デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2025年度採択プロジェクト概要(関口PJ)

公開日:2025年6月25日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 竹迫 良範(神山まるごと高専 デザイン・エンジニアリング学科 教授)

2.採択者氏名

  • 関口 祐豊(明治大学 大学院先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻)

3.採択金額

  • 2,880,000円

4.プロジェクト名

  • AIと学習者と教育者の協調によるプログラミング課題の採点システム

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

本プロジェクトでは、プログラミング課題に対するLLM(大規模言語モデル)によるコードの自動評価と、学習者同士のクラウドソーシング型の相互評価を組み合わせた新しい採点システムを開発する。従来の自動採点システムは、標準出力を基にした正誤判定が主流であり、視覚的・動的なプログラムの採点には対応しきれていなかった。また、手作業での採点では、受講者数の増加に伴い、教育者やTAの負担が増大し、迅速なフィードバックが困難になるという課題があった。本システムでは、学習者が課題を提出する際、まずLLMによるコードの自動評価を受ける。さらに、他の受講者の提出物の実行結果を操作しながら評価するプロセスを組み込むことで、採点作業を分散し、教育者の負担を軽減する。このアプローチにより、学習者は他者の提出物を評価する過程で仕様の不備に気づき、自ら修正する機会を得る。また、採点を事前に分散させることで、フィードバックの待ち時間を短縮し、学習のサイクルをよりスムーズに回すことができる。
本プロジェクトを通じて、動的なプログラムの評価を効率化し、教育現場での採点業務の負担を軽減するとともに、学習者自身が主体的に学べる環境を整備する。さらに、大規模なプログラミング講義への導入を視野に入れ、他の教育機関でも容易に運用できるシステム設計を目指す。

7.採択理由

本提案は教育現場の実態を丁寧に踏まえており、特にTA不足や講義の大規模化によって発生する採点の負担、そしてフィードバックの遅延による学習者のモチベーション低下など、現場の課題に直結する解決策をシステムと仕組みの両面から解決しようとしている点を評価した。特に、学習者同士による相互評価を単なる分担作業としてではなく、「他者の提出物を評価するプロセス自体を学びの一部」として位置づけている点は、42TokyoなどITエンジニア養成機関でも実際使われているピアレビューの仕組みと似ており、大変実践的である。
また、本提案のベースになっている既存の採点システムは100名規模の大学のプログラミング演習の講義において運用実績があり、提案内容が単なるアイディア段階を超えて、実証済みのプロトタイプである点も評価できる。
実際に出題するプログラミングの演習課題についても、正解のあるアルゴリズムのソースコードを厳密に採点する方式以外にも、従来対応が難しかったクリエイティブな要素、動的・視覚的な課題に対しても柔軟に採点が可能な新たな評価基盤を構築しようとしていることも高く評価できる。
APIベースで設計し、Webベースで簡単にインテグレーションができるのであれば、大学の授業のみならず中学・高校・高専の授業、またオンライン教育サービス、企業の研修など、さまざまな教育現場への水平展開が期待できる。単なる研究開発にとどまらず、さらなる社会実装へ向けた展開を期待している。

更新履歴

  • 2025年6月25日

    2025年度採択プロジェクト概要(関口PJ)を掲載しました。