デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 情報理工学院 准教授)
我々は日々、他者との面と向かったコミュニケーションによって様々な情報を受け取っている。コミュニケーションでは、自分が知らなかった情報を得たり、また相手に自分が知っている情報を伝えたり、というような情報伝達手段としての側面は重要である。しかしそれ以上に、コミュニケーションを通した相互理解や自己の承認感を得ることこそが、コミュニケーション欲求を掻き立てる。一方で、コミュニケーションにおける行き違いは人間関係を壊すことにもつながりうる。相手が怒っていたり、もう話に飽きていたりするのに自分の話を続けてしまい、相手の気分を害してしまう、という経験は誰しもあるだろう。このように、他者の心情の推定は人間にとって非常に重要な意味を持つにも関わらず、とても曖昧な形でしか推測することが出来ない。
本プロジェクトでは、このコミュニケーションによって生じる心理的作用の不可視性に着目し、人に紐付けられたメディア情報、及び過去の対話履歴から、コミュニケーションによって生じる心情変化を拡張現実感として付与するシステムを開発する。そのために、画像や音声、言語からリアルタイムで心情認識を行いながら、同時にそれらを統合するようなモデルを構築する。本システムにより、これまで人間が気づかなかったコミュニケーションの新しい楽しさが発見され、より良い相互理解を促すことが期待される。
人と会話する際に、相手の映像・音声を元に会話内容や感情を推定して、それに応じた情報を提示してくれるツールを開発する提案である。利用者は、例えばヘッドマウントディスプレイを装着する。
推定それ自体も、使えるツールとしての提供もチャレンジングだが、クリエータ達の腕と意欲に期待している。