デジタル人材の育成
公開日:2025年11月10日
デジタル基盤センター
イノベーション部
未踏実施グループ

たけうち いくお
竹内 郁雄
東京大学 名誉教授
長い間成長の止まっている日本にとって一番必要なのは、萎縮平均の天井を突破する夢があり、それに向かって動くことのできる人材です。未踏は、人々が嬉しくなるようなIT関連の技術を、楽しく楽に、ガッツをもって開発できるような「楽ツ!」を持った人を探しています。
何かを生み出したいという拘りや動機は楽ツ!の源です。難しそうに聞こえるかもしれませんが、一緒に事業に参加した未踏の仲間たちは分野の違いをものともせず、お互いに切磋琢磨して大きく育ってきました。大の大人も寄ってたかって支援します。とがった発想と技術で、自分の未来と日本の未来を切り拓きたいという挑戦をお待ちしています。
竹内自身も、若くて生きのいい方々の楽ツ!を栄養にして、楽しくなりたいと思っています。

なつの たけし
夏野 剛
近畿大学 特別招聘教授 情報学研究所長
日本は世界で最高のITインフラを持ち、教育レベルも高く、また個人金融資産も2,000兆円以上、上場企業の内部留保も500兆円以上と十分なおカネもある。にもかかわらず、世界でのプレゼンスは小さい。それはひとえに新しい才能の羽ばたきがアメリカや中国に劣っているからだと思います。だからこそ、いま若者に大きなチャンスを、新参者に多くの機会を与えたい。
日本の最大の課題は、どうやって優秀な才能をさらに伸ばしていくか、です。平均値の向上はもう要らない。世界で通用するソフト、世界で例のないビジネスモデル、皆の想像を上回るサービス。
世界があっと驚くような利便性をもたらしてくれるアイディアと技術を待っています。
2026年度は、下記7名の方が担当予定です。

いなみ まさひこ
稲見 昌彦
東京大学 総長特任補佐 先端科学技術研究センター 副所長・教授
AIやロボットが人間の能力を超える局面が増えるなかで、私たちは何を拠り所に新しい価値を生み出していけるのでしょうか。
私は最近、仕事の合間に行ったVibe Codingを通じて、思いついたアイデアを即座に形にし、所属する先端研内のサービスツールを自作して先生方に共有しています。自分の思考を加速し、コミュニティを駆動するエンジンとしてのソフトウエア開発の楽しさを再発見しました。
そんな経験から気づいたことがあります。AIは与えられた目的を効率的に達成する一方で、「なぜそれをやるのか」「何が面白いのか」といった根源的な問いを立てることは(現時点では)苦手なようです。我々人間は未知のものに心を動かされ、新しい目的や価値を創り出すことができる。つまり、好奇心は方向を定める羅針盤であり、モチベーションは行動を継続させる原動力なのです。そしてその二つがポストAI時代のクリエータとして重要な素養なのです。
台湾の研究者との対話の中で、こうした概念を仏教経典『地蔵菩薩本願経』に由来する「起心動念」という言葉で表せると知りました。もともとは「心に念が生じる一瞬のはたらき」を指し、どんな思いの立ち上がりも善悪や因果の起点になるという教えです。現代的に言えば、心が動き、意志が芽生えるその刹那にこそ創造の源泉があるということです。
未踏では、そんな「起心動念」から始まる挑戦を歓迎します。まずは、自分と誰かが楽しくなるような提案を期待します。採択後には、その芽を未来の価値へと育てる作戦を、共に考えていきましょう。

