社会・産業のデジタル変革
世界のOSS動向レポート:行政によるオープンソースソフトウェア公開活動の国際比較調査報告書
第3章で収集したデータをもとに、本章では各国政府におけるオープンソースソフトウェア(OSS)活動についての特徴の把握を目的とする。GitHub上の公開リポジトリやコントリビューションの統計、ならびに各国のOSS関連政策を外部データから収集し、両者の関係性を観察した結果を示す。
なお、収集されたデータの限定性や組織へのインタビューなどの質的調査の欠如によって、本分析結果と実際の活動には誤差が生じていることが予想される。しかし、今後のリサーチや政策立案の議論に繋げるうえで仮説として提示するには十分な情報量が収集されていることから、本章では暫定的に収集されたデータの分析結果を提示する。
本章では、「活動数」「時間軸」「技術分野」の3つの視点に基づいた分析の結果を述べる。分析1では、収集されたデータの国別の集計結果をもとに各国公共機関におけるOSS公開活動の規模(活性度)や成熟度、その他データが示す各国の特徴等を整理する。続いて、分析2では、OSS公開数の時系列的変化に着目し、時間軸に沿って整理されたOSS公開数からその変化の過程を明らかにする。さらに、変化のタイミング前後で立案された政策や政府の動向を示し、OSS公開活動に変化を与える要因となった事象を仮説として提示する。政策とOSS公開活動の関係は同時期的傾向の観察結果として示し、因果の断定は行わない。分析3では、収集されたデータを技術分野別で分類し、傾向を把握することを試みる。なお、本分析はあくまでも探索的・記述的であり、統計的検証を伴わないものとする。
本章の分析は、2025年9~10月時点で取得したGitHub活動データに基づく。表4-1と表4-2に、各国のOSS活動に関する主要指標(リポジトリ数、スター数、フォーク数、ブランチ数、イシュー数、プルリクエスト数、コントリビューター数、オーガニゼーション数)を示す。このデータは、各国のOSS活動の活性度、開発者コミュニティの成熟度、組織構造を比較するための基盤となる。
| 国
|
リポジトリ数
|
スター数
|
フォーク数
|
ブランチ数
|
|---|---|---|---|---|
| 日本
|
626
|
6214
|
1658
|
1863
|
| エストニア
|
196
|
1333
|
819
|
937
|
| シンガポール
|
483
|
2869
|
1113
|
5835
|
| ドイツ
|
276
|
12911
|
2657
|
1752
|
| フランス
|
2359
|
23622
|
8723
|
28100
|
| 英国
|
16058
|
74112
|
34051
|
214172
|
| 米国
|
10300
|
206907
|
86611
|
93257
|
| 国
|
イシュー数
|
プルリクエスト数
|
コントリビューター数
|
オーガニゼーション数
|
|---|---|---|---|---|
| 日本
|
1204
|
3801
|
4359
|
22
|
| エストニア
|
1058
|
6050
|
1464
|
6
|
| シンガポール
|
5137
|
34608
|
6008
|
5
|
| ドイツ
|
6239
|
39411
|
3141
|
8
|
| フランス
|
64501
|
238886
|
22875
|
25
|
| 英国
|
86241
|
1903128
|
160810
|
30
|
| 米国
|
239529
|
542434
|
73764
|
71
|
OSS活動の活性度と改善サイクルの成熟度は国ごとに大きく異なる。
英国は16,058件のリポジトリと約190万件のプルリクエストを記録し、活性度と改善活動の成熟度の両面で突出している。
米国も10,300件のリポジトリと50万件超のプルリクエストを持ち、成熟度が高い。
フランスは2,359件のリポジトリで約24万件のプルリクエストを記録し、中規模ながら活発な改善が行われている。
ドイツは276件のリポジトリで約39,000件のプルリクエストを持ち、セキュリティやデジタル主権関連での集中的な活動が特徴である。
シンガポールは483件のリポジトリで約34,000件のプルリクエストを記録し、スマートシティ関連で活発である。
日本は626件のリポジトリで約3,800件のプルリクエスト、エストニアは196件で約6,000件と、規模は小さいが特定分野で集中的な改善が見られる。
