デジタル人材の育成
公開日:2026年6月29日
本プロジェクトでは、臓器の状態を長時間連続的に観察できる医療検査用のセンサパッチと、それと連携する電子カルテシステムによって、医師が患者の目の前にいない時間にも患部を正確にモニタリングできる医療の実現を目指す。
現在の超音波検査は医師が手持ちプローブで断面画像を取得する方式であり、臓器の状態は瞬間的にしか観察できない。しかし臓器の多くは時間とともに動態が変化するため、診察と診察の間に起こる重要な変化は十分に観察されていない。本センサパッチは、生体密着型超音波(BAUS)センサと複数の生体センサを統合したマルチモーダル医療デバイスである。複数のBAUSを体表に配置して超音波データを取得し、それらを統合することで臓器の3D構造を再構成し、任意の時間・断面を閲覧可能な4D超音波観察の実現を目指す。これは、医師がプローブを手で操作して断面を取得する「2Dの瞬間的な検査」を、「3Dで身体内部を連続的に観察する検査」へと拡張する試みである。同時に、脈拍・体温などのバイタルセンサと電子聴診器を統合し、心音・呼吸音・肺音などの生体信号を取得する。そして、これらの技術を支えるために、センサ配置を支援するAR貼付支援システム、データを統合管理して患者と医療者をシームレスにつなぐ電子カルテ、生体データの異常検知システムを開発する。
本センサパッチを用いた検査は、ICUでの術後患者のモニタリング、遠隔医療における継続的な身体観察などへの応用につながることが期待される。
本提案は、生体密着型エコー技術(BAUS)を用いて、医師が患者の目の前にいない時間にも臓器や患部の状態を継続的に観察するという、医療上の大きな課題に挑む意欲的な提案である。従来の超音波検査は、医師がその場でプローブを操作して断面を取得する「瞬間的な観察」に強みがあるが、診察と診察の間、術後管理、在宅期間などに起こる身体内部の変化を連続的に捉えることは困難だった。本提案は、この空白に対して、ウェアラブルな超音波パッチと複数の生体センサを組み合わせることで、新しい連続モニタリングの基盤を作ろうとするものである。特に、単一のセンサデバイスにとどまらず、取得・可視化・記録・通知・運用までを含む医療モニタリングシステムとして設計しようとしている点に、本提案の大きな魅力がある。
また、医学・ソフトウェア・ハードウェアを横断するチーム構成も本提案の強みである。臨床的な課題を理解する医師、医療情報システムやデータ基盤を扱えるソフトウェア開発者、生体信号計測や組込みデバイスに関わる開発者がメンバーに揃っており、医療現場のニーズを実際のシステムへ落とし込むための土台がある。審査においても、単なる研究構想にとどまらず、スタートアップとして社会実装まで見据える意欲が伝わった。このように本提案は、身体内部を連続的に観察可能にするという非常に大きなビジョンを持ち、医療・ハードウェア・ソフトウェアを横断する未踏事業で取り組むに相応しい挑戦である。実現には多くの技術的・臨床的ステップがあるが、まずは特定用途で確実に動くBAUSパッチとデータ取得・可視化の実証を積み上げることで、将来的に医療現場やヘルスケア領域に大きなインパクトをもたらすプロジェクトへ発展することを期待して採択した。
2026年6月29日
2026年度採択プロジェクト概要(浅野・稲垣・藤賀PJ)を掲載しました。