デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2014年度採択プロジェクト概要(濱中PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    濱中 敬人 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 三味線演奏の総合支援アプリケーション

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

近年、Web上の動画サイトで三味線を演奏する動画が人気になったこともあり、三味線について興味を持つ人々が、国内外を問わずある程度の広い範囲に相当の規模でいると考えられる。その一方で、実際に三味線を演奏してみようとすると、楽器自体の価格の高さ以外にも、記譜法の特殊性、音楽的特徴、稽古場が見つからないことなど、いくつもの障害がある。
そこで本プロジェクトでは、調弦・演奏姿勢のチェックや譜面の翻訳、参考音源の再生など、三味線を初めて触る人が一人でも練習できるようにする機能を有する、練習支援アプリケーションを開発する。また、初心者がステップアップした際にも使えるように、演奏に付随する譜面スクロールや演奏評価、譜面編集・記録・共有機能なども搭載する。
本アプリケーションは、楽器の演奏時に手元に置く使われ方を想定し、タブレット端末上のアプリケーションとして開発する。また、本アプリケーションの使われ方や世界的な展開を考慮した、三味線の統一的、普遍的な楽譜表現についても模索していく。この楽譜表現については、最終的には三味線だけに特化せず、琴などの他の伝統楽器にも適用対象を広げられることを目標とする。
本アプリケーションによって、三味線の経験者に対しては、より個人の要望にあった演奏活動(暗譜練習をしたい、採譜・編曲をしたい等)を可能にさせることで、その先にはWeb上に演奏動画や作成された譜面がアップされるなど、三味線の露出の機会の増加と、さらには三味線演奏者や三味線音楽に親しむ人々が増加するなどの効果が期待される。

7.採択理由

日本の伝統楽器である三味線の演奏を練習しようとする初心者が、特殊な記譜法を持つ三味線楽譜を見ても演奏できない問題を解決し、経験者もより一層円滑に演奏できるようにするために、多様な練習や演奏の支援機能を持つアプリケーションを実現する提案である。楽譜の理解支援や、楽譜には記載されない情報の補足、スクロール表示や演奏評価、譜面編集・記録・共有機能など、三味線の演奏を総合的に幅広く支援していくことを狙っている。
濱中君は、自分自身で三味線の演奏に約十年間取り組んできており、その文化へ真剣に貢献したいと考えている点が素晴らしく、既に演奏音を入力として各音符と対応付けて楽譜をスクロール表示する部分まではプロトタイプシステムを作っている。今後は未踏の機会を最大限に活かし、提案内容だけに限定せずに挑戦して、大きな飛躍を遂げてくれることを期待したい。例えば、三味線の楽譜や通常の五線譜ですら、計算機が普及するよりもはるか以前に、音楽の演奏方法を記録するために発明された一手段に過ぎない。計算機を活用した演奏方法の究極の伝え方はどうあるべきか、三味線に限定せず伝統楽器全般をサポートした未来のワールドワイドな楽譜形式を探求するぐらいの野心を持って取り組んで欲しい。幅広い活躍が期待される。