デジタル人材の育成

キャリアインタビュー Vol.13【ビジネスアーキテクト】五十嵐 亜希子 氏

公開日:2026年6月1日

  • プロダクトの企画から運用まで伴走。 顧客の真の課題を見極め価値を創造する、インタビュイープロフィールを含めたページトップ画像。プロフィールの詳細はプロフィール欄をご確認ください。

大日本印刷株式会社(以下、DNP)で決済・IDソリューション領域に携わる五十嵐亜希子さんは、顧客管理や決済に関わるシステムの企画、立ち上げ、運用を担うプロダクトマネージャーです。印刷工場でのシステム開発の経験や知見を土台に、顧客の要望を受け取るだけでなく、その背景にある本当に実現したいことを見極める姿勢を培ってきた五十嵐さん。研修制度を活用しながら知識を広げ、現場経験を通じて価値の生み方を学んできた歩みからは、プロダクトマネージャーに求められる視点と成長のヒントが見えてきます。

社内の人材公募で学ぶ意欲をアピールし、現在の部署へ

Q 貴社の事業について教えてください。

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当社は1876年に、当時最先端だった活版印刷を手がける会社として創業しました。以来、DNP独自の印刷(Printing)と情報(Information)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーの連携により、時代の変化に対応しながら事業の幅を広げてきました。現在は「P&Iイノベーション」を事業ビジョンに掲げ、スマートコミュニケーション、ライフ&ヘルスケア、エレクトロニクスと、多岐にわたる領域でビジネスを展開しています。

私が所属する決済・IDソリューション本部は、決済や認証に関わるサービスプラットフォームを提供しており、その中で私はCRM(顧客情報管理)システムなどの企画や運営を主に担当しています。

Q 五十嵐さんがDNPを志望された動機は何だったのでしょうか。

学生時代に情報技術とデザインを掛け合わせた情報デザイン学を専攻していました。DNPならば学んだことを生かして社会に貢献できると考え、2004年に新卒で入社しました。

Q 入社後はどのような仕事からスタートしたのですか。

まず配属されたのがP&I技術研修センター(現・P&I研修コース)です。P&Iイノベーションを担う人材を育成する当社独自の研修プログラムで、毎年、新人の中から20名程度が配属されます。

ここで1年間、印刷技術とICTの基礎を学びました。次に配属された印刷工場では、DMや明細書などを印刷するプログラムの企画・開発に携わりました。クライアントの要望を整理して設計書に反映し、システム開発部門と連携しながらプログラムを実装していく仕事です。ここで初めてお客様との打ち合わせを経験し、顧客対応の基本や要望を聞いて的確に実現することの重要性、仕事をミスなく進めるための注意力、個人情報を取り扱うためのセキュリティ知識などを養うことができました。

Q 今の部署へはどのように異動されたのでしょうか。

印刷工場で経験を積む中で、お客様の要望に沿ったものをつくるだけでなく、自分たちでサービスを開発したい、またマーケティングにも携わってみたいという思いが強くなりました。そこで社内公募制度を利用して、今の部門への異動を希望しました。応募条件には当時の自分にないマーケティングスキルやウェブの知見が求められましたが、学ぶ意欲をアピールして2007年に異動が叶いました。

顧客との対話で得た知見がマネージャーとしての成長の糧に

Q 異動後はどのようなお仕事を?

当社のSaaSプロダクトとして外販するCRMシステムの開発に従事してきました。店舗を利用する顧客情報や、その方々が貯めるポイントなどを管理するシステムです。営業担当者とさまざまな企業を訪問して商品の説明をしたりお客様の状況をヒアリングしたりしながら、最適な機能や運用方法を提案する活動に取り組みました。

Q 新たな領域へのチャレンジということで、ご苦労はありませんでしたか。

マーケティングやデータ分析については社内研修で知識を得られたので、そこは助かりました。お客様の話を聞く中で知見を得られたことが、私にとってはとても大きかったですね。当社が提供するCRMシステムは柔軟性に富み、お客様の目的によって機能や使い方が違ってきます。中には、やりたいことはあるけれど、どう実現すればよいのかわからないという方もいらっしゃいます。そのためご要望やニーズを伺いながら、それに応じた提案を組み立てていき、場合によってはコールセンターのアウトソーシングや決済システムを組み合わせることもあります。そんなふうにお客様の視点で工夫を重ねることで、自分の視野も自然と広がっていきました。

Q そのころにプロダクトマネージャーになったということでしょうか。

明確な呼び名があったわけではありませんが、今振り返ればそういうことになりますね。当時は提案して受注した後、立ち上げから運用まで一貫して担当していました。もちろん1人ではなく、営業やシステム部門、さらに開発部門のメンバーと一緒に進めていましたが、売るところからつくるところ、運用するところまで同じ担当が関わる体制でした。現在は、販促、サービス企画、立ち上げ、運用などにおいて、各部門に求められる専門性の高まりを踏まえて役割を分担して進めていますが、それでも私たちのグループが企画から運用、フォローアップまで一貫してプロダクトマネジメントに携わるという基本の構図は変わっていません。

正解がない中で判断を下す。そこに難しさと責任がある

Q プロダクトマネジメントで特に気を付けていることは?

