デジタル人材の育成
筧 捷彦(早稲田大学 理工学術院基幹理工学部 情報理工学科 教授)
チーフクリエータ
町野 明徳(東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻)
コクリエータ
黒田 康浩(東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻)
あらゆる情報がそこに存在しているかのように思えるようになった今日のWebであるが、教育や研究に不可欠な「数式」をWeb上で表現する方法はいまだ非常に限られている。例えば通常のテキストで、s=∫[0→2π]√{e^(2aθ)+a^2e^(2aθ)}dθといったように無理矢理表現したり、数式をPNG形式等の画像ファイルに変換してHTML文書中に埋め込んだりしているのが現状である。
数式を画像化して埋め込む手順は簡単なものではなく、数学を勉強する高校生など、一般的な人が行えるものではない。例えば、高校生が勉強内容を友達や先生にメールで質問しようと思っても、それが数式が含まれる質問であれば、現状のメールシステムでは不可能なのである。また、画像化されてしまった数式からは、数式としての意味情報が失われており、その結果として検索等の電子的な操作の対象にもなり得ない。
そこで本プロジェクトでは、数式を画像ではなく、数式としての意味を保った形(MathML)で簡単にWeb上で表現できるように、新しい数式エディタ『Suim』を開発する。Suimを用いることで、IME(MS-IME、ATOK、ことえり等)で日本語を入力するくらい簡単に、数式をWebブラウザ上で入力することが可能になる。
Suimは様々なシステムと連携可能な入力システムであり、Suimのアプリケーションの1つとして、TeX文書作成・共有Webアプリケーションもプロジェクト期間中に開発する。
Webブラウザ上での数式入力、表示システム。そのポイントは、日本語FEPにまねて、数式を表す"かな入力"風の入力方式を用意することでキーボード入力だけで複雑な数式が入力できるようにするところにある。入力された数式は、MathMLに変換する。
MathMLに対応したブラウザなら印刷書式で数式が表示できるし、数式の検索もできるようになるところがうれしい。東大のビジネスコンテストに入賞していて、特許の権利を東大が持っている。すでに動いているものをもとに未踏ユース期間中にきちんと仕上げて、事業化への一歩を踏み出したいという。4月から休学して打ち込んでいる。利用者が多数見込まれるソフトウェアであり、ぜひとも事業化に耐えるレベルにまで洗練し尽くしてほしいし、そうできると期待している。