社会・産業のデジタル変革

5. まとめ

世界のOSS動向レポート:行政によるオープンソースソフトウェア公開活動の国際比較調査報告書

本レポートでは、各国政府および公共機関がGitHub上で公開しているOSSリポジトリについて2025年9月時点で確認できるデータを収集し、活動数や時間軸、技術領域といった観点から分析を行った。まず、活動数や関連データの国別集計からは、各国政府のOSS公開活動の規模に関して顕著な差異が見られた。大規模な活動を行っているのは米国・英国であり、フランスが中規模な活動を行なっている。日本・エストニア・シンガポール・ドイツはGitHub上では今回の調査対象国の中では小規模な活動に分類された。さらに、リポジトリ数から推測される活動規模(活性度)だけではなく、プルリクエスト数に現れる継続的な開発や改善活動の成熟度と組み合わせた分析や、レーダーチャートでの関連指標のバランスを明らかにすることで、各国政府および公共機関が公開するOSSの特徴が明らかになった。ただし、本調査で明らかにした活動規模や特徴の分析については、エストニアやドイツなど国によってはGitHub以外のプラットフォームを併用していることなどから、GitHub以外のデータを統合することで結果が変わる可能性があることに注意が必要である。
各国の活動数の時系列的な分析からは、各国におけるOSS公開数の増減過程が明らかになった。さらに、OSS公開数の時系列変化と同時期に実施されたデジタル関連政策をマッピングした。これらの政策とOSS公開活動の因果関係についてはより詳細な文献調査や質的リサーチを通じて明らかにすることができるだろう。また、技術分野や組織構造の違いは各国のデジタル政策における優先順位や行政体制の特性を反映しており、日本の地理空間情報、エストニアのデータ連携基盤、シンガポールのスマートシティなど、国ごとの政策的焦点が明確に現れていることが明らかになった。
本レポートでは、GitHub上の7か国の活動、特に地方公共団体を除く公的機関に限定された対象について定量調査を行った。この調査から得られた示唆の有用性と限定性を踏まえ、今後の展望としては、以下の5点の調査を継続的に行うことが期待される。

  1. 本調査対象7か国のOSS活動に関する継続的なリポジトリ調査
  2. GitHub以外のプラットフォームを活用したOSSの調査(国内の政府等が運用するプラットフォームを含む)
  3. 今回の調査対象になっていない国や地域に関する調査
  4. 考察で述べた観点をもとにした定性的なアンケートもしくはインタビュー調査
  5. 自治体レベルや国際レベルなど異なるガバナンスレベルにおける活動の調査

日本の公共セクターの活動に着目すると、米国や英国、フランスに比較しOSS推進の規模は小さいものの、国土交通省、国土地理院による地図や空間情報分野での活発な動きが見られたり、デジタル庁による注目度の高いOSSの公開が見られたりと、徐々にOSS活動が活発になっている。現状では、他国に比べ、政策や戦略的なトップダウンの推進活動が少ないことが予想されるため、現在はOSSにリテラシーや関心の高い一部の職員レベルで主導されているケースも多い。今後、これらの属人的な動きをより組織的、制度的な動きにつなげていくことが求められる。これらを推進するための具体的方策については、今後の展望として更なるリサーチや議論が期待される。