情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2022年5月18日 第71号

公開日:2022年5月18日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
知的財産部長 井上 弘亘

産業技術総合研究所では、昨年度、産総研が今後、日本や世界の社会に対してどのような役割を果たしていくべきか、産総研に集う者にとってどのような組織であるべきか、誰もが理解し、共有することが出来るものとして、「産総研ビジョン」が策定されました。「ともに挑む。つぎを創る。」です。社会と共に未来を創る思いが込められております。

「ともに」挑むわけですので、営業秘密等の機密情報が適切に保護・管理されること、安心して連携できる研究所であることが言わずもがな大切なことです。その為に、機密情報に関する規程・要領や、所内システムの整備等の機密情報を適切に取扱う体制づくり、全職員が受講必須のe-ラーニング等の研修を通して職員一人一人のリテラシー向上が図られております。

このように、産総研としましても営業秘密の保護・活用に努めているところ、「営業秘密のツボ」や「営業秘密官民フォーラム」を通じて発信していただいております様々な情報は大変参考になっており、この場を借りて感謝申し上げます。

目次

【1】訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

東南アジアでの営業秘密保護対策:弁護士知財ネット 弁護士 鷹野 亨

東南アジアでの子会社や工場の設立、現地企業との提携は盛んになる一方、本社では立派な情報管理規程があるのに子会社の現地従業員はその規程を見たこともない等、現地の営業秘密保護が進んでいない企業も少なくありません。営業秘密の保護意識がまだ高いと言えない東南アジア諸国では漏えい事例は日常的に発生しています。

本稿では、東南アジアでの営業秘密保護対策について解説いたします。

詳細は、弁護士知財ネット 営業秘密メルマガコラムをご覧ください。

【2】サイバーセキュリティ対策

1.サイバー攻撃を受けた組織における対応事例集(実事例における学びと気づきに関する調査研究):内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)

内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)では、サイバー攻撃を受けた企業や研究機関等の協力の元、インシデント対応・体制強化・人材確保等について事例調査を実施し、得られた教訓や気づきを含む事例集を公開しました。

詳しくは次の資料をご参照ください。

2.【緊急】Microsoft製品の脆弱性対策情報:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

5月11日(日本時間)にMicrosoft製品に関する脆弱性の修正プログラムが公表されました。これらの脆弱性を悪用された場合、ソフトウェアの異常終了、攻撃者によるパソコン制御といった様々な被害が発生するおそれがあります。至急、修正プログラムを適用することが望まれます。

詳細は次をご確認ください。

3.【更新】「エモテット」と呼ばれるウイルスへの感染を狙うメールについて:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

4月25日頃より、エモテットへ感染させる新たな手口として、ショートカットファイルの悪用が報告されています。ファイルを開くだけでエモテットに感染するため、添付ファイルの取り扱いにはショートカットの場合も注意が必要です。

詳細は次をご確認ください。

【3】セミナー・イベント等のお知らせ

1.「はじめての「営業秘密管理」」研修動画掲載のお知らせ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITでは、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しました。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取組もうという方向けの内容で、無料でご視聴頂けます。
動画は「営業秘密管理」eラーニングコンテンツよりご覧いただけます。

【4】営業秘密関連情報のご紹介

1.「秘密情報の保護ハンドブック」を改訂しました:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講義等において、不正競争防止法の概要とともに紹介・説明させていただいておりました秘密情報の保護ハンドブックについて、改訂版を公表いたしました(令和4年5月)。

関連する法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・情報環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正や、「重要な秘密情報の多様性」を考慮した修正などが今回の改訂の中心です。

資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。また、ご希望の方には冊子をお届けするため、準備が整い次第、知財室ホームページからの請求受付も開始予定です。

「秘密情報の保護ハンドブックのてびき」も引き続き掲載しております。
次のリンク先をご確認いただき、ご活用いただけますと幸いです。

2.「限定提供データに関する指針」を改訂しました/データ利活用に関する資料を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

平成30年改正によって、企業が保有・活用する「情報」の保護を、営業秘密と相互補完的に守る不競法上の枠組みとして、限定提供データに関する規定が創設されました。従前より、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しておりましたが、この度、規定の創設時からの実務の進展、デジタル化の進展等を踏まえて、指針の改訂を行いました(令和4年5月)。

