デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2009年度下期採択プロジェクト概要(筧PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

安村 通晃(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    筧 豪太(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科)

  • コクリエータ
    なし

3.未踏プロジェクト管理組織

  • 株式会社ピコ・ナレッジ

4.採択金額

  • 3,000,000円

5.テーマ名

  • 弾力性と柔軟性をもつデバイスを用いた新しいUIの開発

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請テーマ概要

弾力性・柔軟性があるクッション、ぬいぐるみを手にしたときに人が感じる「触っていたい」という衝動を積極的に利用した入力インタフェースの開発及び、そのデバイスを効果的に利用したアプリケーションの開発を行う。

コンピュータへの入力装置としてはマウスやキーボードといった古典的なデバイスが今も主流である。それらが登場してから長い間廃れずに使われ続けているのは、コンピュータの操作との親和性が非常に高いからであろう。そのため新しいデバイスでは利便性以外で勝る部分を提案する必要があるだろう。本提案では強みを、人の情動に訴えかけ、「使いたい!」という気持ちを与えるという点においた。

本提案と関連する研究として、ロボティック・ユーザーインタフェース(RUI)がある。これは、ロボットをコントローラに用いるインタフェースで、近年盛んに研究が行われている。このひとつの例としてクマのぬいぐるみの中にロボットを仕込み、それをゲームのコントローラに用いるものがある。形状を人の形にすることでユーザーは自己投射をすることができ、加えて、ゲーム内のキャラクタをぬいぐるみと同じ形にすることで高い没入感を提示することができる。

RUIはユーザーに「使いたい」という気持ちを誘発させられるが、特定のアプリケーションの操作にしか向かないという欠点がある。そこで、今回提案するのは弾力性・柔軟性がある素材で包まれたクッションのようなデバイスである。このような素材で包まれたクッションを手にしたとき人は目的も無く触り続けていることがある。このように「なんとなく触る」のはクッションの気持ちよさによるものだろう。本提案ではこのなんとなく触る行為をセンシングし、それを入力とするデバイスと、本デバイスがコントローラとして汎用的に使えるということを示すアプリケーションの開発を行う。

8.採択理由

柔らかい球の中にへこみを検知する部分をもうけた、いわば3次元マルチタッチUIの提案と試作。弾力性・柔軟性のあるものを触ること自体、心理学者ウィニコットの「移行対象」として興味深いが、それに加えて単に触るだけではなく、インタラクションを可能とした点が新しい。すでに、簡単な試作品はできていて動いている。モノ自体の完成度を高めるだけではなく、弾力性・柔軟性のある3次元物体を触った時のインタラクションの種別と機能の割当ての検討と、新たな応用を考案した上で、アピールできるデモとして仕上げて欲しい。すでに、具体的な応用をいくつか想定しているが、デモの善し悪しが開発の重要なポイントとなる。こういったUIの今後の展開が広げられるような開発を望みたい。大いに期待しているので、思う存分開発を行なっていって欲しい。