デジタル人材の育成
公開日:2024年6月28日
現在、日本国内では地方で若年層の人口が減少しており、農業の働き手不足の問題が生じている。十数回にわたる農家への訪問を経て、国内の農業サイクルの中で省人化のボトルネックになっているのが、作物の選別工程であると判明した。年間約3,300億円が国内の作物選別工程に費やされており、これは日本の農業経営費の1割に相当する。その中でも、品質選別工程の自動化は全く進んでいない。既存のAI選別機は、大規模な設備投資を要する上に、選別基準が一律化されており、農家単位の選別基準の変動や多様な作物品種へ対応できない。さらに、農協施設のサービス利用には、選別だけでなく梱包や販路決定までを農協に任せる必要があり、価格決定権担保のために利用しない農家も多い。
これらの問題点を解決するため、本プロジェクトでは、農作物の品質選別を行うAIモデルを作成し、個人農家が導入できる自動選別システムを開発する。小型な外装かつシンプルな操作性にすることで、農家側の経済面・デジタル面での導入障壁を下げ、パソコンを触ったことがない高齢農家にも導入できるようにする。国内農業で最も人手がかかっている品質選別工程を省人化することで、地方人口流出の下での農業生産の維持に貢献する。
未踏アドバンスト事業期間に、我々は選別向けAIソフトウェア及びアプリケーションを組み込んだ初号機を設計/製造し、提携農家へのテスト販売を目指す。その後は、ビジネスアドバイザーと相談しながら要素技術の特許化を進めつつ、個人農家や農業法人への販売に向けた量産体制に移る。将来的には加工食品や自動車部品、ICデバイスなどの他業界での選別業務へ応用し、事業体としてのカバー範囲を広げていく予定である。
農家向け農作物品質選別システムの開発提案。個人や小規模農家の粗選別作業の自動化により、人手不足対応、低コスト化、多種作物対応などの課題解決を狙っている。ユーザニーズや課題の現地調査とプロトタイプ開発をかなり進めており、現場の課題に即した開発を行えている。また、積極的に協力者を発掘するなど、行動力も高い。また、ユーザフレンドリーなUI開発を心がけるなど、製品化に対する知見も高い。技術課題の解決や、プロジェクト管理、知財戦略などの面で支援していきたい。
2024年6月28日
2024年度採択プロジェクト概要(水谷・平田・樋口・杉山詩歩・杉山月渚PJ)を掲載しました。