情報セキュリティ
公開日:2025年8月20日
営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。
日本製薬工業協会(JPMA)
知的財産部長 野村 将
製薬企業がAIを活用して創薬や臨床試験の効率化を図る際には、外部のAI開発企業にAIシステムの開発等を委託するケースが多く見られます。この場合、製薬企業は自社が保有する膨大な社内データをAIシステムの訓練データとして提供し、その結果から新薬の開発や治験プロセスの改善に役立つ知見を引き出します。一部の進んでいる製薬企業では、AI開発や運用を自社内で完結させられる環境を整備していますが、多くの場合、初期の検討段階ではいくつかのAIシステムを比較試用したいというニーズがあります。そのため、複数のAI開発企業のAIシステムを利用し、短期間でより多様な結果を得る手法が広く採用されています。
とはいえ、こうした状況では、製薬企業にとっては社内データという自社の営業秘密をいかに守るかが一つの大きな課題となります。一般的には、AI開発企業との間で機密保持契約を締結し、AIシステムの訓練に使用したデータを破棄・返却、及び契約に目的外利用の禁止を明文化することで、データの意図しない利用を防止します。
さらに、もう一つ重要な検討点があります。それは、社内データを基に訓練されたAIシステム自体を、AI開発企業が競合企業等に提供するリスクに対してどう対処するのか、という点です。
製薬企業はAIシステム開発のために自社データを提供するのみならず、新しいAIシステムを構築するためのアイデアを出したり、実際に使えるものになるように労力をかける必要がありますが、AI開発企業がそのAIシステムを競合企業に提供するような状況になれば、製薬企業にとっては先行者投資に見合うリターンが得られず、結果、そのようなリスクを取ってまでAIシステムを開発しようとする製薬企業が減少する恐れがあります。一方で、AI開発企業はせっかく開発したAIシステムを自社ビジネスに活用したいでしょう。このようなジレンマは、AIシステムに関する契約条件を更に検討する必要性を示しています。
また、製薬業界特有の課題として、同種同効薬(効能効果・薬効薬理が同じ、もしくは非常に類似している医薬品)の研究開発で複数のプロジェクトが同一のAIシステム上で運用される場合に、「情報のコンタミネーション」の問題があります。異なるライセンス元から提供された類似の効能やメカニズムを持つ製品を複数研究開発する場合に、複数のプロジェクトのデータを同じAIシステムで解析してしまうと、物理的にファイヤーウォールやアクセス権限を設定していても、AIシステムを通じてデータの融合や漏洩が発生する危険性があります。AIシステムにデータを入れることで、ファイヤーウォールが意味をなさなくなるのです。
製薬企業がAIシステムを導入・活用する際は、自社の営業秘密だけでなく、コラボレーションするパートナーの営業秘密も守る必要があります。そのためには、AIシステムの運用規則やアクセス制限の明確化、データ使用のログ管理、そして適切な契約書の作成が重要となります。業界全体でAIに関する倫理やルールを整備し、コラボレーションがプラスに働くという信頼を勝ち取ることが、今後の成功への鍵となると考えています。
本コラムでは、表題の裁判例の事案をもとに営業秘密に係る不正競争行為の各論点を検討します。
2025年8月13日(日本時間)にMicrosoft製品に関する脆弱性の修正プログラムが公表されました。これらの脆弱性について、悪用された場合アプリケーションプログラムが異常終了する、攻撃者によってパソコンを制御される、といった様々な被害が発生するおそれがあります。IPAでは、公開情報を元に参考情報等を掲載していますので、ご参考になさってください。
トレンドマイクロ株式会社が提供する Apex One、 Apex One SaaS、 Standard Endpoint Protectionにおいて、リモートコード実行の脆弱性(CVE-2025-54948、CVE-2025-54987)が確認されています。すでに攻撃に悪用されていることが確認されています。IPAでは、公開情報を元に参考情報等を掲載していますので、ご参考になさってください。
営業秘密の重要度や脅威の可能性に応じてサイバーセキュリティ対策を行う必要があります。IPAでは、中小企業向けのサイバーセキュリティ対策支援を実施できる専門家の得意分野・専門領域を可視化した「中小企業向けサイバーセキュリティ対策支援者リスト」を作成しています。ぜひ相談先としてご活用ください。なお、このリストは今後、整備・拡充する予定です。
経済産業省は、産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度(TICS)の認証取得を目指す事業者や認証取得後のフォローアップ等を希望する事業者を対象に、情報管理の具体的な取組方法のアドバイスや、認証取得の支援を行う専門家を無償で派遣する事業を、2025年8月18日より開始いたしました。
専門家の派遣をご希望の方は「技術情報管理認証制度 専門家派遣事業ウェブページ」より詳細をご確認ください。予定枠が埋まり次第募集を打ち切る場合がございますので、ご希望の方はお早めにご応募ください。
また、9月3日には、「信頼確保に向けた情報漏えい対策の重要性~情報管理・技術流出対策に向けた取組を支援する専門家派遣事業のご案内~」セミナーを開催します(「技術情報管理認証制度 専門家派遣事業ウェブページ」にて要事前参加登録)。TICSや専門家派遣事業にご関心のある方は、ぜひご参加ください。
海外ビジネスを展開するにあたって、自社の経営や技術に関する情報を保護することは極めて重要です。
ジェトロでは、実際に営業秘密の保護・管理体制の導入を図る日本企業の中国、タイ、ベトナム、インドネシアの現地法人等を対象に、専門家によるコンサルテーションや社内研修を行う事業を実施します。サービス内容は支援対象企業のニーズにあわせてオーダーメイドでご提供いたします。