これらの差異は政策導入時期や行政構造の違いに起因する可能性がある。
図4-1、図4-2は、各国政府のOSS活動における横軸:リポジトリ数(活性度)と縦軸:プルリクエスト数(開発者コミュニティの成熟度)の関係を示している。
(図4-2は、図4-1の左下領域の拡大図)
全体を見ると、英国と米国が突出しており、英国は約16,000件のリポジトリに対して190万件を超えるプルリクエストを記録し、活動規模(活性度)と開発者コミュニティの成熟度が非常に高いことが分かる。米国も約10,000件のリポジトリで50万件以上のプルリクエストを持ち、規模と改善サイクルの両面で強い活動を示している。
フランスは約2,300件のリポジトリで20万件超のプルリクエストを持ち、中規模ながら活発な改善が行われている。
一方、日本、エストニア、シンガポール、ドイツはリポジトリ数が数百件規模であり、プルリクエスト数も数万件以下であるが、特定分野に集中した活動が特徴である。特にドイツとシンガポールはリポジトリ数に対してプルリクエストが多く、少数精鋭型の改善サイクルを示している。
この比較から、OSS活動の「活性度」と「成熟度」は国ごとに異なるアプローチを反映しており、政策や組織構造の違いが影響していることが考えられる。
次に、リポジトリ数やプルリクエスト数に加え、スター数やフォーク数、ブランチ数、イシュー数、コントリビューター数など複数の指標を総合的に比較し、各国のOSS活動の構造的特徴を分析する。
図4-3,図4-4は、主要指標を比較したレーダーチャートである。レーダーチャート作成にあたり、各指標の最大値を基準として正規化を行っている。各指標の絶対値は桁が大きく異なるため、そのままでは比較が困難である。さらに、各指標において理論的な最大値は不明であるため、絶対値で比較するよりも、観測されたデータの範囲で正規化する方が合理的である。そこで、各項目の最大値を1.0とし、他の国をその比率で表すことで、相対的な関係を示すことを可能にした。この方法により、項目間のスケール差を排除し、全指標を比較できる。正規化の例を挙げると、日本のリポジトリに関する正規化した値は、日本のリポジトリ数(626)を英国のリポジトリ数(16,058)で割った値(626/16,058)になる。
各国の政府系組織によるOSS活動を、リポジトリ数、スター数、フォーク数、ブランチ数、イシュー数、プルリクエスト数、コントリビューター数などの指標で比較した結果、活動の規模(活性度)や改善サイクルの成熟度には顕著な差異が見られた。
英国と米国は全指標で突出しており、OSS活動の規模(活性度)と成熟度の両面で世界をリードしている。英国は16,058件のリポジトリと約190万件のプルリクエストを記録し、オーガニゼーション数が30と比較的少ないにもかかわらず、集中管理型の大規模公開戦略を採用している可能性がある。一方、米国は10,300件のリポジトリに加え、スター数やフォーク数が圧倒的であり、国際的な利用や注目度が高いOSSを多数保有していることが示唆される。
フランスは中規模ながら改善活動が非常に活発である。2,359件のリポジトリに対して約24万件のプルリクエストと64,501件のイシューを記録しており、ユーザー参加型の改善文化が強く、協働開発の成熟度が高いことが分かる。
ドイツはリポジトリ数が少ない一方で、プルリクエスト数が多い。これは、少数の重要プロジェクトに集中投入する構造を示しており、セキュリティやデジタル主権関連の重点開発という政策的背景と整合する。
シンガポールはブランチ数が突出しており、並行開発や実験的機能追加が活発である。スマートシティ関連の多様な試行が行われていることが推測される。
日本とエストニアは規模が小さいが、特徴的な改善パターンを示す。日本はコントリビューター数が比較的多いにもかかわらず、プルリクエスト数が少なく、コードレビューや統合プロセスが厳格である可能性がある。エストニアはリポジトリ数が196件と小規模ながら、約6,000件のプルリクエスト数を記録しており、改善サイクルの効率性が高いことが特徴的である。さらに、イシュー数(1,058件)に対してプルリクエスト数が大きく上回っており、報告された課題が迅速に解決される傾向を示唆している。このことから、エストニアは少数のプロジェクトに対して集中的な改善活動を行い、高い改善率と迅速な対応を重視する開発文化を持つと考えられる。
