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未踏IT人材発掘・育成事業:2019年度採択プロジェクト概要(太田 PJ)

最終更新日:2019年6月28日

1.担当PM

  • 藤井 彰人(KDDI株式会社 理事 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部長)

2.採択者氏名

  • 太田 悠自(東北大学 医学部 医学科 学部5年)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 能動学習に対応したデジタル病理画像アノテーションソフトの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

病理診断とは、患者の体から採取した病変組織を固定・染色した得られた病理標本を顕微鏡で観察し病気の種類や進行度合いを評価するプロセスである。病理標本の中には104~108個の細胞が含まれており、特定の細胞の有無(がん細胞など)や組織構築(細胞の集まり方)などを評価して病理診断を下す。病理診断により治療の方針が決定されため、このプロセスは臨床現場において必要不可欠である。

しかし、本邦の人口あたりの病理医の割合は米国のそれの5分の1であり、また病理診断手法の多様化などを背景として近年の病理診断件数は上昇し人手不足が深刻化している。そのため、深層学習をはじめとした人工知能技術を利用した病理診断の一部自動化・効率化プロセスの導入が期待される。

病理画像への深層学習による画像認識モデルの応用例として、特定の細胞検出による診断補助が提案されている。例えば、リンパ節に浸潤するがん細胞を検出できるモデルが報告されている。このモデルは、病理標本の中に存在する無数の細胞の中からがん細胞を検出することを目的としており、実用化により病理医の負担軽減と診断精度の向上が期待できる。このような細胞検出モデルでは、教師データとして分類対象とする細胞の画像データを用意する必要がある。

深層学習を用いたモデルのうち特に医療応用の分野では、教師あり学習が用いられることが多く、一般に安定した性能を発揮するためには大量のデータが必要である。細胞検出モデルに教師データを大量に用意するためには、数十から数千枚の病理標本を準備し、それぞれの標本について顕微鏡を用いて関心のある特定の細胞を数百から数万個探し出してアノテーションをつける必要があり、病理医の負担が大きい。

この現状を踏まえて、本プロジェクトでは能動学習により効率的にアノテーションを行うことを可能にするソフトウェアを開発する。本システムは、細胞検出モデルをはじめとする自動病理診断モデルの教師データ作成を簡単にすることで、優れた自動診断を実現し患者の利益をもたらすとともに医療ITにおいて新しいシーズを提供する。

7.採択理由

本提案は、病理診断の自動化のための、AIの教師データとなる細胞画像などのアノテーションデータを作成したい病理医・医者向けのソフトウェア開発プロジェクトである。病理診断に深層学習を適用するためには、大量の教師データが必要となるが、病理医にデジタル病理画像のアノテーションツールの利用を通して、教師データ生成を実現しようとしているところが特徴である。医学部に在籍し、現場ニーズと制約を深く理解してのチャレンジであり、適用分野を拡大させることも可能であり、本未踏プロジェクトでの活動を通して、医療分野における未踏人材へと成長して欲しい。

更新履歴

  • 2019年6月28日

    2019年度採択プロジェクト概要(太田PJ)を掲載しました。