デジタル人材の育成
原田 康徳(日本電信電話株式会社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)
チーフクリエータ
平藤 燎(東京大学 教養学部理科二類)
アンドリュー・タネンバウムによる著作「オペレーティングシステム-設計と理論およびMINIXによる実装」では、UNIX風OSであるMINIXの設計と実装を通じてオペレーティングシステムやその周辺について実践的に学ぶ事ができる。「MINIX本」との愛称で特に大学の教科書として広く世界で読まれ、リーナス・トーバルズがLinuxを開発する動機にもなった。
本提案では、1980年代に一世を風靡し誰もが知っている任天堂の家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータ(以降、ファミコン)に着目し、それを再現するエミュレータを実際に開発しながら、コンピュータの動作原理や画像・音声処理を気楽に、しかも「わくわく」しながら学ぶことができる、「ファミコン版MINIX本」ともいうべきウェブサイトを作成する。さらに、非常にシンプルなビジュアル回路シミュレータを開発し、これを用いてエミュレーションで実装していたCPUを、実際の回路を読み解きながらシミュレーションで再実装する過程を体験できるようにし、学習者に対してソフトウェアとハードウェアの両方を垣根なく、ソフトウェア上のみでシームレスに理解を促すことを可能にさせる。
高レベルなAPIが充実してきたことで、一見すごいシステムを比較的簡単に作ることができるようになった。しかしそれがゆえに、コンピュータがどのように動いているのか、という地に足がついた基本的なところが遠のいてしまった。こういう提案が若い人から出てくるのは心強い。力のある人なので、独善的にならないように気をつけて、教育の専門家などの意見を聞きながら、世の中に本当に役立つようなものに仕上げていって欲しい。