいただき、ありがとうございました。

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