デジタル人材の育成
公開日:2025年6月25日
本プロジェクトは、ローカルLLMを搭載しつつ、ローカルOSとWeb環境を完全に統合したオペレーティングプラットフォームを開発する。なお、ここで言う「オペレーティングプラットフォーム」とは、ローカルOSとWeb環境の両方を操作するメタ的なOSを指す、従来のOSと区別をするための本プロジェクトでの呼称である。
近年のWebブラウザはWebアプリケーションを実行することが可能になったが、ローカル環境で動くOSとは隔離されているため、Webアプリケーションとローカルアプリケーション間の作業連携やデータの相互利用が困難である。また、昨今の商用OSやWebブラウザは大規模言語モデル(LLM)を機能として組み込んでいるが、それらのLLMは主にクラウド上で動作しており、機密情報漏洩リスクや従量課金制のコストが課題となっている。
本プロジェクトでは、Webブラウザをプラットフォームの中心に据えた、ローカルOSとWeb環境をシームレスに統合したオペレーティングプラットフォームと、それに搭載するローカル環境で動作するLLMを開発することによって、これらの課題を解決する。ユーザの自然言語での指示に基づいてWeb環境とローカル環境を跨ぐワークフローを自動化できるようにすることで、ユーザはローカルデータを安全かつ簡便に処理できるようにする。また、サンドボックス化されたプラグイン機構により、外部開発者が独自の機能を容易に追加できる拡張性を持たせる。これらにより、企業や教育機関、高齢者など幅広いユーザ層に、安全で直感的、効率的なコンピューティング環境を提供することを目的とする。
本提案は、高レイヤのウェブブラウザと低レイヤのローカルOSを統合し、さらに先進的な生成AIのローカルLLMを活用してユーザの作業自動化を実現するという、極めて野心的な取り組みである。従来分断されていたウェブアプリケーションとローカル環境をシームレスに連携させるという発想は思いつくものの技術的には非常にチャレンジングであり、実際にアウトカムを生み出すことができたときの社会的インパクトが高い点を評価した。
提案者らは既にウェブブラウザ「Floorp」の開発実績があり、5万人以上のアクティブユーザを抱えるなど、実装力と影響力の裏付けがある。また、ローカルLLMを導入するという選択は、外国製クラウド依存に伴うセキュリティ課題や経済安全保障に対する解決策となっており、日本企業や政府機関など幅広いニーズに応えうる設計思想となっている。
本プロジェクトの成果は、単なる個人向けの便利なブラウザという枠を超え、次世代のオープンなAIネイティブOSの実装として、AIの民主化やデジタル主権の確立に資する可能性を持つ。これは、GAFAMを中心としたプラットフォーム支配とは一線を画し、国産・オープンソースとして展開されることに大きな意義がある。
本提案はローカルLLMの導入・管理・実行という技術課題に加え、セキュリティ・サンドボックス内でのプラグインの動作、さらにはDenoベースのカスタムランタイムの実装など、挑戦的かつ多層的な技術課題に挑戦している。
提案代表者の浅野氏はすでに独自のブラウザ開発を一から立ち上げ、継続的に成長させている実績があり、髙橋氏・鮎澤氏もバックエンドや生成AI領域での開発経験を持つ。開発スケジュール、役割分担、使用言語・ツール類も具体的かつ妥当であり、限られたリソース下でもプロジェクトを着実に前進させる能力があると判断した。
世の中の生成AIのエコシステムの発展は非常に速いスピードで進行しており、採択時点ではMCPサーバとの連携による自然言語によるソフトウェア制御も急速に実現が進んでいる。プロジェクト採択後も幅広く時流を捉え、当初の技術選択以外の技術に対しても客観的に動向を把握・評価し、LLMと統合したOS・ウェブブラウザのエコシステムをいち早く実現することを期待している。
2025年6月25日
2025年度採択プロジェクト概要(髙橋・浅野・鮎澤PJ)を掲載しました。