デジタル人材の育成

サイバーデセプション — 攻撃者心理を逆手に取る能動的防御戦略 —

最終更新日:2026年7月31日

プロジェクトの背景

サイバー攻撃が高度化・巧妙化する中、ファイアウォールやEDR、ゼロトラストといった従来型のセキュリティ対策を重ねるだけでは、被害を完全に防ぎきれない状況が続いています。この背景には、防御側がすべてのIT/OT資産を守り続けなければならないのに対し、攻撃者はたった一つの隙を見つけるだけで侵入できるという、圧倒的な「投資と労力の非対称性(構造的な不均衡)」があります。

この構造的な不利を覆すため、本プロジェクトでは、機密情報や生産設備を守る視点から、画面の向こう側で意思決定を行う「攻撃者の心理(認知・判断・行動)」へと防御の視点を広げる「サイバーデセプション(欺瞞)」に着目しました。

しかし日本国内では、ハニーポットのような個別技術は知られていても、サイバーデセプションの必要性や有効性、技術類型や期待される効果・限界、既存対策との連携方法や実務への適用上の留意点までを体系的に整理した情報は十分とは言えません。そこで本書では、サイバーデセプションに関する共通理解の形成を図るとともに、自組織の戦略から作戦・戦術へと一貫して設計できる独自フレームワーク「CYDEC Design Framework(CDF)」を提案し、さらに検証結果を通じて有効に機能する条件や導入時の留意点を整理することで、日本企業における能動的防御の理解促進と実務への適用を支援することを目的にホワイトペーパーとしてまとめました。

ホワイトペーパーの構成

本書は、サイバーデセプションの基本概念から、戦略・作戦・戦術の一貫したフレームワーク、具体的なデセプション技術、そして実環境を想定した効果検証までを全9章で整理しています。

第1章 導入

本書の作成背景、目的、想定読者を示し、サイバーデセプションを取り上げる意義と本書の位置づけを明確化します。

第2章 能動的防御へのパラダイムシフト

従来型のセキュリティ対策が抱える課題を整理し、サイバーレジリエンスの観点から、攻撃者に能動的に働きかける防御の必要性を示します。

第3章 デセプション

デセプションの一般概念を整理し、軍事やマジックなどにおける活用例、欺瞞フレームワークを通じて、相手の認知・判断・行動に影響を与える仕組みを示します。

第4章 サイバーデセプション

デセプションの考え方をサイバー空間に適用し、サイバーデセプションの基本概念、セキュリティ戦略に及ぼす効果、攻撃者心理から見た有用性を整理します。サイバーデセプションを、単なるおとり技術ではなく、攻撃者の意思決定に作用する防御戦略として捉えるための基礎を示します。

第5章 サイバーデセプションの構想と展開

サイバーデセプションを組織のセキュリティ戦略に組み込むための考え方を整理します。戦略・作戦・戦術の関係、MITRE Engageとの対応を確認したうえで、本書独自の設計整理としてCYDEC Design Framework(CDF)を提示し、目的、脅威、攻撃フェーズ、配置場所、手段を一貫して整理する視点について示します。

第6章 サイバーデセプションの設計・運用

CYDEC Design Framework(CDF)を踏まえ、サイバーデセプションを実環境に適用するための設計・運用上の考慮点を整理します。基本設計、詳細設計、実装・運用、評価・改善の流れに沿って、サイバーデセプションを継続的に機能する防御策として展開する方法を示します。

第7章 企業・組織における導入の考え方と設計例

CYDEC Design Framework(CDF)を用いた具体的な導入の考え方と設計例を示します。想定する脅威、守るべき資産、攻撃段階、配置場所、技術要素を対応づけることで、サイバーデセプションを構想から設計へ落とし込む流れを具体化します。

第8章 サイバーデセプションの検証

検証環境および前提条件を整理したうえで、3つの検証とその結果を示します。また、検証結果を横断的に分析し、サイバーデセプションが有効に機能する条件、実務導入時の留意点、および検証上の限界を考察します。

第9章 総括

本書全体の議論と検証結果を踏まえ、サイバーデセプションの意義を改めて整理します。あわせて、経営層に向けた示唆、導入・運用における留意点、今後の課題と展望を示します。

コラム

サイバーデセプションという聞きなれない言葉を身近な事例をもってイメージしやすく紹介したものを多数掲載しています。

成果物(ダウンロード)

更新履歴

  • 2026年7月31日

    「サイバーデセプション — 攻撃者心理を逆手に取る能動的防御戦略 —」を公開しました。