日本とは異なる商慣習や労務環境、司法保護状況に合わせて営業秘密の管理体制や保護措置を導入するために、ぜひご利用ください。
事業の詳細、申請書は「海外における営業秘密漏えい対策支援事業(中国、タイ、ベトナム、インドネシア)」のウェブページよりご確認いただけます。
「知財戦略エキスパート」は、営業秘密管理に関する専門知識と実務経験を有する、INPITの専門人材です(相談無料、全国各地へ無料で訪問可能)。
4月8日、知財戦略エキスパートのパンフレット、プロフィール、「営業秘密支援窓口」を含む活動内容(相談支援・セミナー講演)などを紹介するウェブページを、新たに立ち上げました。
営業秘密管理に関する知財戦略エキスパートへのご相談や、講師派遣のご依頼など、INPITの「営業秘密支援窓口」へお気軽にお申込みください。
経済安全保障の観点から、技術流出リスクが高まっており、その対策は急務です。
同時に、技術流出の手法も巧妙化しているため、具体的にどのように対処すべきか悩む声も多く聞こえます。
そこで、当室では、企業等が技術流出対策を講じる際の具体的な手法を示すため、「技術流出対策ガイダンス」を策定しました。第1版では、「生産拠点の海外進出に伴う技術流出」と「人を通じた技術流出への対策」を扱っています。
技術流出対策に取り組みたいが何から始めて良いかわからない、海外に生産拠点を設置する際にどのような点に気をつければ良いか、社員の副業等を通じた技術流出への対応はどうすればよいか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。
知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2025~IPトランスフォーメーション~」を公表しています。
詳細は「知的財産推進計画2025」のPDF(内閣府 知的財産戦略本部)をご確認ください。
2025年3月に営業秘密管理指針の改訂版を公開しました。働く環境の変化(テレワークの普及、雇用の流動化)や情報管理方法の変化(クラウド利用の普及)を踏まえた記載内容の整理・拡充、技術動向を踏まえた営業秘密管理に関する記載の整理・追加がなされています。また、関連する法制度の見直し、裁判の動向を踏まえた改訂もされており、大学・研究機関も営業秘密の保有者になることが明示されました。詳細は「営業秘密管理指針」改訂版をご覧ください。冊子版も完成しましたので、必要あらば御連絡ください。
令和5年改正(令和6年4月1日施行)を反映した内容となっており、知財室ウェブページにて公表しております。刑法改正による「懲役刑」から「拘禁刑」への変更に伴い、語句を修正し、差し替えております。(令和7年6月1日)
また、「不正競争防止法について説明会をして欲しい」などのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。知財室員がご説明に伺います。
不正競争防止法では、限定提供データに関する規定を設けております。企業が保有・活用する「情報」を営業秘密と相互補完的に守る枠組みです。
経済産業省では、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しております。
知財室では、この他にデータ利活用に関する資料をウェブページにて公表しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。
データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。
昨年6月28日に開催した第10回営業秘密官民フォーラムにて紹介・説明させていただいた、従業員や研究機関職員向けに営業秘密管理を啓発・解説したパンフレット、「知っておきたい営業秘密~予期せぬトラブルに巻き込まれないために~」を公表いたしました。
経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能ですので、営業秘密管理、不正競争防止法についての周知・確認など社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。また、外国人従業員への研修等にも活用できるように英語版資料も公開していますのでご活用いただけますと幸いです。
詳細は「知っておきたい営業秘密」(経済産業省)をご確認ください。
「秘密情報の保護ハンドブック」は、令和6年2月に改訂版を公表しており、令和5年の不正競争防止法改正など関連法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・労働環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正、「生成AIの利活用の拡大」といった社会の動きを考慮した修正等を行っています。経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能ですので、社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。
なお、「秘密情報の保護ハンドブック」の簡易版であるハンドブックのてびきにつきましても、同様に経済産業省ウェブページからダウンロード・冊子の申し込みが可能です。
詳細は「冊子の送付について」(経済産業省)をご確認ください。
産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の認証の基準について、事業者の皆様が取り組むべき内容をよりわかりやすく、そして、社会環境の変化に対応するため、「自工会・部工会のサイバーセキュリティガイドライン」のレベル1項目を網羅するとともに、「ISO27001」の一部項目を取り入れる改正を行いました。新しい認証基準を用いた審査は2024年8月16日から始まっています。
本制度は、自社の情報管理体制が適切であるかを確認するのみならず、取引先の情報管理水準を確認するにも適した制度となっています。