レーダーチャートの形状から、各国の戦略的特徴も明確である。英国と米国は全方位型で、規模・人気・改善・人員すべてに強みを持つ。一方、フランスはイシューやプルリクエストに偏重し、開発者コミュニティ駆動型の改善文化を形成している。ドイツやシンガポールは特定指標に尖りがあり、専門分野集中型の活動を展開している。日本とエストニアは小規模・効率型で、政策導入の時期や行政構造の違いが影響していると考えられる。
各国のOSS活動の経年変化を把握するために、OSSリポジトリの初回コミット日時(公開日時)を集計し、年ごとのOSS公開数を定量的に算出した。初回コミット日時を用いることで、各国政府によるOSS活動の開始時期や公開数の推移を客観的に分析できるようにした。
政策導入時期とOSS公開数増加は複数国で同時期的に増勢が重なる傾向が観察された。ただし、交絡因子が多く、因果の妥当性は本版の範囲外である。
特に英国、米国、フランス、ドイツでは、政策施行直後からOSS公開数が急増しており、政策が活動活性化に強く寄与した可能性が考えられる。一方、米国やシンガポールのように政策以前から活動が活発化しているケースもあり、政策は既存の流れを加速・制度化する役割を果たしている可能性も考えられる。
これらの傾向から、政府OSS活動において政策の制度化・施行は、活動量の拡大や質的向上に大きなインパクトを持つ可能性が示唆される。
日本の(GitHub)オーガニゼーション数は22、リポジトリ数は626で、OSS公開数は、2013年から2015年にかけて急増している。この増加は、2012年の電子行政オープンデータ戦略および2013年のオープンデータ基本指針の策定により、政府がオープン化を推進したことに起因すると考えられる。2018年以降は、政府CIOポータルによるデジタル・ガバメント推進標準ガイドラインの公表により、OSS活用が制度的に後押しされ、公開数は着実に増加した。特に2021年のデジタル庁設立は大きな転換点であり、重点計画において「オープン・バイ・デフォルト」や「クラウド・バイ・デフォルト」が明記されたことがOSS公開を加速させた。2022年以降は公開数が順調に増加している。これらの動向は、政策による制度的支援が影響を与えている可能性を示している。
行政情報の公開と再利用を促進。OSS活用の基盤となるオープン化の流れを形成。
政府調達におけるOSSの選択肢拡大。標準ガイドライン群で技術選定の透明性を確保。
OSS活用推進の基盤整備。政府システムの標準化とオープン化を推進。
エストニアの(GitHub)オーガニゼーション数は6、リポジトリ数は196で、OSS公開数は、2013年以降急増している。この増加は、2013年に策定された「Digital Agenda 2020」により、政府サービスのデジタル化とオープン化が強化されたことに起因すると考えられる。特に2014年から2017年にかけて公開数が高水準を維持しているが、これはX-RoadのOSS化(2014年GitHub公開)と国際的な再利用促進が影響している。2018年以降はやや減少傾向にあるが、依然として一定の水準を維持しており、これはe-Residencyやクロスボーダーサービスの拡充に伴うOSS活用が続いているためである。これらの動向は、エストニアのデジタル政策がOSS公開を強く後押しし、特に国際連携や公共基盤のオープン化がOSSエコシステムの成長に寄与している可能性を示唆している。
OSSを含むデジタル公共サービスの推進。
X-Road(政府間データ交換基盤)をOSSとして公開。(OSS戦略の基盤)
シンガポールの(GitHub)オーガニゼーション数は5、リポジトリ数は483で、OSS公開数は、2015年以降急増し、2017年から2018年にかけてピークに達している。この急増は、2014年に開始されたSmart Nation政策および2016年以降のGovTechによるオープンソース推進方針に起因すると考えられる。特に2017年には、政府がGitHub上でコード公開を本格化し、開発者コミュニティとの連携を強化したことが影響している。2018年以降は高水準を維持しつつも緩やかな減少傾向を示しているが、これは初期の大規模公開が一段落したことによるものである。2020年にはSingapore Government Developer Portalが開設され、OSSの再利用と透明性向上が制度的に支えられた。2021年以降は公開数が安定し、依然として高い水準を維持している。これらの動向は、シンガポールのデジタル政策がOSS公開を戦略的に位置づけ、国家のデジタル基盤強化に寄与している可能性を示唆している。
国家デジタル化戦略の中核としてオープン技術を推進。
