デジタル人材の育成
越塚 登(東京大学 大学院情報学環 教授、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 副所長)
チーフクリエータ
伊藤 剛浩(筑波大学 情報学群情報科学類)
コクリエータ
川田 裕貴(筑波大学 情報学群情報科学類)
現在のコンピュータは、ハードウェア・ソフトウェアとも非常に古い設計です。時代が変化する中で汎用といわれるコンピュータでも利用用途は大きく変化してきました。その中で過去の互換性の維持のために現在となっては無駄な部分がハードウェア・ソフトウェア両方に存在します。また、根本的な命令セットレベルで、現在のコンピューティングに適さないものも多く存在します。
これら、既存のシステムを参考にし、今回新たに1からコンピュータシステムの構築をします。この際、ハードウェアの一方的な仕様に、ソフトウェアを合わせるという、従来の方式ではなく、仕様を検討する段階から双方の意見を言い合い、お互いの仕事を適切に割り振ることにより、より時代に見合った高性能・低消費電力コンピュータシステムを構築していきます。
ハードウェア(CPU)と、ソフトウェア(OS)の連携ということで、コンテキストスイッチの最適化・割り込み/IOアクセスの最適化を行います。
ハードウェア(CPU)では、現在の高性能プロセッサでは大前提となっている、アウトオブオーダ実行に、命令・基本アーキテクチャの段階で考慮し、より無駄が少なく回路規模対性能を上げ、低消費電力動作を得ることを目標とし、設計しています。
ソフトウェアでは、OSやプログラムの実装に必要なアセンブラ・コンパイラの開発と、システムを効率的に動作させるために今回作成するCPUに特化した機能を搭載したオペレーティングシステムを開発します。
本テーマを採択した理由は以下の3点である。
第一に、チーフクリエータである伊藤剛浩君及びコクリエータの川田裕貴君はCPU及びその周辺システムの開発を数年にわたって進めてきており、その活動内容及び両名のもつシステム開発技術力は様々なところで評価されている等の実績を持っている。
第二に、応募資料及び口頭における提案内容のプレゼンテーションにおいて、開発の目的や狙い、技術的ポイント等が的確であり、本人が持つ技術力・開発力及び開発の目的、予想される成果に関する関係が適切に説明されていた。
第三に、開発内容がCPU及びOSを開発するという、計算機分野の技術の本流を真正面から挑戦するものであり、一朝一夕に取り組んで成果を出していけるものではない。応募者の年齢(20歳)と、独学で進めているというこれまでの開発環境を考えれば、かなり意欲的な取組みであると考えられる。