おか みずき
岡 瑞起
千葉工業大学 変革センター 主席研究員
目的を定め、一直線に効率的に到達するように励む。そんな効率重視の価値観がAI技術の発展によってさらに加速しています。しかし、本当にチャレンジングな課題には、一直線に解決へと至ることはほとんどありません。辿り着く方法の分からない課題に対しては、まず混沌とした中に飛び込んでチャレンジするしかありません。そして、その探索の過程で出会うセレンディピティをつなぎ合わせていくうちに、振り返ってみれば課題への解決策が見つかっているものです。
そんなチャレンジをサポートし、後押しするのが未踏事業です。もちろん、チャレンジしたいというその思いがあることが全ての出発点です。報われるかどうかわからないけれど、これを作りたい、作らずにはいられない、どうしても挑戦したい、そんな情熱を注げるテーマを持つクリエイターやエンジニアからの応募をお待ちしています。

おちあい よういち
落合 陽一
メディアアーティスト/筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター センター長
応募テーマの作り込みはもちろん重要な要素ですが、テーマ以上に面白い人材になりそうかどうかを審査します。集中力と行動力と情報科学に立脚した深い世界認識・行動哲学・探究心が感じられることを大切にします。散らかったポートフォリオでも構いませんが、何かに対する強い熱量を感じさせる提案をお待ちします。
近年はコンピュータが安価になり、どこでもソフトウェアを開発できるようになってきました。ですので、やるべきことはすぐ始めましょう。「未踏で作るっていうけど、どうして君は始めてないの?」という質問をしないでよい提案をお待ちします。逆にいうと、「未踏で作らなくても君は作れているけれど、なんで未踏でやるんだっけ?」という質問に対して深い答えが返ってくることを期待します。
僕自身も未踏のクリエータでしたが、やる気ある人々に囲まれていくことはとても深い喜びがそこにありました。未踏のクリエータの頃から16年経ち、デジタルネイチャーの研究室を始めて11年経ち、多くのやる気ある若い人々に囲まれて楽しい日々を送ってくることができました。近頃の目標は、技術が雪崩のように進化する中で日々を楽しみながら、僕もモノを作り続けるために手をひたすら動かすことです。
ぜひこれは僕にはできないなぁと思わせるような、感動できる素晴らしい才能を見せにきてください。僕の仕事はそんな感動をより増幅して社会に共有することだと考えています。計算機による新しい自然をより味わい深く、より歓びに満ちたものにしていきましょう。
未踏の人材が作るモノは感動できる! この喜びを共有しよう!

そがわ けいすけ
曾川 景介
newmo株式会社 CTO
基本的にあらゆるテーマやジャンルの提案を採択します。身近な問題の解決から社会の課題の解決まで、幅広く採択したいと考えています。ビジネスやスタートアップを考えているテーマでの応募も歓迎します。
誇れることではありませんが、私はこれまでたくさんの失敗を積み重ねてきました。誰もが失敗するだろうというような困難な提案であっても、少なくとも意味のある失敗ができるものであれば採択したいと思っています。未踏期間中に実現できなくても、5年、10年かけて最終的に何かに辿り着く可能性がある提案も採択したいと考えています。
最後に、何の課題も解決しないし、何の役に立つのかわからない、それでもクリエータの皆さんが情熱を持ち、熱中し、熱狂するような提案も大歓迎です。皆さんの自由な発想に期待しています。

たけさこ よしのり
竹迫 良範
神山まるごと高専 デザイン・エンジニアリング学科 教授
生成AIネイティブ世代に向けた新しいプログラミング教育ツールの社会実装や、セキュリティ技術・低レイヤー系など幅広い提案を歓迎します。その中でも、ライフワークとして継続的に取り組めるテーマで、筋の良い「車輪の再発明」は大歓迎です。学習目的のために車輪の再発明をすることもありますが、未踏ではそれ以上の価値が求められます。プロジェクトの採択には、革新的なテーマ設定ができているかどうか、それらを解決できる技術力を本人たちが有しているか、またそれらを自分たちで取り組む競争優位性があるか、そしてプロジェクト期間終了後の将来性があるか、プロジェクトが失敗したとしても社会への新しい学びは得られるか、など複数の観点から多面的に評価を行います。
AI前提の時代だからこそ、アプリケーションを実装する際にも、低レイヤーの技術にも精通し、下から上まで一気通貫で自分の手を動かしてモノづくりしていることが競争優位性になり得ます。物事の原理原則を理解した上で型を上手に破り、自分の新しい型を作る、そんな試行錯誤の中で新しい技術革新が生まれることを期待しています。成功するまで諦めずに継続することも大事、自分で一からコードを書くのが大好きで、プログラミングに熱中できる情熱も重要です。その結果、世界に新しい価値を一つでも提供することができれば、胸を張って未踏の領域に踏み込めたと言えるでしょう。
車輪の再発明であっても大歓迎、実装するのが大変でも自分が情熱を持って続けられる、内発的動機に基づいた提案を待っています。