改訂した「限定提供データに関する指針」は限定提供データに関する指針(PDF)からご覧いただけます。

知財室では、その他のデータ利活用に関する資料についてもホームページにて公表しております。

データ利活用の留意点を網羅的に説明した詳細版
データ利活用のQ&Aや企業の成功事例を載せた冊子です。

データ利活用のエッセンスをまとめた概要版
データ利活用に取り組み始めたい方向けの冊子です。

データ利活用のポイント集を基に企業のデータ利活用の事例を詳細に記載した事例集です。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方は是非ご覧ください。

3.【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇ショートドラマ&解説動画(6:28):独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

付き合いの長い取引先といつも通りの商談。しかし、今日は思いがけないことを言われ。社長の苦渋の判断は、やがて会社に悲劇をもたらすことに。
大切な秘密情報は、見せない。教えない。渡さない。

手前味噌ですが今回も面白いです。

・YouTube:【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇(INPIT公式)
・第1弾:【この話、自分には関係ない本当にそう】トップセールスでのうっかり

も引き続きよろしくお願いいたします。

後日、公開予定。
第3弾:展示会での落とし穴 会社総出でアピールしたら

4.報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表しております:一般社団法人 日本経済団体連合会

経団連は2021年10月に、報告書「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズ2とエンゲージメント向上を目指して」を公表しています。

副業・兼業は、働き手と企業、双方にとって有益な施策であるため、経団連としても推進しています。

副業・兼業の施策を推進する際の留意点は多岐にわたりますが、「機密(秘密)漏洩の防止」も重要です。「機密(秘密)漏洩」の恐れがある場合は、副業・兼業を制限することを就業規則や申請書、誓約書に明記しておくなど、各社はさまざまな工夫を講じています。(本文18ページ参照)

15社の具体的な対応事例(25ページ以降)も掲載しておりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

詳しくは次のリンク先よりご覧ください。

5.不正競争防止法テキスト2021を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法テキストの最新版は次のリンク先からご覧いただけます。

また、不正競争防止法について説明会をしてほしいなどのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。
知財室員がご説明に伺います。

6.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITが運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい。」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは知財総合支援窓口 知財ポータルの営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

7.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。

地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。
登壇予定のセミナーは次のリンク先でお知らせしております。

お問い合わせは、次をご参照ください。
E-mail:trade-secret@inpit.go.jp

事務局のつぶやき

今月のIPA

ITの認証につきまとう、パスワードの上手な運用は頭の痛い問題ですね。

突然ですが、今回はIPAが去る3月に公開した「情報セキュリティの倫理に対する意識調査と脅威に対する意識調査」から「パスワードのセキュリティ対策」について、プライベートでパソコンを利用する人の対策状況をご紹介させて頂きます。この調査は個人が対象で、調査結果は民間企業等において社員教育、研修用等にも活用されています。四つのパスワードセキュリティ対策の「実施されていない率(平均)」は次の通りでした。

推測しにくいパスワードの設定

22.3%

できるだけ長いパスワードの設定

33.6%

パスワードの使い回しをしない

44.6%

初期パスワードを変更する

32.0%

対策実施率が最も低いのは、「パスワードの使い回しをしない」で4割を超過していますが、調査結果の経年変化を見ても実のところ例年ほぼ変動が無く、実態を映しているものと考えられます。

切り口は変わりますが「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」の「営業秘密の電子ファイルへのパスワード設定」の実施率は30.5%でした。

一般的にセキュリティ対策には専門人材と予算が不可欠と言われます。「パスワードのセキュリティ対策」はお金をかけずとも一定の効果が期待できる最低限の対策にも関わらず、実行しない人がなぜ一定数いるのか。その理由は社会心理学的にも興味深いところではありますが、個人的には「セキュリティ対策をどこか面倒に思う心理」が働く結果ではと慨嘆しているところでもあります。

こうした実態、皆様はどのような印象を持たれたでしょうか。

「つぼマガ」第71号をお読みいただき、ありがとうございました。

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発行/編集:営業秘密官民フォーラム

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