情報セキュリティ

脆弱性対策情報データベースJVN iPediaの登録状況 [2023年第2四半期(4月〜6月)]

公開日:2023年7月19日

最終更新日:2023年7月19日

独立行政法人情報処理推進機構

1. 2023年第2四半期 脆弱性対策情報データベース JVN iPediaの登録状況

脆弱性対策情報データベース「JVN iPedia」は、ソフトウェア製品に関する脆弱性対策情報を2007年4月25日から日本語で公開しています。システム管理者が迅速に脆弱性対策を行えるよう、1)国内のソフトウェア開発者が公開した脆弱性対策情報、2)脆弱性対策情報ポータルサイトJVN(注釈1)で公表した脆弱性対策情報、3)米国国立標準技術研究所NIST(注釈2)の脆弱性データベース「NVD(注釈3)」が公開した脆弱性対策情報を集約、翻訳しています。

1-1. 脆弱性対策情報の登録状況

脆弱性対策情報の登録件数の累計は158,560件

2023年第2四半期(2023年4月1日から6月30日まで)にJVN iPedia日本語版へ登録した脆弱性対策情報は表1-1の通りとなり(注釈4)、2007年4月25日にJVN iPediaの公開を開始してから本四半期までの、脆弱性対策情報の登録件数の累計は158,560件になりました(表1-1、図1-1)。
また、JVN iPedia英語版へ登録した脆弱性対策情報は表1-1の通り、累計で2,629件になりました。

表1-1.2023年第2四半期の登録件数
  
情報の収集元
登録件数
累計件数
日本語版
国内製品開発者
2件
263件
JVN
254件
12,435件
NVD
3,362件
145,860件
3,618件
158,560件
英語版
国内製品開発者
3件
269件
JVN
54件
2,360件
57件
2,629件
  • 図1-1. JVN iPediaの登録件数の四半期別推移

2. JVN iPediaの登録データ分類

2-1. 脆弱性の種類別件数

図2-1は、2023年第2四半期(4月~6月)にJVN iPediaへ登録した脆弱性対策情報を、共通脆弱性タイプ一覧(CWE)によって分類し、件数を集計したものです。

集計結果は件数が多い順に、CWE-79(クロスサイトスクリプティング)が460件、CWE-89(SQLインジェクション)が262件、CWE-787(境界外書き込み)が249件、CWE-20(不適切な入力確認)が178件、CWE-125(境界外読み取り)が140件でした。最も件数の多かったCWE-79(クロスサイトスクリプティング)は、悪用されると偽のウェブページが表示されたり、情報が漏えいしたりするおそれがあります。

製品開発者は、ソフトウェアの企画・設計段階から、脆弱性の低減に努めることが求められます。IPAではそのための資料やツールとして、開発者が実施すべき脆弱性対処をまとめた資料「脆弱性対処に向けた製品開発者向けガイド(注釈5)」、開発者や運営者がセキュリティを考慮したウェブサイトを作成するための資料「安全なウェブサイトの作り方 (注釈6)」、脆弱性の仕組みを実習形式や演習機能で学ぶことができる脆弱性体験学習ツール「AppGoat(注釈7)」などを公開しています。

  • 図2-1.2023年第2四半期に登録された脆弱性の種類別件数

2-2. 脆弱性に関する深刻度別割合

図2-2はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv2の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。2023年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、レベル3が全体の20.2%、レベル2が65.7%、レベル1が14.0%となっており、情報の漏えいや改ざんされるような危険度が高い脅威であるレベル2以上が85.9%を占めています。

  • 図2-2.脆弱性の深刻度別件数(CVSSv2)

図2-3はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv3の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。2023年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、「緊急」が全体の16.8%、「重要」が40.5%、「警告」が40.9%、「注意」が1.8%となっています。

  • 図2-3.脆弱性の深刻度別件数(CVSSv3)

既知の脆弱性による脅威を回避するため、製品開発者は常日頃から新たに報告される脆弱性対策情報に注意を払うと共に、脆弱性が解消されている製品へのバージョンアップやアップデートなどを速やかに行ってください。

なお、新たに登録したJVN iPediaの情報を、RSS形式やXML形式(注釈8) で公開しています。

2-3. 脆弱性対策情報を公開した製品の種類別件数

図2-4はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をソフトウェア製品の種類別に件数を集計し、年次でその推移を示したものです。2023年で最も多い種別は「アプリケーション」に関する脆弱性対策情報で、2023年の件数全件の71.5%(4,722件/全6,604件)を占めています。

  • 図2-4.脆弱性対策情報を硬化した製品の種類別件数の公開年別推移

図2-5は重要インフラなどで利用される、産業用制御システムに関する脆弱性対策情報の件数を集計し、年次でその推移を示したものです。これまでに累計で4,075件を登録しています。

  • 図2-5.JVN iPedia登録件数(産業用制御システムのみ抽出)

2-4. 脆弱性対策情報の製品別登録状況

表2-1は2023年第2四半期(4月~6月)にJVN iPediaへ登録された脆弱性対策情報の中で登録件数が多かった製品上位20件を示したものです。

本四半期においてはクアルコムが提供するQualcomm componentが1位となりました。2位以降はマイクロソフトが提供するWindows、Fedora Projectが提供するFedora、Googleが提供するAndroidなどのOS製品が上位にランクインしています。

