HOME未踏/セキュリティ・キャンプ未踏事業未踏ターゲット事業:2019年度採択プロジェクト概要(白井・八木・新保PJ)

本文を印刷する

未踏/セキュリティ・キャンプ

未踏ターゲット事業:2019年度採択プロジェクト概要(白井・八木・新保PJ)

最終更新日:2019年7月19日

1.担当PM

田中 宗(早稲田大学 グリーン・コンピューティング・システム研究機構 主任研究員(研究院准教授)兼 JSTさきがけ研究者)

2.採択者氏名

白井 菖太郎(東京理科大学 大学院理学研究科 物理学専攻)
八木 武尊(東京理科大学 大学院理学研究科 応用数学専攻)
新保 潤(東京理科大学 理学部第一部 物理学科)

3.採択金額

3,200,000円

4.テーマ名

アニーリングマシンを用いた最適航路選択アプリケーションの開発

5.関連Webサイト

なし

6.申請テーマ概要

 海運業界において、 運航にかかる燃料費の低減及び、船舶が排出する温室効果ガスを削減することが大きな課題である。ソフト的な解決方法として、最適な航路を選択することが挙げられるが、実際には実海域における船舶の状態、風、波、海流など様々な要素を考慮した上で最適な航路を選択する必要がある。さらに、港周辺で船は混雑しており、燃料チャージや台風回避のために港に立ち寄る必要もある。これら多くの要因を考慮し、最適な航海日程を設計するために、我々はアニーリングマシンを用いることを考えている。
 変分法など従来の最適航路を求めるアルゴリズムでは、コスト関数の局所解にトラップされてしまう場合がある。一方で、アニーリングアルゴリズムを用いた場合、十分長い時間をかけて系を変化させれば、このようなトラップを確実に回避できることが数学的に証明されている。しかし、実際には計算時間は限られているため、本プロジェクトでは現実的な時間内で有益な近似解に収束する様なスケジューリング関数の決定が課題となる。
 さらに、船舶で利用できる通信は衛星通信を利用したものが主流である。また、通信速度が非常に遅くコストが非常に高い。そのため、陸上と同じアプリケーションが正常に動作することは難しい。よって通信量の少なく、遅延に強いアプリケーション設計が求められる。そのため、本プロジェクトでは一般公開されており陸上から得られるデータ(気象・海象データ等)を活用し、航海中の船舶は最低限のデータの送受信をすることで対処する。
 上記の要素を考慮し、我々は最適航路をアニーリングマシンによって選定し、最適航路が視覚的にすぐにわかるようなWebアプリケーションを開発することを目的として設定する。本プロジェクトで開発する最適航路を選択できるWebアプリケーションを用いれば、多種のデータをアニーリングマシンで処理することで、ユーザーは従来のコンピュータの結果より効率的な航路を選択できる。そして、燃料費の低減や、温室効果ガスの削減が期待できる。

7.採択理由

 本開発提案では、海運領域における組合せ最適化処理、特に航路選択最適化を行うことを目的としている。アニーリングの応用探索において、モビリティの最適化を目指した研究開発が活発に行われている。実際、自動車関連企業による自動車を対象としたマルチモーダル最適化の取り組みや、航空関連企業による飛行機運行最適化の取り組みなどが公開されている。一方、海運領域における最適化を目指したアニーリングの応用探索については現在のところほぼ見当たらない。一言にモビリティ最適化と言っても、そのモビリティが動く空間によって課すべき制約条件や最適化すべき対象は大きく変わる。そのため、これまで精力的に行われてきた陸および空のモビリティ最適化と、海のモビリティ最適化の相違点や共通項を適切に抽出することも重要な課題となる。
 提案者グループが海運領域に対する強い興味を持っており、海運領域に対する様々な課題についてもすでに丁寧に調査しはじめている様子がうかがえる。提案者グループの現段階の計画はやや荒削りな部分があるものの、課題を適切に抽出し、その課題を解決するために取り組む意欲を感じた。また、アニーリングマシンや量子コンピュータなど次世代コンピューティングが将来どのように進展していくべきかという展望をしっかりと自分の言葉で述べており、提案者グループの確かな情熱を感じた。申請者グループは3名からなり、それぞれの得意とする領域が異なることから、それぞれの創発効果により素晴らしい開発になると期待する上、育成効果も高いと見込まれる。以上の理由から、当該開発提案を採択するに至った。

更新履歴

2019年7月19日 2019年度採択プロジェクト概要(白井・八木・新保PJ)を掲載しました。

未踏/セキュリティ・キャンプ