情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2022年11月16日 第77号

公開日:2022年11月16日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

農林水産省 知的財産課
課長 松本 修一

農林水産・食品分野においては2021年に輸出額が初めて1兆円を超えました。今後2025年に2兆円、2030年に5兆円との目標を掲げこの勢いを加速するべく取り組んでいます。

こうした輸出を支える我が国農林水産物・食品の強みの源泉、それは優良な品種、高い品質、優れた生産・製造技術、地域のものがたりなどの知的財産です。しかし、我が国の優良な品種が海外に流出している事例が近年クローズアップされています。特に、優良品種について、種苗だけでなく、その栽培技術も流出してしまえば、瞬く間に産地形成され、大きな損害を被ることとなります。

農林水産・食品分野の知的財産保護については、これまで、種苗法の改正、家畜遺伝資源を保護する仕組みの創設、「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」の策定といった制度・環境の整備を進めてきました。一方で、残された課題となっていたのが、農業分野の優れた栽培・飼養技術やノウハウの保護です。

こうした中で、本年3月、「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」が公表されました。本ガイドラインでは、不正競争防止法における営業秘密の枠組みを活用し、生産現場において実際に技術・ノウハウ等を営業秘密として適切に保護するために具体的に何をしたらよいかが簡単に確認出来るマニュアルや、参考となる取組事例等を紹介しています。本ガイドラインを関係者、関係団体に周知し農業分野における優れた技術・ノウハウ等の流出防止への現場の意識を高めてまいりたいと考えております。

皆様におかれましては、こうした取組を含め、農林水産・食品分野における更なる輸出促進、知的財産関連施策の推進に向けて、連携・協力をさせていただければ幸甚です。引き続き、よろしくお願いいたします。

目次

1.訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。
過去の掲載記事は、弁護士知財ネット 営業秘密メルマガコラムをご覧ください

2.サイバーセキュリティ対策

1.【緊急】Microsoft製品の脆弱性対策について(2022年11月):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

2022年11月19日(日本時間)に脆弱性の修正プログラムが公表されました。CVE-2022-41091をはじめ、多数の脆弱性に悪用の事実が確認されていることをMicrosoft社が公表しており、至急修正プログラムを適用してください。
詳細は2022年11月の「Microsoft製品の脆弱性対策についてをご確認ください。

2.マルウェアEmotet活動状況:11月2日から攻撃再開が確認されています:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

Emotetの攻撃メールの配信が11月2日に再開されたことが観測されました。メールに添付されたExcelファイルに記載されている「偽の指示」にバリエーションが生じ、安全機構を破るために特定のフォルダにExcelファイルをコピーして開かせるように促す内容が加わっています。ご注意ください。
詳細はEomtet(エモテット)特設ページ」をご確認ください。

3.IPAで確認したビジネスメール詐欺事例レポートを公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

国内企業の海外取引先の担当者になりすまし、銀行口座証明書類を偽造し、振込先口座の変更を依頼し、国内企業側が騙され偽口座へ送金してしまったという事例です。
詳細はビジネスメール詐欺の事例集を見るをご確認ください。

4.情報セキュリティ読本六訂版を10月20日に発行:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

テレワーク機器の脆弱性、侵入型ランサムウェア攻撃、スマートフォンの脅威など昨今の情報セキュリティの環境変化に合わせたトピックを新たに取上げ、2018年に刊行された前版を改定し、六訂版を出版しました。本書は一般向けに情報セキュリティの基本をわかりやすく説明したものでセキュリティの基礎的な教育・啓発等に活用可能です。
詳細はセキュリティ読本六訂版のページをご覧ください。

3.セミナー・イベント等のお知らせ

「はじめての「営業秘密管理」」研修動画掲載のお知らせ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)では、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しました。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取組もうという方向けの内容で、無料でご視聴頂けます。
動画は「営業秘密管理」eラーニングコンテンツよりご覧いただけます。

4.営業秘密関連情報のご紹介

1.技術流出の防止に向けてウェブページ、動画、パンフレットの御紹介:警察庁警備局外事情報部外事課 経済安全保障室

皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか。技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等に御活用ください。

ウェブサイト技術流出の防止に向けてをご覧ください。

2.日系企業における営業秘密漏えい対策支援事業(中国、タイ、ベトナム、インドネシア)のご案内(オンライン対応可・無料):日本貿易振興機構(ジェトロ)

ジェトロでは、営業秘密の保護・管理体制の導入を図る日本企業現地法人を対象に、各国の法制度に通じた現地の専門家を派遣しコンサルテーションや社内研修を行う事業を中国、タイ、ベトナム及びインドネシアで実施します。

初めて営業秘密管理に取組む企業から、管理体制の点検・見直しを図りたい企業まで、幅広くお使いいただけるように、サービス内容は支援対象企業のニーズにあわせてオーダーメイドでご提供いたします。

事業の詳細、申請書は次のリンク先よりご確認いただけます。

  1. 注意
    支援事業期間は採択後から2023年2月17日金曜日までとなります。

3.「知的財産推進計画2022」の決定:内閣府 知的財産戦略推進事務局

知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2022」が決定されました。「知的財産推進計画2022」では、営業秘密に関する施策についても掲載されています。

