デジタル人材の育成
公開日:2025年6月25日
本プロジェクトでは、直感的な操作性と高度な組版機能を兼ね備えた、新しい文書作成システムを開発する。
従来の組版システムは、専門的な表現力と使いやすさがトレードオフの関係にあった。例えば、LaTeXは高度な専門表現に強みを持つ一方で、操作性が低く、初心者には扱いづらいという課題がある。一方、Microsoft Wordに代表されるWYSIWYGエディタは、誰でも簡単に使用できるものの、数式の入力や組版機能が弱く、厳密な意味での組版を行わなくても文書が作成できてしまうという問題がある。そこで本プロジェクトでは、これらの「良いとこ取り」をする文書作成システムを開発することで、直感的な操作と高度な表現力を両立した組版を実現する。
本システムでは、CUIとGUIを並列に表示し、どちらからでも文書の編集を可能にする。両者はリアルタイムに同期し、CUI側ではLaTeXエディタのように独自のマークアップ言語を用いたコードベースでの文書の編集、GUI側ではMicrosoft Wordのような視覚的な編集ができるようにする。この構造により、CUIを活用した高度な組版と、GUIの直感的な操作性を両立させた文書作成環境を実現する。
GUI側の操作では、LaTeXでは難しかった図表の挿入や編集をドラッグ&ドロップで行うことを可能にし、数式や表の作成もMicrosoft ExcelのようなGUI上で操作を可能にする。これにより、専門知識がなくても高度な組版を手軽に行えるようになる。また、CUIとGUIのリアルタイム連携によって編集内容を即座に反映されるようにするため、作業の効率が大幅に向上する。
さらに独自マークアップ言語では、LaTeXよりも簡単で可読性の高い記述を可能にする。バックスラッシュ記法を廃止し、ユニコードに対応した記法によって可読性を向上させ、プログラム的にも扱いやすい構造を持たせる。また、組版結果のリアルタイムプレビュー、分かりやすいエラーメッセージの表示により、初心者でも学習しやすい環境を整える。
本提案は、直感的なGUI操作による組版と高度なCUIベースの組版をリアルタイムに連携させることで、数式や図表を用いた美しい文書を初心者でも容易に作成できる文書作成システムの実現を目指すものである。独自言語により厳密な構文・動的な修飾・リアルタイムプレビューを可能にすることによって、LaTeXのような高い表現力とMicrosoft Wordのような使いやすさを両立し、既存のソフトウェアが抱える学習コスト、組版の自由度、環境構築の難しさといった課題の解決を目指している。さらにこの独自言語は、画像や数式、表、動画、3Dモデル、コードの実行までを文書に埋め込めるようにすることを目指しており、現代的な表現を充足させた新しいマークアップ言語となることも期待できる。Rust的なパッケージ機構による拡張性やAI活用を前提とした設計思想、既に言語仕様やプロトタイプを用意している点を評価し採択とした。
2025年6月25日
2025年度採択プロジェクト概要(丸山・石田・中村PJ)を掲載しました。