政府コードのGitHub公開を開始し、開発者コミュニティとの連携を強化。
OSSライブラリの公開と再利用促進。
ドイツの(GitHub)オーガニゼーション数は8、リポジトリ数は276で、OSS公開数は、2015年以降緩やかに増加し、2020年から急激な成長を示している。この急増は、2019年に連邦政府がデジタル化戦略においてOSSの役割を明確化したこと、および2021年に発表された「Sovereign Tech Fund」構想に起因すると考えられる。特に2021年から2023年にかけて公開数が過去最高水準に達しているが、これは政府がOSSを国家のデジタル主権確保のための重要要素として位置づけ、資金支援やセキュリティ強化策を導入したことが影響している。2022年には「Digital Strategy Germany」が策定され、OSSの利用促進と開発支援が明記されたことも公開数増加の要因である。2024年にはやや減少傾向を示しているが、依然として高水準を維持しており、政策による制度的支援がOSS活動の成長に影響を与えている可能性を示唆している。
政府システムにおけるOSS利用の方針を明確化。
OSS基盤技術のセキュリティ・保守支援に特化した資金提供を開始。
OSSの利用促進と開発支援を国家戦略に組み込み。
フランスの(GitHub)オーガニゼーション数は25、リポジトリ数は2,359で、OSS公開数は、2012年以降急増し、2015年から2018年にかけて大幅な成長を示している。この増加は、2012年に発表された「Circulaire Ayrault」により、政府機関におけるOSS優先使用方針が導入されたことに起因すると考えられる。2016年にはEtalabがOSS再利用を促進する取り組みを強化し、政府コード公開の基盤を整備したことが影響している。2018年以降は公開数が高水準で安定し、2021年から2022年にかけてピークに達しているが、これはCode.gouv.frの開設により、政府ソースコードの公開が制度化されたことが要因である。2023年以降はやや減少傾向を示しているが、依然として高水準を維持しており、フランスの政策がOSSエコシステムの成長に長期的な影響を与えている可能性を示唆している。
政府機関におけるOSS優先使用方針を導入。
公共コードの共有と再利用を推進。
政府ソースコードの公開と透明性向上を制度化。
英国の(GitHub)オーガニゼーション数は30、リポジトリ数は16,058で、OSS公開数は、2010年代前半まで緩やかな増加を示していたが、2013年以降急速に成長し、2017年から2018年にかけてピークに達している。この急増は、2012年にGovernment Digital Service(GDS)が設立され、デジタルサービス標準とオープンソース活用方針を導入したことに起因すると考えられる。さらに、同年に策定された「Open Standards Principles」により、政府システムにおけるオープン技術の採用が制度化されたことが影響している。2016年以降はGOV.UKプラットフォームの拡張とGitHubでのコード公開が進み、OSS公開数は高水準を維持した。2020年以降はやや減少傾向を示しているが、依然として高い水準を保っており、英国の政策がOSSエコシステムの成長に長期的な影響を与えている可能性を示唆している。
政府デジタルサービスの標準化とOSS活用方針を導入。
政府ITにおけるオープン標準とOSS互換性を重視。
OSSベースのサービス構築とGitHubでのコード公開を推進。
米国の(GitHub)オーガニゼーション数は71、リポジトリ数は10,300で、OSS公開数は、2016年以降急増している。この増加は、2016年に発表された「Federal Source Code Policy」により、政府が開発したコードの20%以上をOSSとして公開する方針が導入されたことに起因すると考えられる。2017年にはCode.govが開設され、政府コードの集約と再利用が制度化されたことがOSS公開の加速要因である。2020年以降は公開数が高水準を維持し、2022年にはOMB M-22-18によりOSSのセキュリティ管理強化が明記され、信頼性向上と継続的な公開が促進された。これらの政策は、透明性とイノベーション促進を目的とし、OSSエコシステムの成長に長期的な影響を与えている可能性を示唆している。
政府コードの20%以上をOSSとして公開する方針を導入。
政府OSSの集約と再利用を促進。
