デジタル人材の育成
公開日:2025年5月28日
量子リザバーコンピューティングは、量子システムを計算資源として利用する機械学習の手法である。入力情報を量子リザバーで非線形かつ高次元に変換し、その後に線形回帰などの簡便なスキームで学習を行うという手法である。少ない学習パラメータと、ダイナミクスによる高速処理が利点で、時系列データ解析などに有望視されている。
量子的なリソースの中でも、非マルコフ性は量子系の長期的な記憶を司るリソースとして知られており、量子リザバーコンピューティングにおいて非マルコフ性が有効活用できると期待されている。さらにノイズのある量子系においては、非マルコフな散逸は恣意的に導入せずとも、リザバーとして用いる量子システムの自然なダイナミクスから自動的に導入される場合もある。このような点から、量子リザバーコンピューティングにおいて非マルコフ性を精密に扱い、性能評価・最適化することは重要である。
本プロジェクトでは非マルコフな量子開放系のダイナミクスを用いた量子リザバーコンピューティングのシミュレーション・最適化を行う。複雑に絡み合う多時刻相関から生まれる記憶特性と、量子ダイナミクスが生むリッチな非線形性を解析・最適化し、様々な時系列タスクに対して汎用的に用いることのできる量子リザバーコンピューティングモデルを開発する。
リザバーコンピューティングとは、物理系のダイナミクスを計算プロセスに活かす新原理の計算スキームで、
深層学習などと比べて圧倒的に学習コストが低いという利点があります。量子リザバーの提案は以前からありましたが、本プロジェクトは、これに新たに非マルコフの構造を入れて情報処理能力を向上させ、さらにシミュレーョン環境を構築するものです。量子リザバーのポテンシャルを深化させ、実用に足る新しい計算システムの構築を狙うとともに、新しい物理の発見にも繋がり得る本プロジェクトが本当に楽しみです。
2025年5月28日
2025年度採択プロジェクト概要(佐々木・古賀PJ)を掲載しました。