JVN iPediaは、表に記載されている製品以外にも幅広い脆弱性対策情報を登録公開しています。製品の利用者や開発者は、自組織などで使用しているソフトウェアの脆弱性対策情報を迅速に入手し、効率的な対策に役立ててください(注釈9)。

表2-1. 製品別JVN iPediaの脆弱性対策情報登録件数 上位20件 [2023年4月~2023年6月]
順位
カテゴリ
製品名(ベンダ名)
登録件数
1
ファームウェア
Qualcomm component (クアルコム)
420
2
OS
Microsoft Windows Server 2022 (マイクロソフト)
138
3
OS
Microsoft Windows Server 2019 (マイクロソフト)
135
4
OS
Fedora (Fedora Project)
134
5
OS
Microsoft Windows Server 2016 (マイクロソフト)
126
6
OS
Microsoft Windows 11 (マイクロソフト)
124
7
OS
Microsoft Windows 10 (マイクロソフト)
119
8
OS
Android (Google)
116
9
OS
Microsoft Windows Server 2012 (マイクロソフト)
115
10
OS
Debian GNU/Linux (Debian)
109
11
OS
Microsoft Windows Server 2008 (マイクロソフト)
85
12
その他
Insteon Hub (Insteon)
81
13
その他
Bentley View (Bentley Systems)
80
14
ファームウェア
RLC-410w ファームウェア (Reolink Digital Technology)
78
14
その他
MicroStation (Bentley Systems)
78
16
その他
MicroStation Connect (Bentley Systems)
71
17
ブラウザ
Google Chrome (Google)
64
18
その他
Google TensorFlow (Google)
56
19
OS
Linux Kernel (Linux)
44
20
PDF閲覧・編集
PDF-XChange Editor (Tracker Software Products)
37
 

3. 脆弱性対策情報の活用状況

表3-1は2023年第2四半期(4月~6月)にアクセスが多かったJVN iPediaの脆弱性対策情報の上位20件を示したものです。

本四半期は、前四半期に続いてWordPress用のプラグインの脆弱性が多くランクインしました。また上位に2022年公開のものがランクインしていますが、これは特定の組織より機械的なアクセスを受けたことによるものです。

表3-1. JVN iPediaの脆弱性対策情報へのアクセス 上位20件 [2023年4月~2023年6月]
順位
ID/タイトル
CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日
アクセス数
1
JVNDB-2021-015177
7.5
9.8
2022年
11月11日
10,944
2
JVNDB-2021-015181
7.5
9.8
2022年
11月11日
10,700
3
JVNDB-2021-015197
7.5
9.8
2022年
11月11日
10,288
4
JVNDB-2021-015198
7.5
9.8
2022年
11月11日
9,594
5
JVNDB-2022-002693
-
9.8
2022年
11月11日
8,815
6
JVNDB-2022-002694
-
9.8
2022年
11月11日
7,934
7
JVNDB-2023-000039
2.6
4.3
2023年
4月19日
7,875
8
JVNDB-2022-002695
-
9.8
2022年
11月11日
7,400
9
JVNDB-2022-000091
5.0
5.3
2022年
11月18日
7,378
10
JVNDB-2023-000007
5.0
7.5
2023年
1月17日
7,316
11
JVNDB-2023-000040
2.6
6.1
2023年
4月24日
7,233
12
JVNDB-2022-000087
5.0
5.3
2022年
11月8日
7,128
13
JVNDB-2022-000085
2.6
6.1
2022年
11月8日
6,851
14
JVNDB-2022-000038
2.6
6.1
2022年
5月24日
6,791
15
JVNDB-2022-000041
4.0
5.4
2022年
6月1日
6,790
16
JVNDB-2023-000050
7.5
8.3
2023年
5月15日
6,760
17
JVNDB-2023-000042
2.6
6.1
2023年
5月9日
6,405
18
JVNDB-2022-002696
-
9.8
2022年
11月11日
6,379
19
JVNDB-2022-000057
2.6
6.1
2022年
7月25日
6,253
20
JVNDB-2022-000026
2.6
4.3
2022年
4月15日
6,163
 
 


表3-2は国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報でアクセスの多かった上位5件を示しています。

表3-2. 国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報へのアクセス上位5件 [2023年4月~2023年6月]
順位
ID/タイトル
CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日
アクセス数
1
JVNDB-2023-001492
-
7.1
2023年
4月12日
4,685
2
JVNDB-2023-001926
-
7.6
2023年
5月23日
3,359
3
JVNDB-2023-001008
-
6.6
2023年
1月18日
2,814
4
JVNDB-2023-001269
-
6.6
2023年
3月1日
2,787
5
JVNDB-2022-002771
-
3.3
2022年
12月7日
2,721
 

注釈

  1. 注釈1
  2. 注釈2
  3. 注釈3
  4. 注釈4
    JVN iPediaの情報の収集元であるNVDは本四半期で7,160件の公開件数となっている。そのため世の中で公開されている脆弱性の件数はJVN iPediaの登録件数より多い状況となっている。世の中の脆弱性の件数についてはNVDの公開件数等を参考にすることを推奨する
  5. 注釈5
  6. 注釈6
  7. 注釈7
  8. 注釈8
  9. 注釈9

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    isec-jvndbアットマークipa.go.jp