IPAについて

理事長挨拶

デジタルの、その先へ

理事長 齊藤 裕

発明王トーマス・エジソンの功績は、白熱電球や発電機の発明ではなく、電気を使った生活があたりまえになる社会を構想し、設計したことです。エジソンは、より良い電球をつくるだけでなく、発電するしくみ、電気を送るしくみ、電気を安全に使うための設備をひとつのシステムとして考え、その発明を企業や一般家庭が継続して使えるインフラとして構造化し、実装しました。つまり彼は、イノベーションを社会の仕組みに変えることを考え、実装した、「アーキテクト」だったのです。

イノベーションの本質は、発明やテクノロジーそのものではなく、それらを広く実装し、社会や人々の生活を変えるしくみを築くことにあります。いかに革新的な技術であっても、その普及と利活用を継続的に支える共通基盤、人材、プロセス、組織文化がなければ、現実社会での価値は生まれません。この認識のもと、独立行政法人情報処理推進機構(IPA: Innovation Platform Agency, Japan)は、社会に対して以下の役割を果たす存在として、自らを位置づけています。

Innovation

技術の導入にとどまらず、社会や産業の変革を実現する。

Platform

個別のサービスやシステムではなく、多様な主体が価値を共創できる社会的な接続基盤となる。

Agency

公共性と実行力を持ち、社会実装を支える。

設立以来、IPAはソフトウェア産業の振興、情報セキュリティの確保、人材育成などを通じて、情報処理・ITの発展を支えてまいりました。そしてデジタルがすでに一つの産業や業務効率化のツールとしての枠組みを超え、経済社会全体を稼働させるための基幹システムともいうべき存在となった今、私たちの役割も、「デジタルの普及」から「デジタル社会の設計と実装の支援」へと、大きく広がりました。

いま、IPAは、(1)Society 5.0の実現に向けたアーキテクチャ設計やデジタル基盤提供の推進、(2)サイバー・フィジカルが⼀体化し、サイバー攻撃が組織化・⾼度化する中でのサイバーセキュリティの確保、(3)デジタルトランスフォーメーション(DX)を担うデジタル⼈材の育成推進、に邁進しています。

人材基盤をつくり、データをつなぎ、信頼を築き、セキュリティを高め、戦略技術を支え、ルールや制度設計と社会実装を橋渡しするためのさまざまな取組みを通じて、私たちIPAは、行政、産業界、アカデミア、地域、そして未来を築くために挑戦するすべての人々を支援し、多様な主体と力を合わせて、ともに社会の変革を進める存在でありたいと考えています。

デジタルは、目的ではありません。私たちが目指すべきは、新しい技術を追い求めることではなく、その技術が継続的な価値を生み出せる環境を構築することです。送電網が電気を社会の力へと変えたように、私たちはイノベーションを支える基盤を整え、社会の課題を解決するための力につなげていきます。

今後とも倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。