デジタル人材の育成
公開日:2025年6月25日
本プロジェクトでは、4mmピッチの高密度ピンアレイ構造を備えたポータブル形状提示ディスプレイを開発する。従来の形状提示ディスプレイは、大型の卓上機構が主流であり、ピン間隔も最小でも6mm程度にとどまるため、携帯性や触覚分解能に課題があった。また、従来のピン配置は6mm x 6mm格子配置に制限されていたが、本装置では4mmのピンを最密充填構造で配置し、約2.6倍のピン密度を実現する。掌の二点識別域(約3mm)を踏まえた4mmピッチの最密充填ピン配置を採用することにより、細かなテクスチャから把持可能な大きさの形状まで、ユーザが直感的に触知できる高精細な触覚提示を実現する。
デバイスの構成要素としては、底面直径4mmの超小型DCモータとリードスクリュー機構を組み合わせた個別駆動ピンをモジュール化し、小型化と高精度な位置制御を両立させる。エンコーダを内蔵しないモータに対しては、フォトリフレクタを用いたセンシングやブラシノイズの検出と推定を用いた疑似エンコーダ手法を統合することで、精密なフィードバック制御を確立する方策を検討する。
本装置が可能とする高解像度の触覚提示は、サイネージ、卓上インタフェース、遠隔触覚コミュニケーション、VR上での触覚提示など、幅広い領域での応用が期待できる。
本提案は、4mmピッチの高密度ピンアレイをスマートフォンサイズの筐体に収めることで、携帯可能な触覚提示装置を実現しようとするものである。従来の卓上型装置と比べて分解能・携帯性ともに大きな改善が見込まれ、VR/ARや遠隔触覚の分野における新しいインタフェース表現の可能性を拓く提案である。
形状提示という領域においては、用途の確立やコスト面での課題は残るものの、提案者はそれらを補って余りある実装力と構想力を有している。制御回路、モータ制御、筐体設計まで一貫して手を動かし続けており、提案者のこれまでの開発実績や継続的な取り組みからも、確実に進展が期待できる。
未踏事業では、アイデアの完成度だけでなく、技術的に困難な課題に自ら挑む姿勢と、それを形にする実装力を重視しており、本提案はまさにそうした挑戦にあたる。用途については未知の部分も多いが、新たな体験を熱量によって作り上げる意義が大きいと判断し、採択した。
2025年6月25日
2025年度採択プロジェクト概要(杉本PJ)を掲載しました。