社会・産業のデジタル変革
IPA調査分析ディスカッション・ペーパー2024-03
公開日:2024年11月20日
独立行政法人情報処理推進機構
調査分析室 遠山 真
本ディスカッション・ペーパーは、執筆者の見解に基づく内容であり、独立行政法人情報処理推進機構としての公式⾒解を示すものではありません。
中堅企業は日本の経済を支える重要な存在であり、政府も2024年を中堅企業元年と位置付け、成長促進策を発表している。本稿では、DX動向2024の調査(以下、「2023年度調査」)の中堅企業に着目、DXに関連した特徴を整理、企業の成長を支えるDXの取組や推進体制のあり方を探ることとした。
2023年度調査では中堅企業のDXへの取組割合は高まっているが、新規製品・サービスの創出、ビジネスモデルの変革など、DXの上位段階の成果は今一つであった。また、中堅企業の企業文化・風土では、社内の風通しや多様な価値観、働き方の柔軟性が不十分、最先端・リスクのある仕事へのチャレンジが容易でないなどの課題がみられた。これは成長意欲が十分でない経営者や仕事に余裕がない従業員がDXの取組に影響を与えているためと推察される。そこで、中堅企業の役員や従業員(人材)について分析を行った。
その結果、中堅企業ではデータサイエンティストやサイバーセキュリティ等のデジタルスキルを有する人材に加え、「DXの戦略立案や統括を行う人材」「DXを現場で推進、実行する人材」といった本質的な人材が不足していることが判明した。また、仕事に余裕がなく、従業員のデジタルリテラシーの向上の取組が進まず、その結果、社内の人材の育成・活用が難しいことが推察された。さらに、IT分野の見識がある役員がいない割合が大企業の2倍近くになっている。そのような企業では企業のビジョンや方向性の周知、DX予算の確保等も進んでいなかった。
中堅企業の実情を考慮すれば、外部のコンサルに委託したり、デジタルスキルを有する人材を必要な量だけ雇用して一気にDXを推進することは現実的ではない。まずは社内で将来像(ビジョン)を共有したうえで、事業を統括する役員や現場を熟知した従業員が現業と調整しつつ、徐々に自身のデジタルリテラシー向上やスキルアップを図り、DXを統括する人材、推進する人材となっていくことが必要と考えられる。そして、企業として一定のデジタルへの対応力が付いてきた状況で、一体となって新技術を活用したビジネスにリスクをとってチャレンジしていくことが最重要と考えられる。
IPA 総務企画部 調査分析室
2024年11月20日
公開