デジタル人材の育成

キャリアインタビュー Vol.9【データサイエンティスト】末田 剛 氏

公開日:2026年3月25日

  • インタビュイープロフィールを含めたページトップ画像「異分野から転身し、ゼロからスタート。サイバーセキュリティと顧客をつなぐ架け橋へ」

荷主企業の物流事業を包括的に担う3PL(サードパーティーロジスティクス)領域で、国内トップのシェアを誇るロジスティード株式会社。DX推進企業として従来型の物流事業にとどまらず、SCM(サプライチェーンマネジメント)領域までサービスを拡張する方針を掲げています。同社のサプライチェーン最適化サービス「SCDOS」に携わるコンサルタントの末田剛氏は、国内外の物流センターの設計・立ち上げや営業経験を重ねた後、社内研修をきっかけにデータサイエンスの面白さに目覚めたといいます。「現場理解×(かける)営業理解×(かける)データ」の掛け合わせで経営判断レベルの意思決定を支援し、顧客の物流最適化を導くという仕事の内容や、これまでの道のりについて伺いました。

データサイエンティスト育成研修が転機に

Q 貴社の事業について教えてください。

当社は国内外で物流事業を幅広く手がけており、事業所は国内463拠点、海外540拠点に上ります(2025年3月末現在)。国内のお客様企業から物流事業を包括的にアウトソーシングで受託する3PL事業では国内トップのシェアを誇っています。

Q 末田さんがこちらの会社に入社を決めた理由は。

前々から海外で活躍したいと思っていて、大学時代は英語を専攻しました。大学在学中は中国に留学して現地就労も経験しています。当社ならグローバルに仕事ができそうだと考えたのが志望の動機です。

Q 入社後はどのような経験を積まれたのですか。

倉庫内の設備や配置を設計・改善するロジスティクスエンジニアを2年担当した後、オーストラリアの拠点で1年間、現地倉庫の立ち上げなどを手がけました。帰国してから6年半にわたりアパレル、化粧品、自動車部品といった領域の営業活動に従事し、その後データサイエンティストに転身しました。

Q データサイエンスに興味を持ったきっかけは。

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2021年にデータサイエンティスト育成の社内研修を受けたことがきっかけです。もともとPC作業は好きでExcelでもデータを扱っていましたが、この半年間の研修で触れた統計やAI、画像分析技術はまったく未知の領域でした。データの読み解きレベルが深まり、それに応じて適切なグラフもあると分かって、営業時代はいかに場当たり的にグラフを使っていたかと痛感。視野が大きく広がり、データサイエンスを極めたいと考えたことが転身を後押ししました。

Q データサイエンティスト育成に注力するということは、組織としてもDXに本腰を入れていたということでしょうか。

はい。当社は2018年にブランドスローガン「未知に挑む。」を掲げ、物流実務にとどまらず荷主企業のSCM(サプライチェーンマネジメント)領域までサービスを拡張する方針を示しました。2021年にはDX認定も受けています。荷主の経営・業務課題に寄与する場面がさらに増えていく局面で、自分としてもこれまで積み上げてきたキャリアとデータを掛け合わせればより力を発揮できるのではないかと考え、研修を終えた2022年4月に現在の部署へ異動を願い出たのです。

実務で走りながら学ぶことで相乗効果が得られる

Q 異動後、どのように学びを深めたのでしょうか。

業務を始めるにあたって、求められる知識の幅と深さが壁になりました。そこで外部の研修も受けて知識やスキルを習得しました。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)が提供しているMITx MicroMasters® Program in Supply Chain Managementです。これはオンライン受講ですが研修期間は1年半あり、毎週15時間程度を学習に充てました。また、日本ロジスティクスシステム協会のストラテジックSCMコースを半年受講したほか、統計検定2級も取得。一連の学習でSCM全般や統計、最適化といった知識を体系化するとともに、最適化・GIS・BIといった複数の専門ツールを使いこなす力を身につけることができました。