詳細は知的財産推進計画2022(PDF)をご確認ください。

4.「秘密情報の保護ハンドブック」を改訂:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講義等において、不正競争防止法の概要とともに紹介・説明させていただいておりました秘密情報の保護ハンドブックについて、改訂版を公表いたしました(令和4年5月)。

関連する法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・情報環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正や、「重要な秘密情報の多様性」を考慮した修正などが今回の改訂の中心です。

資料は、経済産業省ウェブサイトからダウンロード可能です。

また、ご希望の方には冊子をお届けするため、準備が整い次第、知財室ホームページからの請求受付も開始予定です。
冊子の送付についてをご覧ください。

「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」も引き続き掲載しております。
営業秘密 営業秘密を守り活用する
をご確認いただき、ご活用いただけますと幸いです。

5.「限定提供データに関する指針」を改訂/データ利活用に関する資料を公表:経済産業省 知的財産政策室

平成30年改正によって、企業が保有・活用する「情報」の保護を、営業秘密と相互補完的に守る不競法上の枠組みとして、限定提供データに関する規定が創設されました。従前より、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しておりましたが、この度、規定の創設時からの実務の進展、デジタル化の進展等を踏まえて、指針の改訂を行いました(令和4年5月)。

改訂した「限定提供データに関する指針」は限定提供データに関する指針(PDF)からご覧いただけます。

知財室では、その他のデータ利活用に関する資料についても経済産業省ウェブサイトにて公表しております。

データ利活用の留意点を網羅的に説明した詳細版で、データ利活用のQ&Aや企業の成功事例を載せた冊子です。

データ利活用のエッセンスをまとめた概要版で、データ利活用に取り組み始めたい方向けの冊子です。

データ利活用のポイント集を基に企業のデータ利活用の事例を詳細に記載した事例集です。
データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方は是非ご覧ください。

6.営業秘密PR動画(ショートドラマ&解説動画)を公開中:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

トップセールスでうっかり、取引先からの要請に答えたら、展示会でアピールし過ぎて、など営業秘密で"やりがち"な企業の失敗をYouTube動画で公開中です。

累計再生4,370回。見て欲しい方はもっとたくさんいます。
「そういえば自社の営業秘密って、大丈夫なのかな。」と思った方、必見です。

YouTubeで公開中の動画

・第1弾 【この話、自分には関係ない本当にそう】トップセールスでのうっかり
・第2弾 【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇
・第3弾 【会社総出でアピールしたら】展示会の落とし穴

7.報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表:一般社団法人 日本経済団体連合会

経団連は2021年10月に、報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表しています。

副業・兼業は、働き手と企業、双方にとって有益な施策であるため、経団連としても推進しています。副業・兼業の施策を推進する際の留意点は多岐にわたりますが、「機密(秘密)漏洩の防止」も重要です。「機密(秘密)漏洩」の恐れがある場合は、副業・兼業を制限することを就業規則や申請書、誓約書に明記しておくなど、各社はさまざまな工夫を講じています(本文18ページ参照)。

15社の具体的な対応事例(25ページ以降)も掲載しておりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

詳しくは経団連ウェブサイトからご覧ください。

8.「不正競争防止法テキスト2022」を公表:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法のテキスト最新版を、知財室のページからご覧いただけます。

また、不正競争防止法について説明会をしてほしいなどのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。
知財室員がご説明に伺います。

9.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)が運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい。」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

10.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。

地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。

お問い合わせ:
E-mail:trade-secret@inpit.go.jp

事務局のつぶやき

今月のIPA

昨今、新聞の発行部数の激減がニュースとしてささやかれることもあるようですが、皆様はご自宅で新聞を購読しておられますか。

我が家では未だにずっと購読しているのですが、最近、折り込みチラシの中に貴金属、切手などを対象とした「買取業者系のチラシ」がやけに多いなと感じることがありました。コストがかかるでしょうに頻繁にチラシが入るからには、それだけチラシ効果があり宅内に眠るお宝を持ち込む方がそれなりにいるのだ、とふと想像しました。

お宝といえば営業秘密。営業秘密の「歴史」を振り返ると、過去あまたのインシデントがあり、それらを見据えた法改正などを経て、万が一に備え「営業秘密として」の保護・管理の体制が整備されてきましたが、当初「わが社には秘密として管理するような情報は無いわい」といった自社の情報価値(お宝)に気が付かない企業の話が営業秘密"あるある"として取り沙汰されたことを思い出しました。

さて、営業秘密"あるある"を我が身になぞらえ、自らがその価値に気付いていないお宝が我が家にあるのかと頭を巡らせ、あわよくばということでクローゼットを探してみました。果たして、見つけたのはカビが生えたバッグと衣替えにより世代交代した古着の数々でした。これでは高額換金は期待できそうにありません。現実は厳しいですね。

「つぼマガ」第77号をお読みいただき、ありがとうございました。(編集子)

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