デジタル人材の育成

未踏事業ご紹介冊子:コンテンツピックアップ(6)

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未踏事業をご紹介する冊子「MITOU: Ingenious Creators ITで切り拓く未来」から、[特集2]拡がる未踏エコシステムをピックアップしました。

さまざまな分野で活躍する修了生の姿を、インタビューと共に紹介します。

拡がる未踏エコシステム 様々な分野をリードする未踏修了生6 医療・ヘルスケア

医療・ヘルスケア

「人生100年時代」と言われてQOLを含む医療全般の質を高めることが求められる中、医療・ヘルスケアにおけるIT活用に大きな期待が寄せられています。この領域でも未踏事業が輩出した多くの人材が活躍しています。

瀬尾拡史氏(2019年度未踏アドバンスト事業)は、医学とCGという2つの世界をつなぐ医療CGクリエーターとして、医療3DCGのコンテンツおよびソフトウェアの研究・開発・制作に取り組んでいます。

製薬の分野では、藤秀義氏(2006年度)がアステラス製薬においてケモインフォマティクスのアプローチによるドラッグデザイン業務に従事し、創薬におけるAI活用にも取り組んでいます。

ろう者向けコミュニケーションの第一人者として知られるのは富士通の本多達也氏(2014年度)。ろう者と協働しながら人間の身体や感覚の拡張をテーマとする新しい音知覚装置「Ontenna(オンテナ)」の開発を行い、グッドデザイン賞2016年度特別賞、2019年度金賞、2019年度IAUD国際デザイン賞大賞など、数多くの賞を受賞しています。

また、奥村貴史氏(2004年度)は、WIDE(ワイド)プロジェクトMedica Crisi WorkinGroupチェアを務め、診断支援システムや保険医療行政の効率化など情報と医療と社会にまたがる幅広い活動を行っています。

そのほか、岡田直己氏(2020年度未踏アドバンスト事業)は、現役の救急医の立場で救急医療用のCT画像から異常を検出し分類する画像認識技術の開発に井上周祐氏(同年度)と共に取り組んでいます。

Interview 瀬尾 拡史氏

瀬尾 拡史氏の写真

Hirofumi Seo

瀬尾 拡史氏

株式会社サイアメント 代表取締役社長 
医師/東京大学医学部医学科卒

2019年度未踏アドバンスト事業採択。1985年生まれ。東京大学在学中にデジタルハリウッドに通い、ダブルスクールで3DCGの基礎を習得。現在は、「サイエンスを、正しく、楽しく。」を合言葉に、サイアメントにてサイエンスCGクリエーター、サイエンスCGプロデューサーとして活動。医師としての確かな知識と経験を活かし、他では真似できないような「正しさ」と「楽しさ」とを両立させたサイエンスコンテンツを制作。ポスター、立体視映像、iPad用アプリなど、様々なコンテンツ制作を統括。日本医師会、科学未来館、iPS細胞研究所、稲盛財団京都賞シンポジウムなど、講演歴多数。

エンターテインメント領域の最新3DCG技術を医用画像の世界で活用して革新を起こす

医療用3DCG

CTなどの医用画像を3DCG化する取り組みは昔から行われてきましたが、残念ながら映画やゲームなどのエンターテインメント領域で使われている3DCGと比べると、その技術レベルは20年くらい遅れているのが実情です。

たとえば手術前の医師は患者の臓器を可視化した3DCGを見ながら、どの部位をどのような手順で切除していくかといったシミュレーションを頭の中で行うのですが、手術で非常に重要視される立体感覚を得るために既存の医療用3DCGを十分に活用できていません。

ならば、エンターテインメント領域の3DCGで当たり前に使われている技術や手法を医療用3DCGに取り込んでいけばいいと発想し、未踏事業の支援を受けて開発した成果物をベースに、現在その事業化に取り組んでいます。

もっとも、医療の世界で求められる3DCGはエンターテインメント領域の3DCGとは異なり、単にリアルさを追求すればいいわけではありません。あたかも本物のように生々しく見える3DCGを提示すると、医師はその画像に患者の血管の1本1本まで細部にわたり正確に再現されていると錯覚してしまう恐れがあるからです。むしろ医師の想像力を働かせる余地を残しておくことが重要で、そのさじ加減こそが、私が一貫してこだわっているポイントです。

私たちが開発している3DCGのソフトウェアが様々な医療機関に広くあまねく普及すれば、医療サービスの向上はもちろん、患者に対するインフォームドコンセントにも大きく貢献できると考えています。