デジタル人材の育成
公開日:2024年6月25日
本プロジェクトでは、人工遺伝子回路の設計を画期的に効率化する統合開発環境(IDE)を構築する。「視覚的に遺伝子パーツを配置する人工遺伝子回路図の設計UI」「遺伝子回路動作シミュレータ」「DNA配列最適化モデル」を組み合わせた、人工遺伝子回路の設計を一気通貫して行うことができるプラットフォームを実現する。
人工遺伝子回路とは、制御工学的手法を応用して設計された、複雑に制御される生体高分子ネットワークのことである。人工遺伝子回路を生命体システムに外挿することによって、生命体の挙動をプログラミングできる。そのため、エンジニアリングされた「人工生命システム」の社会実装において、極めて重要な基盤技術となると期待されている。
しかし、現在の人工遺伝子回路設計のプロセスは非常に複雑である。設計者は複数のツールやデータベースを行き来しながらDNA配列を直接編集し、シミュレーションプログラムを記述する必要がある。このプロセスは効率的ではないため、生命科学の研究者が専門性を十分に発揮することを妨げている。
本プロジェクトで開発するIDEはそれらの障壁を全て取り除くことを目指す。本IDEによって、人工遺伝子回路のアイデアを即座にシミュレーションし、DNA配列をデザインするためのシームレスなパイプラインを提供することで、アイデアの具現化を加速させることが期待できる。本IDEは、計算機科学における機械語から高級言語への移行に匹敵するパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。これにより、人工遺伝子回路を用いた「人工生命システム」設計の民主化、応用先の多様化に大きく貢献することが期待される。
本プロジェクトは、人工遺伝子回路を直感的に設計するために、設計ユーザインタフェース、回路動作シミュレータ、最適化モデルを備えた統合開発環境(IDE)を開発する提案である。提案者らは生命科学の専門性を持ち合わせており、課題も丁寧に捉えている。開発計画も明確で実現可能性も高く、合成生物学の発展に寄与する提案であると感じたため、採択とした。他分野を含めた様々なプレイヤーが人工遺伝子回路を設計できるようなシステムとして仕上げるために、使いやすいインタフェースを開発し、実際にユーザに使ってもらいフィードバックループを回すまでプロジェクト期間中に頑張って取り組んでほしいと期待する。
2024年6月25日
2024年度採択プロジェクト概要(奥田・外尾・ 須賀PJ)を掲載しました。