また、経済産業省では、情報セキュリティ対策の具体的なアドバイスや、認証取得の支援を行う専門家を無償で派遣する事業を令和7年度も実施予定ですので、ご希望の方は募集をお待ちください。
認証の取得にご関心がある方は、国が認定している認証機関までご連絡ください。
詳細は「技術情報管理認証制度ウェブページ」(経済産業省)にてご確認ください。
技術流出対策や情報管理を進めるには、社内ルールの策定や体制の構築、情報アクセス制限の付与など、包括的な対応が必要です。しかし、経営資源に限りがある中小企業からは、自社のみで取組を進めることが難しいとの声も寄せられていました。
国が産業競争力強化法の下で運用する技術情報管理認証制度(Technology Information Control System=TICS)では、企業は認証機関の指導・助言を受けつつ、体制整備等に取り組み、その状況が客観的に審査・認証されます。企業による対策を取引先等に示すことが可能となり、ビジネスにおける信頼が向上します。TICSは、2024年8月、認証の基準について、よりわかりやすい内容とし、「自工会・部工会のサイバーセキュリティガイドライン」のレベル1項目を網羅するなど、ビジネスシーンを想定した内容に対応するべく、全面改訂されました。認証の取得にご関心がある方は、国が認定している認証機関までご連絡ください。
TICSの紹介動画を経済産業省YouTubeチャンネルで公開中です。
制度の詳細は経済産業省の「技術情報管理認証制度ウェブページ」にてご確認ください。
また、経済安全保障上の課題に対応するために民間企業が行っている様々な取組についてまとめた「民間ベストプラクティス集」の概要動画も経済産業省YouTubeチャンネルで公開中です。ぜひご覧ください。
3月18日、「INPITの営業秘密管理支援<実践編>支援のポイントと留意点・支援事例のご紹介」を新たに公開しました。
INPITでは、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIP ePlatに公開しております(視聴無料)。
IP ePlatのトップページから、「全てのコース」、「ビジネス(経営戦略)」と進み、動画を選択ください。
皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか?技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等にご活用ください。
事例、動画、パンフレット等は特設ページ「技術流出の防止に向けて」(警察庁)よりご覧いただけます。
スタートアップ必見!知的財産の重要性を呼びかける、全5話のWebショートドラマを公開中です。
『全話最終回… どうやっても毎回倒産してしまうナオトとその仲間たち』
大手企業の契約担当者の罠に落ち、信頼していた研究パートナーにはめられ、不慣れな異国の地でも知的財産トラブルに見舞われるなど、挑戦のたびに知的財産が原因で倒産してしまう3人組。知的財産の重要性を知らないと行き着く先は「THE END.」になってしまうという、学びのある物語です。
トップセールスでうっかり…、取引先からの要請に答えたら…、展示会でアピールし過ぎて…、など営業秘密で陥りがちな失敗とケーススタディをYouTube動画で公開中です。
脆弱性体験学習ツール「AppGoat」は、脆弱性の概要や対策方法等の脆弱性に関する基礎的な知識を実習形式で体系的に学べるツールです。本動画では、「AppGoat」の概要から始まり、利用申請から学習の進め方までを学べます。
「AppGoat」を利用して、脆弱性の発見、プログラミング上の問題点の把握、対策手法を学習できます。
動画は、YouTubeのIPA Channelで「脆弱性体験学習ツールAppGoat利用の手引き」の再生リストでご覧ください。
内部不正による情報漏えいの手口や対策を学べる新作の動画です。IPAが過去に制作した情報セキュリティ対策に役立つ他の動画教材と併せて、新入社員向けの研修などにご活用ください。また、IPAが公開している動画教材の一部に対してスライド教材を公開しています。社内研修や企業組織向けセミナーなどで動画と組み合わせて講義ができる形にしておりますので、社内研修やセミナーなどで是非ご活用ください。
豊富な知財実務経験を有する「知財戦略エキスパート」が、企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。
地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。
お問い合わせは、「営業秘密支援窓口」(INPIT)をご参照ください。
INPITが運営する「知財ポータル」にて、「特許などによる権利化/営業秘密として秘匿化、どう使い分ければよい?」「転職しようとする社員に対して、どのような契約を結べばよいか?」、「他社を退職した技術者を採用したい。どのような点に注意すればよいか?」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。
詳しくはよくあるご相談「営業秘密管理」(INPIT)よりご覧ください。
いつも「つぼマガ」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。情報処理推進機構(IPA)です。
先日、宿泊施設で毛布を借りた際、ふと目に留まったのは広げられたままの宿泊者台帳でした。突然声をかけた私のせいで、フロントの方がつい置き忘れてしまったのでしょう。誰もが悪意なく、一瞬の不注意から情報漏洩のリスクを招く可能性があることを改めて実感しました。
このような状況を生まないためには、ルールの徹底も重要ですが、重要な情報を扱っている人に声をかける時は作業を中断させないように適切なタイミングを見計うという声をかける側の配慮や、作業を中断しても第三者が容易に覗き見できないような作業環境の整備も大切なのだと思います。
「つぼマガ」第110号をお読みいただき、ありがとうございました。
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