デジタル人材の育成

未踏事業ご紹介冊子:コンテンツピックアップ(7)

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未踏事業をご紹介する冊子「MITOU: Ingenious Creators ITで切り拓く未来」から、[特集2]拡がる未踏エコシステムをピックアップしました。

さまざまな分野で活躍する修了生の姿を、インタビューと共に紹介します。

拡がる未踏エコシステム 様々な分野をリードする未踏修了生7 経営者

経営者

意外に思われるかもしれませんが、未踏出身者の中にはベンチャー企業のCxOなどプロフェッショナルな経営幹部として活躍する人材が少なくありません。あらゆる業界でDXが進む今日、ITに関する高い技術力と見識を持つ未踏人材には、ビジネスとITの間を適切に橋渡ししながら変革を推進するリーダーとしての活躍の場がますます拡がっています。

フェアリーデバイセズのCOOを務める傍ら、製造業など様々な業界のDXを支援している久池井淳氏(2007年度)は、その代表例だと言えるでしょう。グーグルXの共同創設者であり、かつてアップルでヘルスケア部門の幹部などを務めたヨーキー・マツオカ(松岡陽子)氏(2001年度)は現在、パナソニック フェローおよびパナソニックβ CEOとしてパナソニックグループのデジタル化を指揮しています。

未踏事業でソーシャルレンディングプラットフォームの開発に取り組んだ曾川景介氏(2010年度)は、シリコンバレーでWebPayを立ち上げたのちウェブペイのCTOとして手腕を発揮。現在メルカリ執行役員CISOとメルペイ取締役CTOを兼任し、ITを活用した金融サービスの分野で活躍しています。

ウノウ(現Zynga(ジンガ))CTOとして「フォト蔵」の開発を指揮した後、YouTuberのマネジメントを行うUUUM(ウーム)で執行役員兼CTOを務めた尾藤正⼈氏(2003年度)は、アンターの技術顧問として医師向けQ&Aサービス「AntaaQA(アンターQA)」などの開発を支援しています。今後も多くの未踏人材がプロ経営者としてビジネス界をリードしていくことが期待されます。

Interview 久池井 淳氏

久池井 淳氏の写真

Jun Kuchii

久池井 淳氏

フェアリーデバイセズ株式会社 執行役員COO
フューチャリスト
株式会社マクニカ 顧問

2007年度未踏ユース採択。東京工業大学大学院にて技術経営修士(MOT)を修了後、アクセンチュアの戦略コンサルティング本部に入社し、日本支社で唯一のフューチャリストとしてDX戦略、R&D戦略、新規事業立ち上げの分野で活躍。CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の日本副統括や日本支社顧問などを経てフェアリーデバイセズに参画。トラディショナル産業のDXをライフワークとし、様々な企業のアドバイザーや政府委員を務める。

匠の技と高度な現場力をAIに転写し日本のソフトパワーを世界で輝かせる

首掛け式スマートデバイス「THINKLET」の写真
久池井氏が所属企業で携わる首掛け式 スマートデバイス

「日本の様々な産業における匠の技や高度な現場力のデジタル化」が、学生時代から変わらぬ私の活動テーマです。未踏でもこの課題に取り組みましたが、残念ながら期待した成果は挙げられませんでした。同期のクリエータたちの凄さに圧倒され、自分が井の中の蛙だと思い知りました。

一方で、PM(プロジェクトマネージャー)や他の採択者、OB・OGの皆さんは、私の着眼点や技術理解力、ビジネス感度を高く評価してくださいました。その結果、私は未踏というコミュニティで「シーズ(テクノロジー)とニーズ(ビジネス)のつなぎ役として勝負する」という自分なりの方向性を見つけることが出来ました。

現在はベンチャー企業のCOOとしてイノベーションにチャレンジする自社の事業を統括し、化学やインフラ、設備保守などトラディショナルで熟練の作業者が活躍する業界のDX推進をご支援する傍ら、大手半導体商社のマクニカなどで、これまで多くの企業の新規事業を立ち上げた経験を活かして、デジタルを活用したB2B新規事業の立ち上げを行っています。

日本のトラディショナルな産業の国際競争力の源泉の1つは、圧倒的な現場力の高さ、すなわちソフトパワーにあります。しかし、今後は少子高齢化が進み、競争力の源である人の数はどんどん減っていきます。この問題をAIで解決して競争力を向上させ、技能の鍛錬に切磋琢磨してきた方々が、豊かな暮らしを続けられる日本を作ること。それが私の生涯のミッションだと考えています。