デジタル人材の育成
公開日:2026年6月29日
本プロジェクトでは、インターネットインフラに依存せず、デバイスの電源を入れるだけで自律的にメッシュネットワークを構成し、データ名の指定だけでデバイス間のデータ共有を可能にするフレームワークを開発する。具体的には、Named Data Networking(NDN)プロトコルスタックをマイコン上に実装し、名前ベースの自律ルーティング機能と開発者向けSDKを構築する。
NDNは2010年代に提唱されたネットワークアーキテクチャであり、従来のIPのように「どのホストに接続するか」ではなく「どのデータが欲しいか」をネットワーク層で直接扱う技術である。メッシュネットワークはデバイス同士がバケツリレーのように通信を中継する方式であり、中央のサーバや基地局を必要としない。本プロジェクトでは、ESP-NOW(Wi-Fiリンク層)やBLE(Bluetooth Low Energy)など複数の無線通信方式に対応したNDNメッシュを実現する。これにより、災害時やインターネット遮断下でも、安価なマイコンを中継ノードとして配置するだけで、スマートフォンやドローンなど多様なデバイスが参加する通信ネットワークを構築できる。さらに、マルチアーキテクチャ対応により、ESP32・Raspberry Pi Picoなどのマイコンから、Jetson・Radxaなどのシングルボードコンピュータまで、単一のコードベースで多様なデバイスを動作させるプロトコルスタックを実現する。
本提案は、IPアドレスやルータを前提とせず、デバイスの電源を入れるだけで自律的にメッシュネットワークを構成し、「データの名前」だけで通信できるNamed Data Networking(NDN)ベースのネットワークフレームワークを開発するものである。
能登半島地震時の基地局損壊や、2026年1月のイランにおける100時間超のインターネット遮断のように、既存の通信インフラが機能しない場面において、末端デバイス間で情報を流通させる新しい通信層を作ろうとする点に強い意義がある。すでにESP32-S3上にC++23とno_std RustでNDNプロトコルスタック(TLV、Forwarder、暗号、SVS v3)を実装し、ESP-NOWを介した10台規模のマルチホップ通信、WebSocket Gateway越しのスマートフォン連携掲示板アプリまで動作実証を済ませている。プロジェクト間中の新規開発として計画している自律的FIB構築のルーティング層、RP2040やnRF52へのマルチアーキテクチャ移植、SDK化、可視化ツールが、既存資産との差分として明確に切り分けられている点も計画として健全である。
ネットワーク層という最も再発明が難しいレイヤーに、自らプロトコルスタックを書き切るところから挑もうとする野心的な提案であり、既に動作しているプロトタイプを土台にしている点で実現可能性も高い。提案者は情報処理学会全国大会での大会優秀賞や、組み込みRustでの開発経験、CNCFサンドボックスへのコントリビューション実績など、本提案を支える技術的蓄積を備えており、未踏事業という場で思う存分挑んでもらうにふさわしい提案であると判断し、採択した。
2026年6月29日
2026年度採択プロジェクト概要(加藤PJ)を掲載しました。