デジタル人材の育成
公開日:2025年6月25日
本プロジェクトは、独自の機構を用いた歩行補助アシストスーツ(エクソスケルトン)と、その自動設計ツールを開発する。具体的には、特殊歯車とバネを組み合わせた独自の機構を内蔵する、動力源を要さない歩行アシストシステムを構築する。本システムは、ユーザの歩行動作に合わせて特殊歯車が回転し、その形状に応じた外力がバネにかかることで、歩行アシストに必要な力を適切なタイミングで発生させる。これにコンピュータによる制御を組み合わせることによって、高いアシスト効果と身体適応性を備え、かつ充電の手間がほとんど発生しないスマートアシストスーツを実現する。
本アシストスーツのユーザは子どもから大人、高齢者など、全ての自立歩行が可能な人間を対象としている。つまり本アシストスーツは人類の移動手段の幅を広げる期待がある。現状、手軽な移動手段として自転車が選ばれるが、自転車は移動が済んだら駐輪が必要で、電車への乗り継ぎも難しいなどの欠点がある。しかし、アシストスーツであれば、自転車ほどの速度は出ないが楽に目的地に到達でき、装着したまま車両にも乗れ、駐輪場も必要ない。また、移動だけではなく階段の上り下りの補助や、転倒防止の効果もあり、リハビリテーションなどへの活用も見込まれる。
本提案は、外部電力やモータを一切用いず、特殊歯車とバネのみで高効率な歩行補助を実現するアシストスーツを開発し、それに電子制御による個別最適化を組み合わせようとするものである。すでに実現している高い完成度を持つ機構を土台に、動力不要と柔軟制御の両立という困難な課題に取り組む点に、未踏事業として支援すべき価値があると判断した。
アシスト特性を関数として設計・制御する発想は、構造そのものをアルゴリズムとして捉える高度な工学的アプローチであり、まさに未踏的として評価できる。また、用途は歩行にとどまらず、階段昇降やリハビリなどへの応用も視野にあり、汎用的な身体支援技術としての展開も期待される。
提案者は、設計・実験・検証・論文化に至るすべてを自ら遂行しており、数値計算や電子制御に関する深い理解と実装力を有する。さらに科学啓発や創作活動を通じて、技術を社会に開く姿勢も明確である。自由な試行が許される未踏事業の場でこそ深化が期待される提案であると判断し、採択した。
2025年6月25日
2025年度採択プロジェクト概要(村木・田邊PJ)を掲載しました。