情報セキュリティ

「暗号利用環境に関する動向調査」報告書(2015年度)

公開日:2015年6月26日

最終更新日:2015年6月30日

独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 セキュリティセンター

本調査は、我が国の暗号政策に係る中長期の視野に立った方針を検討するために、暗号アルゴリズムの普及促進やセキュリティ産業の競争力強化に向けた障壁が何かを明らかにすることを目的として、海外主要国での政府調達における暗号技術の利用環境動向を幅広く俯瞰するために実施しました。

報告書の概要

(1) 各国政府における暗号利用に関する政策動向の調査

米国、英国、フランス、ドイツ、エストニア、ロシア、中国、韓国、オーストラリア、EUの暗号に関わるセキュリティ政策に関する組織体制、役割、法制度、最新の政策動向について文献・WEB調査を実施しました。さらに、米国、英国、フランス、ドイツ、エストニア、オーストラリア、EUについては政府機関や有識者等へのヒアリング調査も実施しました。
調査の結果、調査対象9カ国はいずれも暗号政策の所管省庁の役割・権限が法律上明確に定められており、うち6カ国が国家安全保障系機関(国防機関、諜報機関、治安機関等)、2カ国が国家安全保障系機関と経済・科学技術系機関の共管であることがわかりました。このことから、各国毎に政策の重点は微妙に異なっているものの、多くの国では国家安全保障の観点を重視して暗号政策を捉えていると考えられます。
政府機関のセキュリティ向上のための具体的な施策として、ほとんどの国では、政府調達において一定以上のセキュリティ水準が求められる情報システムでのセキュリティ認証取得製品の導入を義務付けていることがわかりました。
また、安全保障の観点から敵性国家等に対する暗号技術の拡散を防止するための輸出規制はすべての国で実施されています。一方、暗号技術の国内利用の規制については、ロシアと中国が特に厳格な管理を行なっています。

(2) セキュリティ認証取得製品に関する動向の調査

欧米各国及び日本における、CMVP/JCMVP認証取得製品数及びCC認証取得製品数の経年推移を調査し、推移の違いの原因の分析・検討を行いました。
本調査の結果、明示的に政府調達要件となっている場合や競争力強化に役立つ利用環境が整っている場合には認証取得製品数は大きく伸びるが、そうでない場合には伸び悩む傾向にあることが明らかになりました。

(3) 国内暗号製品市場に係る動向の調査

暗号ライブラリ、暗号製品、セキュリティ製品の3つの国内市場にわけて、それぞれの市場規模の経年推移を文献・Web調査にてグラフ化しました。また、今後5年の市場規模の推移予測について国内セキュリティ製品ベンダ9社へのヒアリング、30社へのメールアンケートを実施し分析を行いました。
暗号機能単体の製品の導入よりも暗号技術を取り入れた機能統合的な製品にニーズが移っているため、見かけ上は暗号製品市場が縮小しているように見えますが、この傾向は今後も継続すると思われます。また、暗号技術は今後も情報セキュリティ技術の中核を占めていくことは市場調査の結果からも明らかですが、暗号技術による製品の差別化が困難である状況がより進展する可能性があります。

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「暗号利用環境に関する動向調査」報告書

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更新履歴

  • 2015年6月30日

    p.15表3-3の鍵長の誤記修正

  • 2015年6月26日

    報告書の掲載