情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2022年8月17日 第74号

公開日:2022年8月17日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

内閣府知的財産戦略推進事務局
参事官 浜岸広明

毎年の政府の知財政策を取りまとめた「知的財産推進計画」は皆様ご存じの方も多いかと思います。本年6月3日の知的財産戦略本部会合で決定された「知的財産推進計画2022」は、その副題が「意欲ある個人・プレイヤーが社会の知財・無形資産をフル活用できる経済社会への変革」となっており、いま政府全体で検討を行っているスタートアップ支援政策について知財の観点から盛り込んだものとなっています。

具体的には、スタートアップが知財対価として株式・新株予約権を活用しやすい環境整備や、スタートアップにおける事業化を通じて大学の研究成果を社会実装するための適切な権利取得支援、大学と企業との共同研究成果をスタートアップが利用しやすくなるような共有特許の取り扱いルールの検討などが含まれています。

この知的財産推進計画2022では、営業秘密についても、(1)不正競争防止法における営業秘密・限定提供データに係る規律について、証拠収集手続の強化、管轄・準拠法、ライセンシーの保護などの観点から、時代の要
請に応じた適切な制度の在り方を検討すること、(2)農業分野の栽培・飼養技術やその他のノウハウ等の知的財産を営業秘密として保護するに当たり、農業分野の特殊性を踏まえた技術・ノウハウ等の管理・取扱手法や留意点等をまとめた「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」が2022年3月に策定されたこと、などが取り上げられています。

その他、「知財・無形資産の投資・活用促進メカニズムの強化」、「標準の戦略的活用の推進」、「デジタル社会実現に向けたデータ流通・利活用環境の整備」、「デジタル時代のコンテンツ戦略」、「中小企業/地方(地域)/農林水産業分野の知財活用強化」、「知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化」、「アフターコロナを見据えたクールジャパン(CJ)の再起動」について重点施策として盛り込まれている、知的財産推進計画2022について、ぜひ皆様にもご一読頂けますと幸いです。

目次

【1】訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。
過去の掲載記事は、弁護士知財ネット 営業秘密メルマガコラムからご覧ください

【2】サイバーセキュリティ対策

1.【緊急】Microsoft製品の脆弱性対策について(2022年8月):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

2022年8月10日(日本時間)に脆弱性の修正プログラムが公表されました。CVE-2022-34713 の脆弱性については Microsoft社が「悪用の事実を確認済み」と公表しており、今後被害の拡大が懸念されるため、早急に修正プログラムを適用してください。

詳細は次をご確認ください。

2.Adobe Acrobat および Reader の脆弱性対策について:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

Adobe Acrobat および Reader に関する脆弱性(APSB22-39)がアドビシステムズ社から公表されています。「過去に攻撃リスクが高いとされた脆弱性」であるとされており、早急な修正プログラムの適用が望まれます。

詳細は次をご確認ください。

3.夏休みにおける情報セキュリティに関する注意喚起:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

多くの人がお盆休みや夏休みなど長期休暇を取得する時期を迎えるにあたり情報セキュリティに関する対策について注意喚起を行いました。

詳細は次をご確認ください。

【3】セミナー・イベント等のお知らせ

1.「はじめての「営業秘密管理」」研修動画掲載のお知らせ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITでは、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しました。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取組もうという方向けの内容で、無料でご視聴頂けます。
動画は「営業秘密管理」eラーニングコンテンツのページよりご覧いただけます。

【4】営業秘密関連情報のご紹介

1.「知的財産推進計画2022」の決定:内閣府 知的財産戦略推進事務局

知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2022」が決定されました。

「知的財産推進計画2022」では、営業秘密に関する施策についても掲載されています。

詳細は次をご確認ください。

2.「秘密情報の保護ハンドブック」を改訂しました:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講義等において、不正競争防止法の概要とともに紹介・説明させていただいておりました秘密情報の保護ハンドブックについて、改訂版を公表いたしました(令和4年5月)。

関連する法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・情報環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正や、「重要な秘密情報の多様性」を考慮した修正などが今回の改訂の中心です。

資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。
また、ご希望の方には冊子をお届けするため、準備が整い次第、知財室ホームページからの請求受付も開始予定です。

「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」も引き続き掲載しております。
次のリンク先をご確認いただき、ご活用いただけますと幸いです。

3.「限定提供データに関する指針」を改訂しました/データ利活用に関する資料を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

