デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2025年度採択プロジェクト概要(増田・永田・金田PJ)

公開日:2025年6月25日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 落合 陽一(メディアアーティスト/筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター センター長)

2.採択者氏名

  • 増田 凌(東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻)
  • 永田 莉紗(東京大学 大学院学際情報学府 学際情報学専攻/バンタンデザイン研究所 ファッションデザイン専攻)
  • 金田 昌也(所属先非公開)

3.採択金額

  • 2,880,000円

4.プロジェクト名

  • 布状・板状3Dプリント構造物と一体造形可能な、自由曲線に沿うインターロック構造の開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請プロジェクト概要

本プロジェクトでは、任意の立体形状の繋ぎ目の接合部品として、ジッパーやスナップフィットなどのインターロック構造をコンピュテーショナルに設計する手法、およびそれを利用した作品を制作する。本設計手法による接合部品により、追加の部品や接着剤等を用いずに立体形状を組み上げられるようにすることを目指す。本プロジェクトでは特に薄い布状・板状のパーツに特化した接合部品を開発する。
複雑な形状をした3Dプリント造形物をパーツに分割すると、その分割線も複雑な曲線になる。そのため、接合部品の要件としては「自由曲線に沿う」ことが重要となるほか、使用中に意図しないパーツの脱落が起こらないような強固さも必要となる。そこで本プロジェクトでは、インターロック構造と呼ばれる強固な接合部品を任意の目標形状に対して生成する手法を開発する。具体的には、3D CAD Rhinoceros/Grasshopper上で利用可能な設計支援ツールを実装する。開発した接合部品は、目標とする造形物に後から取り付けるのではなく、造形物のパーツと一体になった形で3Dプリントできるようにする。この接合部品は素早く強固な組み立てが可能なだけでなく、組み立て後に形状を保つ骨組みとして働くなど、新しい機能を持ちうる。
さらにこの独自手法を活かした、ファッションやプロダクトデザイン分野でのアプリケーションを提案する。この技術だからこそできる新しいフォルムやデザインの応用可能性を示すべく、我々クリエータ自身がエンジニア兼デザイナーとなって、服、鞄、家具などを制作する。

7.採択理由

提案者らによって示されたインターロックによる造形は実に興味深かった。造形的な発想を駆使し、空間や環境が抱える閉塞感をアイデアの力で突破しようとする姿勢には、単なる技術的課題解決を超えた美的意思が感じられた。機能性や耐久性という実用的制約と、造形的・美的な深化という抽象的理想との間には、今後も葛藤と実課題を踏まえた発展が続いていくだろう。そのような葛藤の渦中でどのような成長を遂げていくのか、大いに楽しみである。多様な個人が集い、それぞれの専門性を活かしながら相互に高め合って進めていくというチーム構成にも、社会と向かい合う展開への期待感を抱かせる。以上の理由から、本提案を採択とした。

更新履歴

  • 2025年6月25日

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