デジタル人材の育成
筧 捷彦(早稲田大学 理工学術院基幹理工学部 情報理工学科 教授)
チーフクリエータ
内平 博貴(明治大学大学院 理工学研究科 新領域創造専攻 ディジタルコンテンツ系)
コクリエータ
なし
本提案では電子楽器のメタファーを取り入れる事による新しい書道表現システムの開発を行う。
今日、書家による書が雑誌や広告の題字として表紙を飾る事も珍しくなく、そのデザインが紙以外の媒体に取り入れられる事も多い。字本来の形に囚われずに新しいデザインとして表現するもの、アルファベットを組み合わせる事で漢字のように表現するものなど新しい表現も多く見られる。デザインとしての書は日々の生活のいたる所で広く親しまれている。
近年は情報技術の発達により、誰もが容易に動画や音楽などを制作、発表できる環境が整ってきており、人々の創作意欲の高まりもみられる。これらの背景から今後、書をデザインとして取り入れ創作活動をしたいという需要も高まると考えられる。
しかし、書をデザインとして取り入れる事は容易な事ではない。筆を扱い思い通りの形状に描き上げる事でさえある程度の技術の習得を要するうえ、さらに気に入った書の力強さや擦れ具合など、思いのままの線を再現しようとなると極めて困難である。現に、今日題字などで見られる書の多くは書家による書をそのまま取り込んだものであり、書道に精通した一部の人しか書のデザインを出来ていないというのが現状である。
そこで本提案では表現の困難な書のデザインを電子楽器のメタファーを取り入れる事で容易にするシステムを提案する。具体的には既存の楽曲を使って作曲を行うサンプラーのように、モデルとする書から特徴を取得し描画する機能や、シンセサイザーで音作りをするように、一筆を生成する機能を実装する。さらにこれらのメタファーを取り入れる事によって、最終的には既存の書道にはない新しい書道体験を提案したい。
電子楽器のサンプラーをメタファーにして、書をサンプリングしたものを使って書を制作・編集するソフトウェアを作るというプロジェクトである。書のアマチュアにプロ並みの書のデザイン能力を提供したいという。
今回は、シンセサイザメタファに対応する部分を組み込んだものを未踏ユースの開発期間中に公開するのを目標としている。すでに基盤となる部分は実装し終えているし、物理モデル音源に対してサンプラー音源が圧勝しているように、本アプローチも圧勝する可能性がある。
シンセサイザに限らず電子楽器から借用できるアイディアをいくつも暖めているので、大きく花を咲かせてくれるように見守っていきたい。