OSSのセキュリティ管理強化を義務化。
OMB:Office of Management and Budget(米国行政管理予算局)
各国政府が公開しているOSSリポジトリを技術分野ごとに整理し、活動の傾向を俯瞰することを試みる。目的は、政府系OSSの公開状況を分野別に把握し、どの領域で開発が活発に行われているか、また注目すべき技術分野を明らかにすることである。この分析結果はあくまで実験的かつ探索的な整理であるが、今後行政OSSの重点領域をより詳細に理解するための出発点となる。
分析にあたっては、OSSリポジトリを以下の6分野に分類した。
分類は、リポジトリ名やプロジェクト名に含まれるキーワードをもとに自動的に行い、以下の6分野を設定した。詳細な分類方法およびキーワード一覧はAppendixに記載する。
なお、この分類はリポジトリ名に基づく推定であり、技術的には誤差を含む可能性が高く、専門的な検証を伴うものではない。OSSには固有名詞や造語を用いたリポジトリが多く、技術分野を示すキーワードが含まれないケースも多いため、「その他」に分類されるリポジトリが非常に多い結果となった。「その他」には、開発ツールなど汎用的な機能を持つOSSや、未分類のリポジトリが含まれる。
本試みは、厳密な技術分類ではなく、分野別の傾向を把握するための探索的な整理である。今後、より精緻な分類や専門家レビューを加えることで、行政OSSの重点分野をより正確に把握できると考える。
|
Category
|
Repository
|
|---|---|
|
行政サービス
|
2340
|
|
データ基盤・API
|
1935
|
|
地図・都市情報
|
443
|
|
教育・医療・福祉
|
278
|
|
スマートシティ
|
54
|
|
セキュリティ
|
38
|
|
その他(開発ツール)
|
10934
|
|
その他(未分類)
|
13950
|
(1) 行政サービス(2,340件)
国民向けサービスや電子申請、ダッシュボードなど、行政手続きのデジタル化を支えるOSSが多く公開されている。フロントエンドUI、設計ガイドライン、申請フォーム生成ツール、行政ダッシュボードなどが含まれ、行政サービスの利便性向上や業務効率化に直結するため、件数・重要性ともに突出している。
(2) データ基盤・API(1,935件)
政府のデジタル化やデータ連携戦略の中核を担う分野であり、API基盤やデータ連携、標準化に関するOSSが中心である。APIゲートウェイ、データ連携基盤、APIドキュメント生成ツールなどが代表的で、行政サービスや他分野の基盤として機能する。これらのOSSは、行政機関間のデータ共有や国民向けサービスの統合を支える重要な技術である。
(3) 地図・都市情報(443件)
地理空間情報や都市計画関連のOSSを含む分野であり、3D都市モデルや地図API、可視化ツールなどが中心である。GISデータ変換ツールや都市構造シミュレーションなどが挙げられ、スマートシティや都市計画の高度化に向けて活用されている。
(4) 教育・医療・福祉(278件)
個人情報や機微情報を扱うためOSS化が難しい領域であるが、限定的な公開が行われている。学校選択支援ツールや医療データ検証APIなどが代表例であり、教育支援や医療サービスのデジタル化に貢献している。
(5) スマートシティ(54件)
都市インフラや交通制御、スマートサービスに関するOSSが含まれる。件数は限定的だが、都市交通管理システムやスマートインフラ連携ツールなどが代表的であり、都市の持続可能性や効率性向上に寄与する技術として重要性が増している。
(6) セキュリティ(38件)
件数は少ないが、電子政府の信頼性を確保するために不可欠な領域である。認証、暗号化、プライバシー保護などを目的としたOSSが含まれ、シングルサインオン(SSO)、電子署名、暗号化ライブラリなどが代表例である。公開件数は限定的だが、質的な重要性は非常に高い。
政府系OSSの公開は、行政サービスやデータ基盤などの技術分野にとどまらず、開発や運用を支えるツール群にも広がっている。この動きは、政府システムの開発効率化、品質保証、セキュリティ強化、クラウド移行などのニーズに対応するためであり、デジタルガバメント戦略の中核を担う要素となっている。
特に、CI/CDや運用自動化、テスト・品質保証、開発補助ツールのOSS化は、政府サービスの迅速な提供と継続的改善を可能にする仕組みとして重要である。
公開されている開発ツールは多岐にわたるが、主なカテゴリは以下の通りである。
