デジタル人材の育成
近年、ウェブ検索をはじめとして、論文、商品、ニュースといった様々なコンテンツを検索サービスから入手することが一般的となっている。しかし、現状の検索エンジンはユーザの検索意図に合った検索結果を返すことは困難である。例えば、異なるユーザが同じクエリを入力した場合、ユーザの求める検索結果はユーザの興味や嗜好によって当然異なる。また、同じユーザが同じクエリを入力したとしても、その時の検索タスクによって求める検索結果は多岐にわたる。特に、検索エンジンから受け取った検索結果を閲覧しているときに、「もっとこういった結果が欲しい」とか、「こういう結果はいらないといった検索意図が表出することが多い。このように、ユーザが検索時に入力するクエリのみを用いて、検索エンジン側がユーザの検索意図を把握することは容易ではない。
検索エンジンがユーザの検索意図を把握することが困難な原因のひとつとして、検索結果閲覧ページとユーザとのインタラクションの少なさが考えられる。現状ではユーザはクエリを入力した検索エンジンに検索意図を伝達できないが、複雑なクエリを作成することはユーザにとって敷居が高い。
そこで、本プロジェクトではユーザの検索結果閲覧中に、シンプルなインタラクションを行うだけで、検索結果をユーザの意図に合わせて再ランキングする仕組みを実現する。提案するシステムは強調・削除という二つのインタラクションを検索結果の閲覧中に導入する。ユーザは検索結果中のキーワードに対して削除操作を行うことにより「検索結果のこの部分がいらない」、強調操作を行うことにより「このような検索結果をもっと上位に表示して欲しい」といった意図をシステムに伝えることができる。システムはユーザの明示的な強調・削除操作に応じて検索結果の再ランキングを行う。この仕組みによりユーザは柔軟に検索結果を再ランキングすることが可能となる。
この研究開発は、Googleなどの検索結果の中で、これは要らない(「削除」)とか、この属性は大事なので優先させたい(「強調」)などを指定することによって、自分の期待する検索結果向けてチューニングし、再ランキングしようとする、非常にシンプルなアイデアに基づいている。
オッカムのカミソリではないが、物事はシンプルなアイデアこそ、その威力を発揮しやすい。このアイデアの他に、異なる検索サービス、たとえば、Amazonと価格.comの二つの検索結果の統合も考えている。こういった方法を積み重ねることによって、より利用者の希望に近い検索結果となる可能性が高まる。基本的な考えは非常に良く理解できるが、たとえば、複数の項目を共に優先させたいときにどのようにしているかなど、これから詰めるべき課題も少なくない。また、こうして得られた新しい再ランキングインタフェースをどのように評価し、アピールしていくかも課題であろう。
山本岳洋君の活躍を大いに期待したい。