どんなプロダクトもそうですが、中でも決済関連のプラットフォームは正確さや可用性が問われますので、サービスのリリースは安全第一を心掛けています。また、プロダクトの方向性を決める難しさもありますね。すべての業界に対応できるものをつくろうとすればコストが膨大になるので、どの業界に、どういう強みで提供していくのかを決める必要があります。正解がない中で判断しなければならないところに難しさと責任があると感じます。

Q そこで判断軸となるものは何でしょうか。

さまざまな側面から判断しています。例えば、市場調査で業界ごとの課題を調べたり、販促活動で感じるニーズも参考にしたりします。パートナー企業と協力して情報収集を行い、自分たちだけでは得られない視点を取り入れることもあります。また、共通ポイントやキャッシュレスの普及など、社会動向からも今後重視される機能のヒントが得られます。

Q ご自身が一人前のプロダクトマネージャーになったと感じたのはいつごろですか。

1つのプロダクトをどう市場に提供し、どう価値を発揮していくか、その方向性を設計するようになってからでしょうか。今の部署に来て最初の数年はお客様の要望を聞いて販促することが中心でしたが、5年目くらいから収益拡大のためにサービスをどう変えていくべきかまで考えるようになりました。そこから10年目くらいの間にマネージャーとしての自覚が育っていったと感じています。

Q 印象に残っている成果について教えてください。

流通・小売業を展開するお客様がスマホアプリ関連のサービスを新しく立ち上げる際に当社のプロダクトをご利用くださったのですが、設定したKPIを上回る成果を出すことができました。私たちが提供した顧客管理やキャンペーンシステムで、利用者数やMAU(月間アクティブユーザー数)が当初の目標を超えて拡大したのです。これは自分にとって大きな手応えとなりました。

プロダクトの価値を生み出し、それを利益につなげていく

Q 今、特に注力していることは?

現在はプロダクトマネージャーとして複数のサービスを担当しており、価値を生み出すこと、そしてそれを利益につなげることの2つを重視しています。また、長く続いているプロダクトもありますので、社会の変化に応じてどう変えていくか、その方向性も日々模索しています。AI活用についても、まだ試行段階ではありますが、開発・運用の効率化や新たなサービスへの活用可能性を検討しているところです。

Q 貴社ではシステム開発も手掛けておられますが、SIerにない強みはどこにあるとお考えですか。

当社の強みは、プロダクトを開発するだけでなく、そのプロダクトを通じてお客様のビジネス価値向上策を提案できることです。サービス設計のコンサルティングから、導入後の運用におけるマーケティングオートメーションやBIツールの活用提案まで、幅広く支援できます。システムを入れて終わりではなく、その活用方法まで含めて提案する。そのつなぎ役を果たすのがまさに私たちのグループで、専門部隊のメンバーとも協力しながらプロジェクトに取り組んでいます。

Q 価値を創造するうえで、大切にしていることは何ですか。

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さきほどお客様のニーズを聞くことの大切さをについてお話ししましたが、ご希望通りに提案しても、なかなか受注につながらないことが過去にはありました。よくよく伺ってみると、本当にやりたいことは別のところにあったのですね。そうした経験を通じて、お客様が本当に求めていることを理解しないとビジネスが遠回りになってしまうと実感しました。そのため、お客様から「これがほしい」と言われたときも、その背景を必ず聞くようにしています。なぜそれが必要なのか、本当に実現したいことは何なのかを深掘りしていくと、実は別の方法のほうが負荷も小さく、よりよい結果につながることがあります。お客様のご要望を受け取るだけでなく。お客様が本当にほしい結果を見極め、そこにたどり着くための提案を探る——これが価値の創造につながるのではないかと考えています。

大切なのは、何を実現したいかというビジョン

Q 仕事を進めるうえで、どのような知識が必要になりますか。

ITやデジタルの知識は大前提です。特に近年はクラウド環境でのサービス構築が主流ですので、クラウドに関する基本的な理解は欠かせません。また近年はセキュリティ対応がより厳しくなっていますので、その知見も必須でしょう。これらに加えて、CRMシステムに携わるのであればマーケティングや個人情報保護の知識も問われます。

Q DSSはどのように活用されていますか。

会社としてはDSSに準拠して、全社員を対象にDXリテラシーを持つ「DX基礎人材」と各部門のDX推進の中核となる「DX推進人材」を定義し、可視化や育成を行っています。全社共通の研修に加えて、各部門でもスキルマップ表を用意し、必要なスキルを習得する仕組みをつくっています。ただ、スキルや知識を増やすだけではなく、大切なのはそれを現場でどう生かすか。ビジネスアーキテクトやプロダクトマネージャーとして成長するには、やはりお客様の声を聞き、経験を積むことが欠かせないと思います。

Q 今後の目標を教えてください。

DNPには多様な技術アセットと人材、そして社外パートナーとのネットワークがありますので、これまで得てきた知見を生かしながら、プロダクトやサービスをゼロから構想し、市場に提供していく活動に挑戦したいと考えています。DNPのブランドステートメントでもある「未来のあたりまえをつくる。」サービスを実現したいですね。

Q ビジネスアーキテクトやプロダクトマネージャーを目指す方へメッセージをお願いします。

DXスキルを身につけることは大事ですが、それはあくまで手段の1つ。大切なのは、そのスキルをどう使って何を実現したいのかというビジョンを持つことです。やりたいことや目標が明確になれば、必要なスキルも見えてきますし、スキルアップのモチベーションにもつながると思います。

いがらし あきこ

五十嵐 亜希子

プロフィール

大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部
PFサービスセンター
決済・IDソリューション本部
第2部 第1グループ
リーダー

経歴

1981年生まれ。2004年、宮城工業高等専門学校(現・仙台高等専門学校名取キャンパス)専攻科 建築・情報デザイン学専攻 修了。同年、大日本印刷へ入社。印刷工場でのシステム開発などを経て、2007年よりプロダクトマネジメントに従事。

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取材時情報

  1. 掲載内容は2026年3月取材時のものです。