社会・産業のデジタル変革

7. 今後のIPAオープンソース推進の重点アクション

2025年度オープンソース推進レポート:Part III ギャップへの対処

7.1 2025年度版レポートで提示する重点3テーマ

テーマ1:OSPOテンプレート・ツールの公開

企業・組織が自社のOSSガバナンス体制を整備するための実践的なツールを提供することで、OSPO設置率が2025年度実績で4.1%(設置済み+計画中でも6.9%)にとどまる現状(第2章)の底上げを目指す。欧米の先行事例は多数存在するが [Trinkenreich Lawson, 2025]、日本の組織文化・法制度・調達慣行に適合したテンプレートは未整備の状態だ。IPAが中立的な立場から標準テンプレートを公開することで、特にOSSガバナンス整備のノウハウが乏しい中規模企業・地方自治体にとっての参入障壁を下げることができる。

テーマ2:国内OSS人材育成プログラムの試行

第2章で確認した上位課題である「技術ノウハウ・人材不足(21.5%)」への直接的な対応であり、産学官の連携による育成エコシステムの構築を目指す。

テーマ3:GitHub国際比較調査の継続・深化

2025年度初めて実施したGitHub調査を定点観測として継続することで、日本の位置変化を毎年データで確認する「測定→改善→再測定」のサイクルを確立する。

7.2 毎年計測・修正するための3種指標設計

アクションを一過性に終わらせないためには、適切な指標を設定して定期的に計測し、課題が浮上した時点で素早く修正を図るサイクルを制度化することが求められる。本節では2026年度版レポート以降での進捗確認を前提とした指標設計を示す。指標の設計において重要なのは「測定可能性」と「行動との接続」であり、測定だけに終わらず施策修正の根拠として機能することが求められる。
定量指標としては国内行政OSSリポジトリ数・企業OSSポリシー整備率・OSPO設置率の3種を年次追跡する。これらは本年度の調査・分析で基準値を確立しており、同一条件での継続測定が可能だ。定性指標としては在来種OSSの他分野横展開事例とRules as Code実装事例を追跡する。これらは数値化が難しい日本型モデルの進捗を可視化するための指標であり、各年版レポートの事例章との連動によって追跡される。国際比較指標としては7か国ランキング内での日本の位置変化を毎年同条件で再実施することで、相対的な前進・後退を評価する。特に「GitHub定点観測」は継続性が鍵であり、次年度以降の進捗確認を前提とした指標設計として位置づけている。