デジタル人材の育成
未踏事業をご紹介する冊子「MITOU: Ingenious Creators ITで切り拓く未来」から、[特集2]拡がる未踏エコシステムをピックアップしました。
さまざまな分野で活躍する修了生の姿を、インタビューと共に紹介します。
国連によってSDGs(エスディージーズ 持続可能な開発目標)が採択され、社会課題の解決が世界的なテーマとなっています。また日本国内では、高齢化や過疎化など地域課題が山積しています。これら困難な社会課題に対抗する手段として、ITの活用が注目されています。
八木田樹氏は、大学院時代の同級生であり同じ未踏アドバンスト事業の出身者でもある城戸祐亮氏(2017年度未踏アドバンス事業)と共にLegalscapeを立ち上げ、法律業務の支援に特化したサービス開発を推進しています。
「テクノロジーで、地域をより住みやすく」をテーマに、企業や団体の枠を超えた様々なコミュニティで積極的に活動しているのが関治之氏(2009年度)です。現在はCodefor Japanの代表理事としてシビックテックを推進するほか、オープンソースGISを使ったシステム開発などにも注力しています。
2018年につくば市役所に新設された「スタートアップ推進室」の推進監に就任した高瀬章充氏(2011年度)は、筑波大学大学院在学中にアプリ分析サービスApp Apeを提供するフラーを共同創業し、2015年には空の創業者兼最高経営責任者となった経験を生かし、スタートアップ戦略策定やスタートアップエコシステムの拠点形成に従事しています。
また、安川要平氏(2012年度)は、7~17歳の子どもたちを対象にしたプログラミング道場「CoderDojo」を友人たちと日本で立ち上げ、現在では全国222以上までコミュニティが拡大。一般社団法人未踏が主催する「未踏ジュニア」のPMも務めています。
Miki Yagita
八木田 樹氏
株式会社Legalscape 代表取締役 最高経営責任者
1992年山形県生まれ。2015年、東京大学理学部情報科学科卒業。2017年、同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了。在学中に研究してきた"Similarity Analysis on Legal Court Case Documents"に基づく判例検索サービスに関して、2017年度未踏アドバンスト事業に採択される。
法律の世界においては、Googleのような、すべての法情報から検索できるようなサービスはまだありません。
そもそも電子化されていない文献が大量に存在する上、ナイーブな電子化を行い単純なキーワード検索をするだけでは、複雑な法情報をうまく扱えず、本当に知りたいことは膨大な検索結果の中に埋もれてしまいます。
この課題を解決すべく、未踏での経験を踏まえ、革新的なアーキテクチャーに基づいたリーガルリサーチシステム「Legalscape」の開発に取り組んでいます。
出版社と提携して法律書籍や雑誌などの電子化を進めるとともに、それらの文献や各省庁から出される法律の改正案、パブリックコメントなどを、高度な自然言語処理技術等を使って構造化することで、どの文献のどこに何が書いてあるのかを明らかにし、さらに相互に関連する情報同士を紐づけることで、横断的な検索やナビゲーションを可能とするものです。
法治国家にとって法はきわめて重要な基盤でありながら、非常に難解かつ複雑で、まったく整理されていない状態にあり、容易に活用することができません。そうした法(legal)を「誰もが一目で見渡せる景色(-scape)のようなものとして提示したい」という思いが根幹にあり、Legalscapeを新しい社会インフラにすることを目指しています。
単なる技術の押し付けではなく、法曹界や業界の関係者と協働しながら真の利便性を追求していくことが最大のポイントだと考えています。