IPAについて

理事長挨拶

“誰もがITの恩恵を享受できる社会”を目指して

理事長 齊藤 裕

木の枝や石を器用に使って餌を採取するサルやカラスなど、道具を使う動物は人間だけではないことが近年の研究で判明しています。しかし道具を創り、生活様式を変え、進化を加速する動物は、やはり人間だけではないでしょうか。そして今、石器を使って狩猟を行い、農工具を使って稲作を始めた時代から時を重ね、人類はデジタルという究極の道具を手に、データを駆動源とした第四次産業革命を通じて、さらなる進歩と成長を遂げようとしています。

物理的な空間での人々の行動がさまざまなデバイスによりデータ化され、ネット上のサイバー空間に集積される。そのビッグデータが人工知能(AI)に解析され、最適化されて、現実世界に向けたフィードバックとなり、そこからより良いサービスやイノベーションが生まれる。そんな仮想のサイバー空間と現実のフィジカル空間の融合を通じて、経済発展と社会的課題の解決が両立し、人々がより安全で快適な暮らしを楽しむ、人間中心の新たな社会。データとデジタル技術の上に築く、夢と希望にあふれた未来へとデジタルトランスフォーメーション(DX)した、そんな社会の姿を、私たちはSociety5.0と呼んでいます。

では進化し続けるテクノロジーを利用しながら発展する、「活力に満ちた社会」の実現に必要なものは何でしょうか。私はそこに3つの要件があると考えています。まず、知を有する多くのプレイヤーたちが集い共創する「場」と連携し、あらゆるデータの活用が可能な、共通基盤を構築して運用すること。次に、多種多様なデータから新たな価値を生み出す、あまたのデジタル人材を育成すること。さらに、デジタル化が進む中で多様化する攻撃の脅威に備えるサイバーセキュリティ対策など、データとデジタルを活用する環境の安全と安心を担保するサービス機能を充実させること。そしてこうした個別の企業や個人の努力だけでは困難なSociety 5.0の土台づくりには、国家の成長戦略の一部として展開される、一貫した取り組みが不可欠であるとも考えています。

独立行政法人情報処理推進機構(Information-technology Promotion Agency, Japan: IPA)は、経済産業省の政策実施機関としてその一翼を担い、デジタル技術の利用促進を通じて国民の暮らしを真に豊かなものにすることを責務とする組織です。私たちIPAはその期待に応え、「Society 5.0の実現に向けたアーキテクチャ設計やデジタル基盤提供の推進」「DXを担うデジタル人材の育成」「サイバー・フィジカルが一体化し、サイバー攻撃が組織化・高度化する中でのサイバーセキュリティの確保」を目指して、臆することなくさまざまな施策の展開に力を尽くしていくことを、この場を借りて国民の皆様にお約束いたします。

今後とも倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。