デジタル人材の育成
公開日:2024年6月28日
3軸の3Dプリンタが広く用いられてきており、その3Dプリンタを動作させるためにはGコードを作るCAM(Computer Aided Manufacturing)としてのソフトウェア(以下、スライサー)が必要である。また、3軸の3Dプリンタでは、樹脂が下方に垂れることを防止するために、サポート材・インフィルを本来の造形物に追加して印刷する必要がある。
ここで、マシニングセンタのような、3軸を超える軸数を有する多軸の3Dプリンタが存在している。多軸の3Dプリンタは、5軸・6軸などを有しており、造形物に対して様々な姿勢にノズルまたは造形ベッドを制御することができるため、ノズルの下方に樹脂がない場合でも、あたかもノズルの下方に樹脂があるかのように樹脂を積層させることできる。そのため、サポート材・インフィルの追加印刷を不要とした造形が可能となる。また、3軸の3Dプリンタでは、Z(高さ)を変えながら水平面を積層していくため、層間剥離や、等高線がでてしまう問題がある。これらの問題も、多軸の3Dプリンタで造形することで解決することができる。
このように多軸の3Dプリンタには利点があるものの広まってはいない。その理由として、多軸の3Dプリンタ(鶏)が非常に高価で入手することができないことと、安価な多軸のスライサー(卵)が存在しないことがある。ともに安価なものが存在しないことによって、「鶏が先か、卵が先か」という問題が発生している。
私は、数十万~数百万円で購入できる安価な多軸の3Dプリンタを製作している。加えて、多軸の3Dプリンタ用の汎用スライサーを開発し、OSS化することで、多軸の3Dプリンタおよび多軸のスライサーともに安価で入手できるようにする。これにより、多軸の3Dプリンタに関する用途開発などの研究が始まり、多軸の3Dプリンタ利用が広がり始めると考えている。将来的には、多軸の3Dプリンタが今の3軸の3Dプリンタのように普及し、現在不可能な造形が可能になっていくと考えている。その実現に向け、本プロジェクトでは多軸3Dプリンタ用スライサーを開発する。
普通の3Dプリンタは、ノズルを前後、左右、上下の3軸方向に動かす。3軸に加えてノズルやテーブルを傾けるといった制御が可能な多軸3Dプリンタが現れている。しかし、現状、数千万円という価格帯にとどまっている。
この現状に対して、多軸3Dプリンタ向けの制御コード生成ソフトウェア、スライサーを開発し、多軸3Dプリンタ開発・普及の起爆剤にしようという提案である。
イノベータ自身も多軸3Dプリンタを開発しているものの、他のメーカが採用してこその提案である。また、多軸の効能を広く知ってもらうことも必要だろう。多軸が当たり前の世の中を招来して欲しい。
2024年6月28日
2024年度採択プロジェクト概要(反保PJ)を掲載しました。