デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2026年度採択プロジェクト概要(佐藤・猪口PJ)

公開日:2026年6月29日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 田中 邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)

2.採択者氏名

  • 佐藤 漣(旭川工業高等専門学校 生産システム工学専攻/合同会社RAS)
  • 猪口 綺花(北海道大学 工学部 機械知能工学科/合同会社RAS)

3.採択金額

  • 3,024,000円

4.プロジェクト名

  • AIを活用して馬の飼養管理の高度化・省力化を支援するアプリケーションの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

本プロジェクトでは、独自開発した馬用ウェアラブルデバイスにより取得するGPSおよび加速度センサデータを解析し、馬の行動履歴を可視化することで、AIによる作業支援を通じた監視業務の省力化および栄養・運動管理の高度化を実現するシステムを開発する。
日本の軽種馬産業は北海道日高地方に集積しており、地域経済を支える重要な産業となっている。一方、生産牧場においては、従事者の高齢化に伴う慢性的な人手不足が深刻な課題となっている。外国人労働者の受入れも進められているものの、抜本的な解決には至っていない。加えて、給餌や運動管理が経験則に依存し、十分に定量化されていない場合、馬の疾病リスクの増加につながるおそれがある。しかしながら、軽種馬産業においては、ウシやブタ等の他畜種と比較して、作業の省力化や飼養管理の高度化を目的としたICT技術の導入が十分に進展していない。これは、馬の行動特性が個体差に富み一様ではないことに加え、現場におけるデジタルリテラシーの差異も大きく、市販のセンサデバイスのみで牧場運営のDXを実現することが困難であるためである。
本プロジェクトでは、2025年度北海道ITクリエータ発掘・育成事業(新雪プログラム)の支援を受けて実施した「人手不足の馬産地を支えるウマのスマート管理システム」において開発した馬用ウェアラブルデバイスおよびセンサデータ解析モデルを基盤技術として活用する。併せて、本プロジェクト期間中に追加学習を実施し、モデル精度のさらなる向上を図る。これにより、放牧中の馬の行動をリアルタイムに可視化する「デジタルツイン牧場」を構築し、放牧地における監視業務の遠隔化および省力化を実現する。
さらに、学術的な飼養標準および栄養指標を学習したAIを構築し、蓄積された個体別の行動履歴データに基づき、給餌量の調整や運動管理等の飼養管理作業について、自動的に提案を行う機能を実装する。これにより、従来は経験や勘に依存していた管理業務の定量化・高度化を推進し、牧場経営の効率化と飼養品質の向上を図る。
本プロジェクトは、新雪プログラムを通じて連携関係を構築してきた日高地方の協力牧場への実装を起点とし、将来的には全国の軽種馬生産牧場への展開を目指す。さらに、本技術は軽種馬産業にとどまらず、保全が求められる和種馬や重種馬、さらには他の畜産分野への応用可能性も有している。以上により、馬産業の持続的発展に寄与するとともに、畜産分野全体におけるDXの推進に貢献することを目指す。

7.採択理由

本提案は、北海道の軽種馬産業向けに、馬に装着するウェアラブルデバイスとAIチャットボットを組み合わせ、馬一頭ごとの状態を現場の牧場主がスマートフォンから手軽に把握・管理できるアプリケーションを開発するものである。
軽種馬産業は、酪農や肉牛といった一般の畜産とは関係構造が根本的に異なる。一頭の取引価格は数百万円から数千万円、トップレベルでは数億円規模となり、馬は単なる家畜ではなく資産・投資対象に近い性質を帯びる。日本の軽種馬生産は北海道日高地方に約8割が集積しており、繁殖と育成を担う生産牧場と、馬の所有者である馬主が、預託や仔分けといった形で関わるという二層構造の上に成り立っている。汎用的な家畜IoTを横展開するだけでは、こうした構造に最適化された解にはなり得ない。本提案では、提案者自らが開発したLTEウェアラブル端末と、高齢な牧場主にも扱いやすいLINE上の対話型UIを組み合わせ、軽種馬の飼養に固有のオペレーションへ踏み込もうとしている点に未踏性があるものと考える。
提案者らはすでに北海道で起業しており、新雪プログラムでの活動を経て、日高地方の牧場でのフィールド実証まで現場と密に往復しながらプロダクトを動かしてきた実績がある。佐藤氏と猪口氏は高専時代の先輩後輩であり、ハードウェア開発、ソフトウェア開発、現場ヒアリング、事業展開までを内包できるチーム構成である。当事者性と実装力に支えられ、生産現場の省力化にとどまらず、遠方の馬主への情報共有という軽種馬産業ならではの工程までを射程に取り込み、ひいては重種馬や和種馬といった文化型畜産の保全にまで展開していけることを期待し、採択した。

更新履歴

  • 2026年6月29日

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