デジタル人材の育成
公開日:2026年6月29日
本プロジェクトでは、電気刺激とモーションキャプチャを一つの小型デバイスに統合し、VR体験に身体感覚を付与する触覚フィードバックシステムを開発する。現在のVR体験では、視覚及び聴覚による没入感が高まっている一方で、接触、衝撃、抵抗感等の身体感覚の提示は限定的であり、ユーザが仮想空間内の物体や出来事を身体的に感じることは難しい。本プロジェクトでは、この課題に対して、EMS(Electrical Muscle Stimulation、筋電気刺激)を用いた触覚提示と、IMU(Inertial Measurement Unit)を用いたモーションキャプチャを統合し、既存のVR環境に後付け可能な触覚フィードバックシステムを実現する。
開発するシステムでは、ユーザの身体に複数の小型デバイスを装着し、ユーザの動きをVR空間内のアバター等に反映すると同時に、VRアプリケーション内の接触、衝撃、抵抗感等を電気刺激として身体に提示する。電気刺激を用いることで、従来の振動モータでは表現しにくい、押される感覚、衝撃を受ける感覚、動作に対する抵抗感等の身体感覚を提示する。また、振動モータは内部の磁石がモーションキャプチャ用の地磁気センサに影響を与える場合があるが、電気刺激はそのような磁気外乱を生じにくいため、触覚提示とモーションキャプチャを同一の小型デバイス内に統合しやすい。
本プロジェクトの技術的な核は、第一に、電気刺激出力機能とモーションキャプチャ機能を備えた小型デバイスとそれを制御する基本ソフトウェアである。第二に、VRアプリケーション内のイベント情報、物理量、既存の振動データ等から、電気刺激の強度、提示時間、提示位置等のパラメータを生成する触覚翻訳機能である。第三に、モーションキャプチャで得られる姿勢情報やセンサ情報を用いて、装着状態やユーザごとの反応特性に応じて刺激パラメータを調整する機能である。これらを統合した上で、ゲームエンジン、ソーシャルVR環境、VRランタイム等の既存VR環境での実証実験、及び、ユーザ評価を通じた改良を行う。
VRにおける触覚フィードバックは、視聴覚と並ぶ重要な体験要素として長く研究が重ねられているが、装着の煩雑さやキャリブレーションの困難さがあり、一般ユーザの手に届く形での実現は限定的である。本提案のコアである電気刺激とモーションキャプチャを組み合わせることも、力覚的なフィードバックを生成しうる萌芽的な手法として知られている。
本提案は、電気刺激とモーションキャプチャを統合した独自の触覚提示プラットフォームMoBitsを設計・実装し、VR内の身体感覚をより精緻に再現することを目指している。提案者の村松氏は2022年度未踏ジュニアでスーパークリエータに認定され、現在もハードウェアスタートアップで実装経験を積み続けている。共同提案者の小松氏もセキュリティ・キャンプ2025全国大会修了者であり、二人合わせて、最新の研究成果を自ら再実装し改良し続けるツールキット開発の力量を備えていることが、審査の過程で提示されたプロトタイプの完成度から伺えた。
触覚体験を再現するというテーマには多くの先行研究があり、プロジェクトを「既存手法の改善」の一段先へ押し進めるためには、ツールキットとしての完成度に加えて、それを土台にした応用や体験設計の独自性が鍵となる。提案者の高い実装力をベースに、提案書の想定を超えた独自の体験デザインへと展開してくれることを期待し、採択とした。
2026年6月29日
2026年度採択プロジェクト概要(村松・小松PJ)を掲載しました。