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2025年度未踏ターゲット事業(量子コンピューティング技術を活用したソフトウェア開発分野)採択プロジェクト概要(佐々木・古賀PJ)

公開日:2025年5月28日

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 山本 直樹(慶應義塾大学 量子コンピューティングセンター センター長/理工学部 物理情報工学科 教授・博士(情報理工学))

2.採択者氏名

  • 佐々木 大輝(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻)
  • 古賀 諒介(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻)

3.採択金額

  • 3,960,000円

4.プロジェクト名

  • 非マルコフ量子開放系リザバーコンピューティングの有効性検証と最適化

5.応募部門

  • ベーシック部門

6.応募枠

  • 通常枠

7.関連Webサイト

  • なし

8.申請プロジェクト概要

量子リザバーコンピューティングは、量子システムを計算資源として利用する機械学習の手法である。入力情報を量子リザバーで非線形かつ高次元に変換し、その後に線形回帰などの簡便なスキームで学習を行うという手法である。少ない学習パラメータと、ダイナミクスによる高速処理が利点で、時系列データ解析などに有望視されている。
量子的なリソースの中でも、非マルコフ性は量子系の長期的な記憶を司るリソースとして知られており、量子リザバーコンピューティングにおいて非マルコフ性が有効活用できると期待されている。さらにノイズのある量子系においては、非マルコフな散逸は恣意的に導入せずとも、リザバーとして用いる量子システムの自然なダイナミクスから自動的に導入される場合もある。このような点から、量子リザバーコンピューティングにおいて非マルコフ性を精密に扱い、性能評価・最適化することは重要である。
本プロジェクトでは非マルコフな量子開放系のダイナミクスを用いた量子リザバーコンピューティングのシミュレーション・最適化を行う。複雑に絡み合う多時刻相関から生まれる記憶特性と、量子ダイナミクスが生むリッチな非線形性を解析・最適化し、様々な時系列タスクに対して汎用的に用いることのできる量子リザバーコンピューティングモデルを開発する。

9.採択理由

リザバーコンピューティングとは、物理系のダイナミクスを計算プロセスに活かす新原理の計算スキームで、
深層学習などと比べて圧倒的に学習コストが低いという利点があります。量子リザバーの提案は以前からありましたが、本プロジェクトは、これに新たに非マルコフの構造を入れて情報処理能力を向上させ、さらにシミュレーョン環境を構築するものです。量子リザバーのポテンシャルを深化させ、実用に足る新しい計算システムの構築を狙うとともに、新しい物理の発見にも繋がり得る本プロジェクトが本当に楽しみです。

更新履歴

  • 2025年5月28日

    2025年度採択プロジェクト概要(佐々木・古賀PJ)を掲載しました。