デジタル人材の育成
近年の野球において、球審のストライク・ボールの判定(ジャッジ)のミスが問題視されている。本プロジェクトでは、このジャッジのミス(誤審)を改善するために、VRを用いたジャッジトレーニングシステムを開発する。ユーザは野球場、投手、捕手、打者が配置された仮想空間において審判の視界を体験し、投手が投げる球に対してジャッジを下すことでトレーニングを行う。
本システムは、テストモードとトレーニングモードに分かれており、テストモードではユーザの誤審率を測定し、トレーニングモードではジャッジ技術を高めるための様々のフィードバックをユーザに与える。仮想空間内の各オブジェクトの動作は、実世界でのそれらの動きに基づいた、それぞれの3Dモデルの動作によって再現する。例えばボールの軌道は、弾道測定機器を用いて実世界で投手が投げるボールの軌道を測定してデータ化することで再現することを想定する。
本システムは、ユーザが時間や場所、道具の制限なくトレーニングを実施できるように、スマートフォン用VRゴーグルを用いて利用可能なアプリケーションとして実装する。本システムでのトレーニングを経たユーザの、実世界での誤審率の推移を計測する実験を行い、システムの有用性検証、フィードバックの収集とシステムの改善を繰り返すことで、実世界のジャッジ技術向上に有効なシステムの完成を目指す。
スポーツトレーニングのためのVRの利活用が注目を集めている。しかしその多くはプレイヤーの能力向上を目的としている。それに対して本プロジェクトは、申請者自身のベースボールプレイヤーとしての経験に根差し、球審にターゲットを絞り、そのトレーニングに用いることを目的としている。球審を機械で代替するのでなく、あくまでも能力向上を目標としている点が人間拡張という観点からもユニークである。