デジタル人材の育成
公開日:2025年6月25日
本プロジェクトは3Dプリントにおける、軽量性、製造時間、部品強度という3要素のトレードオフを一挙に解決するソフトウェアを開発する。
現在、日本国内外含め、さまざまなロボットコンテスト(ロボコン)が存在する。それらのロボコンに広く共通する制限として、重量制限がある。ロボットにはバッテリやモータなど重い部品がたくさんあるため、それ以外の外装パーツや部品同士の固定パーツなどは可能な限り軽くしつつ、丈夫で壊れないことが求められる。近年のロボコンではこうしたパーツの製造で、複雑な三次元形状の機械部品を自由に製造できるために3Dプリンタが活用されている。一方で、3Dプリンタでの造形には外壁部分と内部の格子状の充填部分(インフィル)という構造があり、内部格子を密にすれば強度は高まるが重量と製造時間が増し、疎にすれば軽くなり素早く製造できるが壊れやすくなるというトレードオフが存在する。さらに、従来の3Dプリントでは内部格子の密度は調整できるものの、パーツ全体で一様な密度になってしまうため、力がほとんどかからない部分にも無駄に材料を使用してしまい、不要に時間がかかり重量も増加をしてしまうという問題もある。
本プロジェクトではこれらの問題を解決するために、パーツの使用時の固定方法や力のかかり方を考慮した3Dプリントの前処理ソフトウェア(プリプロセッサ)を開発する。具体的には応力解析によって応力が低い部分には疎、応力が高い部分には密な内部格子を生成することで、材料を効率的に使用し製造時間を短縮しながらも、必要な強度の維持を実現する。さらに、本手法による軽量性・剛性・製造時間の両立を、ロボットコンテストに限らずあらゆるロボット開発や機械部品の製造にも応用できるようにすることを目指していく。
従来の3Dプリント工程では、部品全体に対して一様な内部充填(インフィル)密度が設定されるため、力のかからない部分に対しても不要な材料が使われてしまい、プリント時間とフィラメントの無駄が生じていた。これに対し本提案では、CADデータに対して応力解析を行い、部位ごとの力の分布に応じてインフィル密度を効率化することで、材料を節約しながら必要な剛性を確保し、プリント時間の短縮と軽量化を両立することを目標としている。とりわけ重量制限や耐久性が求められるロボットコンテストをターゲットとし、競技参加者がより効率的かつ短期間に部品製造できることを目指している。
ロボットコンテストに出場するチームが現場で部品を3Dプリンタで製造する際に、このソフトウェアのプリプロセス処理を施すことが一般的になれば、単なる個人の便利ツールにとどまらず、多くの人が使うソフトウェアに発展する可能性が高い。また、ロボットコンテストに限らない一般の3Dプリンタのユースケースにも広く展開することできれば、3Dプリンタで消費するフィラメントの無駄、時間の無駄、電気の無駄をなくすことができることも高く評価した。二酸化炭素排出量を減らすSDGs目標にも貢献することができる。
応力解析の精度や、熱耐性素材の選定、積層方向を考慮した解析、対象形状への汎用性、また誰でも扱えるようなインタフェース設計などいくつかの課題があるが、それらの改善を進めることで、ロボットコンテストのみならず、3Dプリンタを使う全ユーザが使うソフトウェアとして発展することを期待している。
2025年6月25日
2025年度採択プロジェクト概要(谷口PJ)を掲載しました。