Q 学びと実務の両立は大変ではありませんでしたか。

時間的、体力的な負担はありましたが、新しいことを学ぶのは楽しくて苦ではなかったです。朝は4~5時に起きて7時までを学習に充てるなど、ルーティン化したことも奏功しました。両立は大変と思われがちですが、実務で走りながら学んだほうが効果があると思います。獲得した知識を実務で使い、実務で出た疑問を再び学びで補強することで相乗効果が得られます。業務での価値創出に直結していることを実感できたことも学習のモチベーションになりました。

Q 「実践の場」があることが学びを深めるわけですね。

その通りです。異動してきた最初のうちは難易度の低い仕事、例えばある倉庫の物量データをもとに重心点(輸送コストが最小となる理論上の拠点位置)を計算で求めるといった作業からスタートして、徐々に最適化など複雑なテーマに取り組むようになりました。先輩や同僚とチームを組んでいたのでサポートも得られましたし、ベテランのもとで下積みをさせてもらえたことも一人前のデータサイエンティストになるためのよい助走となりました。

SCM最適化へ、経営判断レベルの意思決定をデータで支援

Q 現在の業務について教えてください。

コンサルタントとして、「SCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services:エスシードス)」というサプライチェーン最適化サービスを担当しています。お客様の物流課題を可視化し、課題解決までサポートするというサービスで、物流拠点ネットワークや配送ルートを最適化するなど経営判断レベルの意思決定をデータで支援するのが私の役割です。

Q 支援の流れはどのように?

まずはお客様の物流の実績データをもとに現状を可視化し、課題を抽出します。どの納品先に、どんな製品をいくつ届ける必要があるかという配送データばかりでなく、その上流の入荷工場や通過拠点なども含め、サプライチェーンにおけるモノの流れをすべて把握する必要があります。それに加えてコストデータなども分析したうえで、最適なネットワークのシミュレーションをしていくのです。

Q 荷主企業からはどのような相談が寄せられるのでしょうか。

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私が担当したお客様はアパレルやメーカー、製造業、自動車関係、電力会社などさまざまですが、「現状の拠点や倉庫の場所が正しいのか分からない」「数十年このネットワークで続けてきたけれど合っているのか」といったご相談は、どの業界でも多く聞かれます。「新しくEC事業を始めるが既存ネットワークで立ち行くか不安」といったお悩みもありますし、「工場新設にあたりネットワークを変える必要があるだろうか」といった問い合わせもいただきます。最適なネットワークを見つけるお手伝いをする中で、拠点を別の場所に変えたほうがよい場合はそうした提案も行います。

また、お客様が認識している課題と根本的な原因に齟齬があることも少なくありません。例えば、最適化の前に倉庫を集約したほうがよい場合もあれば、そもそもデータが正しい粒度で取れていないためシステム整備が必要なケースもあります。ここで課題を的確に洗い出さないと正しい打ち手が取れないので、データを丁寧にチェックし現状を正確に把握することを何より大切にしています。

データ分析の本質はビジネスの痛点を解像度高く理解すること

Q 的を射た提案のためには正しい分析が必要で、それにはデータを適切に扱える専門性が問われるということですね。末田さんのこれまでの経験は今の仕事にどう生きているのでしょうか。

すべてが無駄なくフル活用されています。最初の倉庫の設計業務で設備配置、作業動線、現場オペレーションの複雑性や暗黙知などを深く理解でき、営業時代には物流コストやリードタイム、需要変動、欠品リスクなど、顧客が重視するポイントを構造的に把握できました。データ分析の本質はビジネスの痛点を解像度高く理解すること。これまでの経験が、データ分析・最適化を机上の空論でなく、実務に落とし込む武器になっていることは間違いありません。

Q DSSは学びや業務推進で、どのように役立っていますか。

社内ではデジタルスキル標準(以下、DSS)をベースにDX人材を8職種に分けています。我々はデータサイエンティストでもありますが、同時にビジネスアーキテクトやデザイナーの役割も兼ねていると感じます。また業務を遂行するうえで、サイバーセキュリティ担当者やソフトウェアエンジニアなどとも連携していますが、DSSがあることで役割ごとのスキル把握やチーム編成をスムーズに進めることができています。