JenkinsやGitHub Actions、Terraformなど、継続的インテグレーションやデプロイを支えるOSSが多数公開されている。これにより、政府サービスの更新や改善が迅速に行える。
Ansible、Docker、Kubernetesなど、クラウドやオンプレミス環境の構築・管理を効率化するツールが含まれる。これらは、政府システムのスケーラビリティや安定性を確保するために不可欠である。
コード生成、テンプレート、SDK、サンプルコードなど、開発者の生産性を高めるOSSが公開されている。これにより、開発プロセスの標準化や再利用性が向上する。
自動テスト、モック、QAツールなど、品質管理を支えるOSSが含まれる。これらは、政府サービスの信頼性を担保するために重要な役割を果たしている。
ReactやVueベースのUI部品、ダッシュボードなど、ユーザビリティ向上に寄与するOSSが公開されている。
脆弱性スキャン、認証モジュール、暗号化ライブラリなど、セキュリティ強化を目的としたOSSが含まれる。
これらの開発ツールは、技術分野のOSS開発を支える基盤として機能している。
行政サービス分野では、CI/CDやUIコンポーネントがサービスの迅速な更新とユーザビリティ改善を実現している。
データ基盤・API分野では、APIテストツールやデータ変換ツールが信頼性と互換性を確保。
セキュリティ分野では、脆弱性検出や認証モジュールが安全性を担保。
スマートシティや地図情報分野では、可視化ツールやGIS関連プラグインが都市データの活用を促進している。
開発ツール群のOSS公開は、単なる補助的な活動ではなく、政府のデジタル化戦略において不可欠な要素である。
政府系組織によるOSS公開は、行政サービスとデータ基盤・APIの分野で圧倒的に多く、これらが政府のデジタル化を牽引している。地図・都市情報は都市デジタル化の基盤として一定の存在感を示し、教育・医療・福祉は機微情報の制約から限定的な公開にとどまっているが、社会的インパクトは大きい。セキュリティやスマートシティは件数が少ないものの、電子政府の信頼性や都市の持続可能性に直結する重要な分野である。
この分析から、政府系OSSの公開は単なる技術提供にとどまらず、行政の透明性、効率性、そして市民サービスの質向上に直結する戦略的な取り組みであることが明らかになった。
本分析の結果、各国のOSS活動は政策導入のタイミングや制度設計の違いを反映しており、歴史的背景が現在の活動特徴に強く影響している可能性が示唆される。早期に政策を導入した国は、リポジトリ数やプルリクエスト数をはじめとする複数指標で突出しており、活動規模と改善サイクルの両面で成熟度が高い。一方、後発国は規模こそ小さいものの、特定分野に集中した効率的な改善活動や、迅速な課題解決を重視する傾向が見られる。
レーダーチャートによる俯瞰的な国際比較では、各国の戦略的特徴が示された。英国や米国は全方位型で、規模・人気・改善・人員すべてに強みを持つ。フランスは開発者コミュニティ駆動型で、イシューやプルリクエストに偏重し、協働開発文化が成熟している。ドイツやシンガポールは特定指標に尖りがあり、専門分野集中型の活動を展開している。日本とエストニアは小規模・効率型で、改善率や迅速性を重視する開発文化が特徴的である。これらの差異は優劣を示すものではなく、各国が置かれた環境に応じて多様なアプローチを採用していることを意味すると考えられる。
他方、技術分野に焦点を当てた探索的な分析では、政府系組織によるOSS公開が行政サービスとデータ基盤・APIの分野で圧倒的に多く、各国政府のDXにOSSが寄与していることがわかる。地図・都市情報は都市デジタル化の基盤として一定の存在感を示し、教育・医療・福祉は機微情報の制約から限定的な公開にとどまっているが、社会的インパクトは大きい。セキュリティやスマートシティは件数が少ないものの、電子政府の信頼性や都市の持続可能性に直結する重要な分野である。
開発ツール群のOSS公開については、政府系OSSエコシステムの中核を形成しており、技術分野のOSS公開を加速させるための鍵となっていることが示唆される。CI/CDや運用自動化、テスト・品質保証、開発補助ツールは、行政サービスやデータ基盤の迅速な開発・運用を可能にし、品質とセキュリティを担保する役割を果たしていると示唆される。
これらの分析から、政府系OSSの公開は単なる技術提供にとどまらず、行政の透明性、効率性、そして市民サービスの質向上に直結する戦略的な取り組みであると考えられる。