平成30年改正によって、企業が保有・活用する「情報」の保護を、営業秘密と相互補完的に守る不競法上の枠組みとして、限定提供データに関する規定が創設されました。従前より、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しておりましたが、この度、規定の創設時からの実務の進展、デジタル化の進展等を踏まえて、指針の改訂を行いました(令和4年5月)。

改訂した「限定提供データに関する指針」は限定提供データに関する指針(PDF)からご覧いただけます。

知財室では、その他のデータ利活用に関する資料についてもホームページにて公表しております。

データ利活用の留意点を網羅的に説明した詳細版
データ利活用のQ&Aや企業の成功事例を載せた冊子です。

データ利活用のエッセンスをまとめた概要版
データ利活用に取り組み始めたい方向けの冊子です。

データ利活用のポイント集を基に企業のデータ利活用の事例を詳細に記載した事例集です。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方は是非ご覧ください。

4.営業秘密PR動画を公開中です(ショートドラマ&解説動画):独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

トップセールスで張り切った社長のうっかり、取引先からの要請を渋々ながらも受け入れたことで起こった悲劇、展示会で会社総出でアピールしたら大失敗。

営業秘密に関して、いかにも”やりがち”な企業の失敗をYouTube動画で公開中です。累計再生3,000回。まだまだターゲットに届いていません。自社のノウハウ管理が気になる皆さま、必見です。

・第1弾 【この話、自分には関係ない本当にそう】トップセールスでのうっかり
・第2弾 【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇
・第3弾 【会社総出でアピールしたら】展示会の落とし穴

5.報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表しております:一般社団法人 日本経済団体連合会

経団連は2021年10月に、報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表しています。

副業・兼業は、働き手と企業、双方にとって有益な施策であるため、経団連としても推進しています。

副業・兼業の施策を推進する際の留意点は多岐にわたりますが、「機密(秘密)漏洩の防止」も重要です。「機密(秘密)漏洩」の恐れがある場合は、副業・兼業を制限することを就業規則や申請書、誓約書に明記しておくなど、各社はさまざまな工夫を講じています。(本文18ページ参照)

15社の具体的な対応事例(25ページ以降)も掲載しておりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

詳しくは次のリンク先よりご覧ください。

6.不正競争防止法テキスト2021を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法テキストの最新版は次のリンク先からご覧いただけます。

また、不正競争防止法について説明会をしてほしいなどのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。
知財室員がご説明に伺います。

7.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITが運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい。」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは知財総合支援窓口 知財ポータルの営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

8.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。

地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。
登壇予定のセミナーは次のリンク先でお知らせしております。

お問い合わせは、次をご参照ください。
E-mail:trade-secret@inpit.go.jp

事務局のつぶやき

今月のIPA

コロナウイルス蔓延以来、ずいぶん長く観劇もままならない状況でしたが、ようやく人が集まる興行への制約もゆるやかになり、気兼ねなく、映画館、コンサート、観劇などにも行けるようになりました。

さて皆さま、歌舞伎はご覧になられますでしょうか。昨今は、歌舞伎でも「今時」の漫画を題材にした「ONE PIECE」「風の谷のナウシカ」なども上演されていますが、歌舞伎は言わずと知れた重要無形文化財に指定された古典芸能です。歌舞伎の演目の中には特定の家に伝わる「お家芸」があり、例外はあれど主要な役はその家と一門が演じます。無形とはいえ、門外不出の芸は営業秘密と相通じるものを感じないでしょうか。

お家芸は役者稼業、興行的な観点で「有用性」が高いものですよね。また、昨今は動画を繰り返し観て役を習得することが当たり前になっているようですが、本来、芸とは「非公知性」が高く容易に知りえる情報ではありませんでした。では、お家芸に「秘密管理性」はあるのでしょうか。現在活躍されている役者の中には突然先達を亡くし、芸の継承に苦慮したことがうかがえるエピソードなどもあるようです。このように、役者が芸を自身に蓄え、外に漏らさず、代々家に伝えていくところは、秘密管理に例えることができるかもしれません。本来の秘密管理とは話が違いますが。

歌舞伎に限らず、伝統芸には必然的にこうした営業秘密的な性質があるのかもしれませんね。また今度、ちょっと背筋を伸ばして観劇したいと思っています。

「つぼマガ」第74号をお読みいただき、ありがとうございました。

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発行/編集:営業秘密官民フォーラム

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