たなか くにひろ
田中 邦裕
さくらインターネット株式会社 代表取締役社長
私が大切にしているのは、「やりたい」という気持ちです。
どんなに技術力があっても、どんなに環境が整っていても、その根っこにある“やりたい”という熱がなければ、何も始まりません。
でも、その思いさえあれば、どんな挑戦もきっと形にできる。私はそう信じています。
未踏は、その“やりたい”を思いきり試せる場所です。
作りたいものを自由に作り、挑戦したいことに全力で取り組むことができます。
プロジェクトマネージャーやOB・OGが支え、全国から集まった仲間たちと共に刺激し合える環境があります。
多くの人が言います。
「地元ではすごいと言われていたけど、未踏には本当にすごい人がいる」と。
最初は圧倒されるかもしれません。けれど同時に、自分の考えや技術を認めてもらえる経験もあり、自信を育てていく人がたくさんいます。
未踏は、そんな刺激と成長が交わる場です。
プロダクトを完成させることも大事ですが、それ以上に、この期間で得られる体験や仲間との出会いが、何よりの財産になります。
あなたの中に「やりたい」という思いがあるなら、ぜひ未踏に来てください。
その熱が、ここで新しい未来をつくります。

よねざわ ともこ
米澤 朋子
関西大学 総合情報学部 教授
爆発的に創発する細胞になろう!新しいフレームワークのコアを作ろう!
私たちは,クリエータの皆さんの未踏テーマという細胞を,どんどん増殖させて高めていくという使命を負っていると思っています.かつて私も未踏クリエータでしたが,当時PMや仲間や同期にそうさせてもらったように,皆さんの未踏テーマたちが変異して新たな力やバリエーションを生み出しつつ,それらが互いに相互作用していく特別な開発期間を,ワクワクし,時に苦しく,欲張り上等で満喫してほしいと思っています.
アイディアを出しっぱなしにするのではなく,常に誰もやったことがない未踏性を追求し続けアップデートをすることが「創造」であり「磨き光らせる」ということだと思います.このチャレンジをしていきたいと思ってくださる方はどんどん応募してください!
未踏性には様々な意味がありますが,世界で初めて何かを見つけたり見出したりすることだけでなく,見出したものの可能性をどう活かすか,いかに多様な可能性を展開するか,こそが爆発的な創造のキーとなると考えられます.このような可能性の展開の先に,世の中の様々なシステムやフレームワークの転換があり,価値観の変革があります.ここまで見渡せるようになって,未踏期間が完了した後も,次世代牽引者として活躍してほしいです.
変わった発想を持っていると自負する人,ぜひ,夢の形を妄想してうっとりしてから,その独りよがりを大切にしながらも,客観的な意見にも向き合って,じっくり練り込み辛抱強く続ける根気をもって臨んでくれたらと願っております. 日常,製造,デザイン,創作,エンタテイメント,などのクリエイティブな領域の提案に加え,医療,介護,福祉,教育,といったエッセンシャルな領域にクリエイティブな発想を展開する提案,思考の果てにどこに着地するかわからないほど新規制が高い提案も,もちろん併せてお待ちしています.
2025年11月10日
2026年度未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャー一覧を公開しました。