デジタル人材の育成
公開日:2025年6月30日
超高齢社会で増加する心不全患者の再入院は、医療費の増大だけでなく、医療現場の逼迫の主因となっている。そのため、心不全の悪化予防に向けた対策は喫緊の課題である。“いつでも・どこでも・誰でも”自身の病態を定量的に把握したいという患者ニーズがあるにもかかわらず、心不全悪化の最重要サインである肺での体液貯留(胸水など)の診断は、レントゲン等の画像検査や植込み型デバイスによるインピーダンス測定に大きく依存している。このため、在宅での簡便な評価手段が不足しており、心不全患者の再入院率は依然として35%を超える。在宅での早期評価は、心不全悪化の早期診断と再入院抑制に非常に高い効果が期待される。本プロジェクトでは、体表からの多周波インピーダンス測定とAIを用いた予測システムにより肺での体液貯留を高精度に推定する、患者自身が使用可能なモニタリングシステムを開発する。これにより、日常的なセルフチェックを実現し、心不全悪化を事前に察知することで、将来的に再入院率の30〜50%低減を目指し、安心した日常生活を実現する。
本プロジェクトは、インピーダンス測定技術と機械学習を融合し、家庭で非侵襲的に心不全や肺の状態を推定できる革新的なシステムの実現を目指すものである。従来は病院でのX線撮影が必要だった胸水の評価を、多周波インピーダンス解析により自宅で高精度に行える点が高く評価された。高齢化に伴い増加する心不全患者の在宅ケアの質向上に寄与するだけでなく、医療機関との連携による大規模データ収集を通じて個別最適化も目指しており、患者の能動的な健康管理を促す社会的意義も大きい。医療分野のデジタルトランスフォーメーションを推進する独創的な取り組みとして、今後の発展性も高く、採択に相応しいと判断した。
2025年6月30日
2025年度上期採択プロジェクト概要(野瀬・松田・松井・猪口・安本PJ)を掲載しました。