営業が分かるデータサイエンティストとして橋渡し役を担う

Q データサイエンティストになったと実感した瞬間はどんなときですか。

1つは他部署やお客様から“専門家”として頼られたときです。みなさん日々忙しく、勉強に時間を割くことが難しいのが実情です。そこで私が学んだことをもとに、例えば安全在庫の算出ロジックなどを噛み砕いて説明することで、「なるほど、よく分かった!」と言ってもらえると無性に嬉しくなりますね。

もう1つ、「営業の気持ちが分かるデータサイエンティスト」と呼ばれたときも、転身してよかったと喜びを噛みしめました。部署がそれぞれ独自に取り組むと個別最適に陥るため、橋渡し役が必要になります。営業の経験のある私は営業担当者が何を考えているかを汲み取れますし、またデータサイエンティストとしても数字に固執しすぎるとお客様のニーズを無視した誤った解釈をしかねません。自分のこれまでの経験を総動員しながら興味あることを探求できて、その結果多くの人たちの役に立てている。上司からも「末田はこの部署に来て開花した」といわれますが、今、仕事が本当に楽しいです。

Q 荷主企業からはどのような声がありますか。

ネットワークの設計段階で物流コストの約8割が決まると言われています。その最適化を説得力と納得感をもって実施してくれたと感謝の言葉をいただきます。それが本当に嬉しいですね。お客様にそのように満足していただけるのは、物流事業者ならではのナレッジがあればこそ。立案して終わりでなく、描いたビジョンを責任を持って最後まで完遂できることが我々の強みだと思っています。

Q 他にデータサイエンティストとして手応えをつかんだ場面があれば教えてください。

世界的なSCMトレーニングイベント「Global Professional Challenge 2024」(オランダInchainge社主催)に同僚3人とチームを組んで出場したところ、日本企業として初優勝を収めることができました。蓄えたスキルが実を結んだと実感できましたし、お客様から「世界チャンピオンに仕事を依頼したい」とお声がけされる機会も増えました。もちろん私一人ではなくチーム全体の成果であり、こうした実績は仕事のやる気や組織のブランディングにもつながっていると感じます。

顧客と“戦略を一緒につくる”立ち位置で価値創出を図る

Q EC市場の拡大で輸送品数が増える一方、ドライバー不足や労働時間規制、さらに燃料費をはじめとする輸送コストの増大など、いわゆる物流クライシスが叫ばれています。荷主企業にとって物流最適化は切実な課題ではないでしょうか。

おっしゃる通りです。2026年4月には改正物流効率化法が全面施行となり、特定荷主においてサプライチェーン全体を見渡した戦略的な意思決定をする物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任が義務化されます。非常に高度な専門性が問われる立場で、我々のような外部の物流コンサルタントの支援ニーズが高まっています。分析結果を提示するだけではなく、 “戦略を一緒につくる”立ち位置でAIも活用しながらサービスをさらに進化させ、価値創出を図っていきたいですね。今後も海外を含めて視野を広く持ち、新しいこと、未知のテーマに積極的に取り組んでいきます。

Q 最後に、データサイエンティストを目指す方へメッセージをお願いします。

データサイエンスは「数学が得意な人だけの左脳的な世界」ではありません。むしろ異なる領域の業務経験で得た視点や事業の理解はデータ分析の質を高めます。その意味で、お客様との対話を通じて課題を明確にしたり、データから課題解決につながる適切な示唆を得たりするような「右脳的要素」が欠かせません。

特に今後はAIを筆頭に新しい情報や先端技術へのキャッチアップ力も問われます。閉じこもった世界で思考が狭まらないよう、できるだけ視野を広げていくことが重要と思います。完璧な状態になってから始める必要はありません。最初の一歩を踏み出し、実務に当てはめながら学んでいくことが一番の成長ルートです。過去の経験は必ず武器になります。ぜひ一緒に、データで未来をつくっていきましょう。

すえだ ごう

末田 剛

プロフィール

ロジスティード株式会社
ロジスティクスソリューション統括本部
DXソリューション開発本部
サプライチェーンイノベーション部
部長補佐

経歴

1986年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業。2012年ロジスティード入社。倉庫の設計や運営を担う技術職、メーカーなどを対象とする営業職を経て、サプライチェーン設計のコンサルタントとなり、お客様の物流効率化の支援に取り組んでいる。

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取材時情報

  1. 掲載内容は2026年2月取材時のものです。