社会・産業のデジタル変革
IPA調査分析ディスカッション・ペーパー2024-01
公開日:2024年7月25日
独立行政法人情報処理推進機構
調査分析室 河野浩二、前・NY事務所 大出真理子[脚注1]
本ディスカッション・ペーパーは、執筆者の見解に基づく内容であり、独立行政法人情報処理推進機構としての公式⾒解を示すものではありません。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2024年2月から5月初旬にかけて「企業等におけるDX推進状況等調査分析」(以下、「DX動向2024調査」)を実施し、その結果を「DX動向2024」として公表、DXの取組を行う企業が増加していること示した。DXの内容別取組の成果を見ると、デジタイゼーションや業務の効率化による生産性向上では過半数企業で成果が出ている一方、顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的変革や新製品・サービスの創出等、本格的なデジタルトランスフォーメーション[脚注2]の成果が出ている企業の割合は約2割にとどまる。本稿では、日本企業のデジタルトランスフォーメーションの成果創出が2割にとどまる原因や成果創出に向けて求められる取組等を明らかにするため、「DX動向2024調査」からデジタルトランスフォーメーションで成果を上げる企業に注目し、成果を上げる企業と成果が出ていない企業との取組や体制の違いに着目した定量的な分析を行った。その分析から日本企業のDXの成果創出に関し、DXの段階に応じた2つの崖壁[脚注3]があり、成果を上げる企業では経営層のデジタル・ITに関する知見、アジャイルな経営スタイルの取入れ、全社的データ利活用、AI利活用、コア事業ITシステム開発の内製化等を積極的に進めるともに、DXの取組推進の土壌となる企業文化・風土形成に特徴が見られることを示した。
なお、本稿はDXの取組や体制等と成果有無の相関分析を行っているが、取組と成果創出の因果を分析する上では、企業の取組のケーススタディやヒアリング等により、その取組や体制がデジタルトランスフォーメーションの成果創出にどのように機能しているのかといった分析を重ねる必要がある。そのため、本稿は、「DX動向2024調査」の結果から見たデジタルトランスフォーメーションで成果を上げる企業の取組の特徴を定量的に明らかにするという観点の分析であることに留意いただきたい。他方、日本企業の8割近い企業がデジタルトランスフォーメーションの成果創出が十分にできていないという事実を踏まえ、本稿がデジタルトランスフォーメーションに挑む企業の参考となれば幸いである。
IPA 総務企画部 調査分析室
2024年7月25日
公開