デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2026年度採択プロジェクト概要(谷垣・布川・片岩PJ)

公開日:2026年6月29日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 岡 瑞起(千葉工業大学 デザイン&サイエンス研究科 研究科長・教授)

2.採択者氏名

  • 谷垣 聡音(筑波大学 医学群 医療科学類)
  • 布川 のぞみ(慶應義塾大学 環境情報学部)
  • 片岩 拓也(静岡大学 情報学部 情報社会学科)

3.採択金額

  • 3,024,000円

4.プロジェクト名

  • 触覚ゲルインタフェースによるコミュニケーション拡張

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

本プロジェクトは、ゲル材料の物性変化を活用し、人間の感情や場の雰囲気を触覚として表現・伝達する新たなインタフェースの開発を目的とする。近年、音声やテキストから感情を推定するAI技術は大きく進展している一方で、その提示手段の多くは画面表示や音声出力にとどまっており、触覚を活用した感情表現に関する研究・実装はまだ十分に進んでいない。そこで本プロジェクトでは、触覚を通じて感情や空間的な雰囲気を伝える身体的インタフェースの設計・実装に取り組む。
具体的には、Raspberry Pi上で動作するエッジLLMおよび音声認識システムを用いて会話音声を解析し、会話に含まれる感情や雰囲気を推定する。その解析結果に応じて、ゲル材料の硬さなどの物性を制御し、ユーザが触れた際の触感変化として情緒的情報を提示する。例えば、穏やかな会話に対しては柔らかく滑らかな触感を、緊張感のある場面に対してはやや硬く張りのある触感を生成することで、触覚を介した新しい感情共有の実現を目指す。
触覚表現の媒体としてゲルを採用する理由は、その高い柔軟性と可変性にある。ゲルは硬さなどの物性を連続的に変化させることができ、柔らかさ、弾力、張りといった多様な触感を自然に生成できる。この特性により、感情のように連続的かつ曖昧な状態を表現する媒体として高い適性を有している。
また、本システムはエッジ環境での動作を前提として設計する。これにより、感情という個人的かつセンシティブな情報をクラウドに送信することなく、デバイス内で安全に処理することが可能となる。加えて、ユーザごとに異なる感情表現の受け取り方や触覚嗜好に応じたパーソナライズにも対応しやすく、プライバシー保護と個別最適化の両立が期待できる。
本プロジェクトは、言葉や映像のみでは伝達が難しい感情や雰囲気を触覚として共有する新たなコミュニケーション技術の基盤を構築するものである。さらに、感情という抽象的な心的状態を身体的に知覚可能な形へ変換することで、「心の物質化」ともいえる新しいインタフェースの可能性を切り拓くことを目指す。

7.採択理由

AIが感情や場の雰囲気を解析し、ゲル素材デバイスの温度と柔らかさという触覚情報として手元に伝えるインタフェースを開発する提案である。視覚や聴覚で常に受け止めている膨大な情報のうち、感情や雰囲気のような「読み取りに認知コストがかかる成分」を、空きチャネルである触覚にオフロードするという設計思想は、ヒューマンコミュニケーションへの新しい補助の形として独自性が高いと評価した。
感情を物性に変換するという仮説には、ゲル素材ならではの質感が説得力を与えている。NLPやセキュリティ分野の研究実績を持つ片岩氏(CHI Late-Breaking Worksなど採択)、アプリケーション実装を担う布川氏、ゲル素材研究と異能vationを通じたアウトプット経験を持つ谷垣氏という、3名の異なる専門性が補完的に機能する体制も、本提案を支える強みである。
触覚チャネルを介した感情伝達というテーマは、ヒューマン・ヒューマン間にとどまらず、人と動物、人とロボットやAIとのインタラクションにも展開可能性を持っている。ゲル素材ならではの「物性で気持ちを伝える」体験を、誰のどのような場面に届けるのかを本プロジェクト期間を通じて見定めながら、感情を直感的に手渡せる新しいコミュニケーション基盤として育てていくことを期待している。

更新履歴

  • 2026年6月29日

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