社会・産業のデジタル変革
公開日:2026年5月13日
本レポートは、IPAが2025年度に実施した2つの一次調査と世界の政策・トレンドの分析を統合し、日本のOSS推進の「現在地」と「次の一手」を示すものである。Part I(第2・3章)では国内企業362社のソフトウェア動向調査と世界7か国・30,298リポジトリのGitHub国際比較調査を実施した。Part II(第4・5章)ではAI・セキュリティ・持続可能性の3軸から世界のトレンドを整理し、日本との乖離を分析した。Part III(第6・7章)では5つの政策提言と、日本固有の強みを起点とした「日本型OSSモデル」を提示している。
OSSポリシー整備率は2024年度実績19.5%(業種・企業種別による統計的補正後32.0%)から2025年度実績36.7%へと増加し、OSS化実施率も2024年度実績4.6%(同12.0%)から15.2%へと拡大した。「わからない」という漠然とした不安が2024年度実績34.8%(同26.0%)から14.1%に急減し、「セキュリティ面の懸念(25.7%)」や「技術ノウハウ・人材不足(21.5%)」といった実践段階の課題へとシフトした。日本企業のOSS活用は「認識段階」から「実践段階」へ移行しつつある傾向が見られる。一方、OSPO設置率の2025年度実績4.1%(設置済み+計画中でも6.9%)は、補正後2024年度値(4.8%)と比較すると実質横ばいから微減となっており、ポリシー整備と組織体制の大きな乖離が次の重要課題として浮上している。
世界7か国・30,298リポジトリのGitHub比較調査は「日本は周回遅れ」という言説とは異なる傾向を示した。日本の行政OSSは626件・22組織という規模であり、英米の絶対規模には及ばないものの、ドイツ・シンガポール・エストニアと同等の発展段階にあると考えられる。特にPLATEAUや国土地理院のGIS分野には、整備されたオープンデータと活発なユーザー・開発者コミュニティという2つの成功要因が揃っており、AI時代に不可欠なAI-Ready基盤が日本においても既に形成されつつあることを示唆している。デジタル庁の7リポジトリに集まるスター数1,043件は、日本の在来種に対する国内外エンジニアの潜在的な熱量を端的に示す。
欧州では「Digital Sovereignty Runs on Open Source」がスローガン化され、欧州の調達法制化の加速、独シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州におけるプロプライエタリ製品からの脱却など、OSSを政策の核心に据える動きが加速している。AIとOSSの不可分化も進み、LLMの推論フレームワークからMLOpsまでAIスタックの多くがOSSで構成される現在、OSSガバナンス未整備はAI活用においても重大なリスクを伴う可能性が指摘される。またEUサイバーレジリエンス法(CRA)は、EU市場向け製品・サービスを展開する日本企業にも適用されており、緊急度の高い対応が求められる状況にある。
本レポートはPart IIで明らかにしたギャップへの直接回答として以下の5つの提言を示す。
さらに「在来種戦略・種まき戦略・Rules as Code」の3軸からなる「日本型OSSモデル」を提示する。欧米の単純な模倣ではなく、民間セクターが蓄積したOSSガバナンスのノウハウと公共セクターの在来種コード資産が出会う相乗効果の設計こそが、日本固有の優位性となり得る。
本資料「2025年度オープンソース推進レポート 世界の潮流と日本の現在地 AI・デジタル主権時代のオープンソースエコシステムの再設計」は、著者「独立行政法人情報処理推進機構」により作成されました。本資料はCreative Commons Attribution 4.0 International License の下に提供されています。ただし、本資料内の一部に第三者の著作権を含む場合は、その部分に別途表示がある場合を除き、本ライセンスの適用外となります。
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1. はじめに
2. 日本企業のOSS活用の実態と課題——2025年度ソフトウェア動向調査
3. 行政によるオープンソースソフトウェア公開活動の国際比較調査——定量データによる日本の位置付け
4. 世界のトレンドが日本に突きつける課題
5. 世界の政策動向
6. ギャップを埋める次の一手
7. 今後のIPAオープンソース推進の重点アクション
8. おわりに——「提言」から「共創」へ、次の一歩を踏み出すために
9. 参照文献
IPA デジタル基盤センター

2026年5月13日
公開