社会・産業のデジタル変革

Cloud-Edge-IoT連携 : ユースケース

公開日:2025年3月21日

独立行政法人情報処理推進機構
デジタル基盤センター

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Cloud-Edge-IoT連携は、単にクラウドの負荷を分散するだけでなく、リアルタイム性の向上、データ通信コストの削減、セキュリティやプライバシーの強化、さらには電力効率の改善といった多面的なメリットを提供します。これらの利点は、製造業や自動車、エネルギーなどのインフラ分野だけでなく、ヘルスケア、小売り・物流、農業など、さまざまな産業分野で具体的なユースケースとして実現が進んでいます。

農業

農業の管理

農業においては、家畜、機器、車両、施設、その他多くの資産があり、その管理に活用。

  • 各資産に追跡のためのセンサを組み込み、その所在や活用の仕方を把握する。家畜については健康状態なども把握できる。
    農村部では、通信環境が貧弱であることが少なくなく、一部の情報処理を資産に近いエッジで処理するアプリケーションが想定されている。
農業機器の自動運転

トラクターなどの農業機械の自動運転により、省力化を図る。

  • 農業機械に各種センサを取り付け、得られるデータを処理、分析して、ステアリング、収穫用装置などの操作を自動で行う。
    機械自体での複雑なデータ処理、分析を行うことが必須であり、エッジコンピューティング技術を存分に使用する必要がある。一方、利用データなどの情報は中央のクラウドに送信され、併せて活用される。
    実際の活用のためにはさらなる技術の進展が必要な状況であるが、今後が期待される。
精密農業

農地に配置したセンサやドローンのデータをエッジで処理し、肥料や農薬の散布、自動収穫ロボットの制御を最適化。

  • 農場の各種データを取得、分析し、灌漑、追肥などを最適化して、作業の効率化や、収穫量の拡大を目指す。
    地域や気候条件によってネットワーク環境が異なるため、安定的に稼働できるローカルなエッジ環境が重要。環境負荷や労働力の軽減に貢献できる。

製造業

製造装置の監視

製造装置の稼働状況に関するデータや、生産品の製造状態に関するデータをセンサで取得し、装置の異常検出や、生産品の品質向上に活用する。

  • 従来、作業者が目視によって行っていた装置の稼働状況の監視を、センサを活用して自動で行うことで、省力化に貢献できるとともに装置の状況をリアルタイムで把握できる。
    装置の監視には、異常状態に対する応答が必要な場合があり、その際エッジコンピューティング技術が活きることになる。一方、生産品の品質向上に関するデータは、中央のクラウドで分析することが適切な場合も多い。エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングを組み合わせて活用することが重要となる。
無人搬送車とロボット

工場内で使用される部品や、生産品の自動搬送により、人手の削減と効率的な生産を目指す。

  • 無人搬送においては、その信頼性と非常に低いレイテンシを確保するために、近接したコンピューティングリソースが必要であり、エッジコンピューティングに大きく依存する可能性がある。一方、工場全体における稼働状況の分析など、クラウドコンピューティングが必要になる場面も想定され、双方の組み合わせによる活用が重要となる。

エネルギー・インフラ

スマートグリッド

スマートグリッドは、電力会社が現場のデバイスを使用して、電力フローの制御と最適化、変動する需要への対応、消費者と独立系生産者からの再生可能エネルギー生産の管理、変動価格設定によるピーク需要のシフト、障害の検出と対応などを行う。

  • スマートグリッドには、電力ネットワーク内の電力量を測定するスマートメーターを始め、電力を制御するためのデバイスがネットワーク内に分散して組み込まれている。電力ネットワーク全体の管理は集中型のコンピューティングリソースが必要であり、一方、分散コンポーネントの制御には、エッジコンピューティング技術の活用が必要である。
各種インフラ監視

電力網・上下水道・交通インフラなどのデータをエッジで解析し、安定稼働や故障予測、需給調整を実施。

  • 大規模なインフラではセンサネットワークが分散しているため、拠点ごとにエッジで素早く制御できる仕組みが重要。災害時の通信途絶にも対応しやすい。

ヘルスケア・医療

病院資産の管理・患者の状態把握

病院内には、患者、スタッフ、ベッド、監視機器、医薬品、その他の貴重な資産が施設全体に存在しており、その管理に活用。患者に装着されたモニタリング機器やウェアラブル端末から得られるバイタルデータをエッジで処理し、リアルタイムに異常を検知、対応を行う。

  • 各資産に追跡のためのセンサを組み込み、その所在や活用の仕方を把握する。患者の健康状態の把握にも活用できる。
    病院では、患者のプライバシー情報を多く抱えており、そのデータをローカルで保護することが必要になる場合があるため、エッジコンピューティングが多く使われる可能性がある。
AI支援による診断と治療

専門家による診断を、多様な医療記録データに基づくAIシステムにより支援する。

  • ローカルで得られた高解像度の診断画像データは、AIモデル分析とトレーニングのためにクラウドベースのシステムに共有される。分析結果、生成されたモデルはエッジ側のAIと共有され、個々の分析および診断はエッジにて行われる。

モビリティ・ロジスティクス

貨物管理(フリート管理)と車両追跡

貨物積載車両の位置情報を始めとした走行データと車両の状態、それに積載された貨物の監視を行い、ルート選択の効率化や、積載貨物が最適な状態で輸送されるよう管理を行う。

  • 貨物積載車両の走行データを車両に搭載されたセンサで取得し、クラウドベースのシステムにデータを蓄積し、輸送プロセスの効率化につなげる。
    積載された貨物の管理は、車両に搭載されたセンサからデータを取得、エッジゲートウェイによりデータが収集され、クラウドシステムにより分析、最適な状態での輸送を実現する。
コネクテッドカー・自動運転

コネクテッドカーや自動運転車両が車両搭載のセンサ・カメラ情報や路側ユニットの情報をエッジで解析し、車載AIがリアルタイムに制御。

  • 自動運転ではミリ秒単位の応答が要求される場合もあり、クラウドとの往復を最小限に留めるためのエッジ処理が不可欠。5G・V2X通信との連携により安全性や利便性を高める。

小売り

決済の自動化・在庫管理

店舗内でのリアルタイムな在庫管理や顧客動線の把握、レジレス決済などを実現。物流倉庫でのロボット制御や在庫管理の自動化。

  • カメラ映像やセンサ情報をクラウドにすべて送るとコストが増大するため、エッジで必要データを抽出・解析してクラウドへ送る仕組みが有効。

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  • 2025年3月21日

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